2005年12月11日 (日)

「振り返れば奴がいる」のDVD化を待っています

ここ数年、DVD化を切望しているTVドラマがあります。

Logo:振り返れば奴がいる

CHAGE&ASKAの主題歌にも支えられた「振り返れば奴がいる」は、先端医療の現場を舞台に徹底したエンターテイメントを追求することで、孤高の世界観を演出し、信条を異にする男と男の闘いを圧倒的な迫力で描き切った90年代の傑作ドラマ。織田裕二、石黒賢のダブル主演、三谷幸喜の連ドラ初脚本作品にしてシリアスタッチの異色作です。

実は、三谷幸喜さんが脚本を手掛けていると知ったのは、放送が終了してから何年も後のこと。「王様のレストラン」「古畑任三郎」などで、既に「三谷幸喜=コメディ」という図式が頭の中で成立していた私にとっては驚くべき発見でした。「シリアスを書けない人間にコメディは書けない」とはどこかで聞いた言葉ですが、その点「振り返れば奴がいる」は、現在から遡ることで、三谷幸喜という脚本家を再評価するきっかけにもなる作品です。

しかし、ポイントは何と言っても織田裕二さん。「司馬」は彼のキャリアの中でも稀代のヒールであり、それはいちトレンディ俳優に過ぎなかった織田裕二さんに、「役者」が垣間見えた瞬間でもありました。時折見せる人間性と、影のあるクールな悪漢ぶり。「司馬」のキャラクター造形はダークヒーローそのもので、当時、まだ純真無垢な少年だった私は、その衝撃的な格好良さに心酔したものです。「司馬」は彼にしか体現し得なかった一期一会な役柄であり、「踊る大捜査線」の「青島」が定着した今でもなお、「司馬」こそが彼の真の当たり役だったとの思いを強く抱いています。

このドラマ、冷静に評価すれば非常に荒削りな部分が見受けられますが、しかし、細かい揚げ足取りが無意味である程に、その勢いと存在感は突き抜けてしまっています。若さ漲る圧倒的なパワーに下支えされ、演出が、キャストが、主題歌が、BGMが、何もかもが奇跡的なバランスで成立しているのがこの作品。三谷幸喜の脚本にして、このスタッフでなければ成し得なかった、フジテレビバブルを支えた逸品であり、私の中では20世紀のマスターピースに数えられるほど、思い入れの強いドラマです。

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