本日の仮面ライダーカブト(12.03)
Posted by ramhorn05j
横道に逸れる時にはとことん逸れ、一転、進むとなれば一気に進むのが特徴となって久しい「仮面ライダーカブト」。時をも凍らせる最強のワーム・カッシスワームの登場と、ダークカブトの本格始動で、物語はいよいよ佳境に突入しました。カッシスワームこと乃木怜治登場編では久々に気合いの入ったアクションを展開し、活気の戻った戦闘シーンがファンを喜ばせる一方、43話以降を手掛けた新鋭・柴崎貴行監督の太い演出には思わず舌を巻きました。一連の風間大介編を手掛け、独自の映像演出と辣腕ぶりを見せつけた鬼才・田崎竜太監督との入れ替わりでデビューを果たした柴崎監督は、“大型新人”の前評判に違わず、荒削りな中にも安定した手腕を発揮。新人ならざるテンポの良さと映像センスは見所充分で、収穫の一つと言えるでしょう。
仮面ライダーカブト:「第41話」
物語は、ZECTが開発した対ワーム用の最終兵器「アンチミミック弾」を軸に展開。7年前の渋谷隕石から遡ること、およそ35年前にも隕石が飛来しており、そこから生み出されたネイティブがマスクドライダーシステムを計画し、人類と互助契約を結んだという過去が提示されます。ZECTの背景が序々に明らかになる中で、自らのルーツに動揺し苦悩する加賀美君の姿には、この番組の主題の投影を見ることが出来ます。常に心に振れ幅がある彼は、時にはかませ犬として、「仮面ライダーカブト」の中では最も人間らしく描かれているキャラクター。いつか天道様を超えてみせると誓った加賀美君の心の解放が、以後のエピソードのハイライトとなっています。
一方、「アンチミミック弾」を巡る乃木の行動から、思いがけず正体が明らかになった田所さん。35歳という年齢が、35年前に飛来した隕石との因果関係を臭わせますが、いずれにしても、これまで本編の枠からはちょっと外れた場所にいた田所さんが、一気にキーパーソンの1人に。ただ、世間では、その部隊長としての高い能力が再度注目されており、欠番となっているザビー候補の筆頭株として期待されている様子ですね。
「ゼクトの諸君、今度はアンチミミック弾というつまらない兵器を開発したそうだね」
眼鏡ロングコートの変態さんは、毎度のGメンカットが格好良いです。しかし、流石は元JACだけあって、生身のアクションもまた凄いのだ。人間体の方が強いんじゃないかってくらい、手始めには、腑抜けたガタックを拳で脚で圧倒してみせる。「無駄無駄無駄無駄ァ!」→「驚速!驚速!驚速!驚速!」のコンボで正にボッコボコ。ガタックは本来の戦闘力を発揮出来なかったとはいえ、防御力の高いマスクドフォームを力押しで倒してしまったことは驚愕に値します。
しかし、変身体だって伊達じゃない、そこはフリーズなど使わずともカブトと対等に渡り合える強敵。非常に評判の良かった戦闘シーンですが、やはり敵が強ければ殺陣も映えるし、燃えるものです。
人間の姿のままの組み手から、シームレスにカブトへ変身→
キックの撃ち合いから振り向きざまにハイパーフォームへチェンジハイパービートル→
カッシスワームの背後からパーフェクトゼクターを召還し攻撃も兼ねる
という一連の様式美が白眉。攻防一体となった無駄のない動きが美しい。そして、止めは伝家の宝刀フリーズ。お金も手間も掛かるクロックアップ戦闘がとんとご無沙汰の中、乃木さんの登場はあまりにも鮮烈でした。
仮面ライダーカブト:「第42話」
「時は私の為だけに流れているのだ」
カブトに一閃を見舞うものの、余裕綽々に止めを刺さずに立ち去る乃木さん。後の変体にも繋がってきそうな意味深な言葉を残しています。余裕といえば、この回の天道様は、いつぞやの落ち着きを取り戻しており、悩めるファミリーのサポートに徹していました。ひよりとこと聞くに心を乱していた天道様ですが、諦めとも違う、開き直りに近い心境の変化があったのでしょうか。「モノの本質を見ろ」とは白包丁で開眼した極みですが、加賀美君へのアドバイスは悟りの境地にすら達していた感があります。しかし、「親の投げたボールを受け止めてやれ」という言葉の傍らで、加賀美親子の確執はそう簡単に埋まるものではないでしょう。“いい親父っぷり”を見せる陸@博太郎の行動が、却って、“何か裏があるのではないか”と穿った見方をさせてしまいます。
一方、カッシスワームのフリーズに対して、「お前の技は見切った」と宣った天道様ですが、何のことはない、その戦法は「肉を切らせて骨を断つ」もの。根本的な対策にはなり得ていません。設定を考察すれば穴を作ることも可能なのでしょうが、そこは乃木さんの“うかつさ”に救われた部分が大きいのでしょう。それにしても、初披露された「マキシマムハイパーサイクロン」は、あれはどこのツインバスターライフルですか。爆発の規模がとんでもない。映像的には面白いのですが、凡そ仮面ライダーには似つかわしくない破壊的な兵器です。
仮面ライダーカブト:「第43話」
“大型新人”柴崎監督がデビューを果たした第43話は、番組初期のイメージを彷彿とさせる映画的な演出が新鮮で、映像に活きの良さというのか、楽しさが戻ってきた感じ。天道様と蓮華さんが佇む夜景のカットが美しくて……ああいうの好き。
さて、天道様の擬態でありながら、性格や言葉遣いが大きく異なる「もう一人の僕」こと黒天道。水嶋ヒロさんの素に近いと言われる黒天道は、無邪気なところが不気味さを煽っており、この使い分けは正解だと思います。特に、水嶋ヒロさんは激昂する演技が微妙ですから、変に凄まない方がスマートです。てぇーい☆
その黒天道をして、遂に現代の時間軸で激突する二人のカブト。ただ、自分自身のコピーが相手とはいえ、経験値の差と、何より決定的な“未来”を掴んでいる分、本来ならばオリジナルの天道様の方が、メンタリティ、実力ともに上のはず。それでも捨て身を覚悟しなければならなかったのは、時空の彼方にいるひよりへ繋がる唯一の手掛かりを結実させる為に他なりません。そんな彼の目を覚まさせたのは、一回り大きく成長した加賀美君の檄。ダークカブトを倒し、なおかつひよりをも取り戻す……「二兎を追うものは二兎とも取れ」の精神、それこそが天道様の強さの本質です。
「俺に擬態するなんて1万年早い」
噴いた。やっぱり天道様はこうでないと!
とまれ、ここ数週はギャグパートとシリアスパートのバランスが良く、高いレベルで情報がまとまっています。クライマックスに向けて加速する本気の「仮面ライダーカブト」は抜群の面白さで、やっぱり私は「仮面ライダーカブト」が大好きだ。