2007年01月21日 (日)

「仮面ライダーカブト」FINAL

何分、放送局のスタジオという舞台設定がアクション向きではなかったので、「仮面ライダーカブト」らしいスケール感が最後まで感じられなかったという点で、少なからず落胆はあります。屋外で派手に暴れて欲しかったとか、せめてクロックアップ&ハイパークロックアップにもう一花咲かせて欲しかったとか、細かい不満を言い出したらキリがない。それでも、石ノ森原作を見据えた実験体=改造人間としての生い立ちを提示し、その暗部を背負って散ったダークカブトと、ヒーローとしての説法を説き天の道を昇華させた天道様。4クール目は明らかに尺不足で、展開が追いついていない部分が大半だったことを考えれば、この最終話は割合よくまとまっていたと思います。突っ込んだら負けの内容ではあっても、理解の及ぶ範囲で言わんとしている事のニュアンスは伝わりましたし、すっきりとした大団円を迎えられて、概ね御の字と言えるでしょう。あまりにもちゃちなラストカットは何とかして欲しかったけど。

ということで、この一年間、熱心にフォローしてきた「仮面ライダーカブト」も見納め。振り返れば感慨深いこと頻りです。とはいえ、物語としてみると、やはり後半はグダグダ続きで、伏線の未回収、ストーリーの矛盾、整合性の破綻と、消化不良だった感は否めません。「起承承結」とはよく言ったものですが、魅力的な設定を持ち、一級のポテンシャルを秘めていながら、あまり盛り上がらずに終わってしまった印象です。最大瞬間風速的な、局地的な面白さでは群を抜いているものの、大雑把過ぎて線で繋がらなかった、といった感じでしょうか。

中には、予算や時間的な制約、或いは役者側の都合などといった大人の事情もあるでしょう。しかし、情報の質、量ともに充実し、丁寧に作り込まれていた前半に比べると、後半はどうしても粗が目立ちます。チャージしても光らないゼクターなど、映像的に手が回っていない部分も散見出来ました。また、良い意味での過剰なコメディ描写を始め、フェードアウトしそうなキャラにスポットライトを当てたり、視聴者の評価を逆手に取ったキャラ立てを行うなど、エンターテイメントとして特筆すべきポイントが多かったにも関わらず、一方では真相も明らかにされないまま人員整理されてしまった地獄兄弟の顛末などもあったりして、脚本や構成といった点で、伏線を活かし切らない、行き当たりばったり的なストーリーのディテールが足を引っ張ってしまった部分はありそうです。

個人的には、この番組の「遊び」の要素こそが「仮面ライダーカブト」を「仮面ライダーカブト」たらしめている肝である、くらいには考えていて、それだけ魅力的に感じているのですが、ことメインストーリーに関しては、思い出したかの様に駆け足で詰め込んでみるもののなお尺が足りなかった終盤の惨状を鑑みると、やはり中盤でのんべんだらりと「遊び」過ぎてしまった、と省察するのが妥当です。「第48話」などは最終話2週前には終わらせておくべき内容ですから、それを踏まえた上で、設定をどう掘り下げ、ドラマとしてどう落とすのか、という余裕を伴った流れが望めなかったのは残念でなりません。また、“大雑把過ぎて線で繋がらなかった”という点では、一本筋の通った物語の本流というのが見え辛く、散漫な印象さえ与えてしまったのは、反省材料と言えるでしょう。

まあでも、こんなものだろうと。正直、前半の神懸かり的な面白さのお陰で期待を膨らませ過ぎてしまった分、後半は反動も大きかったのだけど、その映像センスとアクションは、やはり当代随一。シリアスとギャグの積極的な融合も評価したいし、何より、どんな場面においても視聴者を楽しませようとするスタッフ&キャストの真摯な心意気が伝わって来ました。私としては思い入れも一入で、平成仮面ライダーシリーズここ3作の中でも、特にお気に入りの仮面ライダーである事に変わりはありません。

ある意味では正統派な主人公キャラとして、時に悩みながらも成長し、真っ直ぐな眼差しで番組を下支えした加賀美君、一瞬ドキリとする様な、すっかり大人びた表情になったひよりちゃん、和食の似合うクールビューティっぷりがいつの間にか板に付いていた岬さん、蕎麦屋の出前持ち姿が異様に似合い過ぎていて、なおかつ生き生きとし過ぎていた田所さん、最後まで風のように爽やかだった大介様、最後まで大根だった癒しの蓮華ちゃん、そして、一年間、そのカリスマティックな魅力で番組を牽引した天道様。剣坊ちゃまも、矢車さんも、影山さんも、陸さんも、三島さんも、樹花ちゃんも、弓子さんも、もうみんな大好きだ!ああそうだとも!

豆腐で始まり、豆腐で終わった「仮面ライダーカブト」。一年間お疲れ様でした。

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