2007年04月28日 (土)

SCE、久夛良木CEOが取締役を退任

株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントとソニー株式会社は26日、6月19日付で現SCE代表取締役会長兼グループCEOの久夛良木健氏が、任期満了をもって取締役を退任し、名誉会長に就任すると発表しました。この人事に伴い、代表取締役社長兼グループCEOには、現SCE代表取締役社長兼グループCOOの平井一夫氏が就任。久夛良木氏は、今後もソニーのトップマネジメントに対してシニア・テクノロジーアドバイザーとして技術的なサポートを行なうとしています。

SCE、久夛良木CEOが取締役を退任。名誉会長へ
SCE、久多良木会長が退任へ・プレステ生みの親

26日夕方にSCEが開いた取締役会で久多良木氏が退任を申し出、満場一致で承認されたとのこと。久多良木氏はPS3用に開発した新型の高性能半導体Cellの開発プロジェクトを主導しましたが、2007年3月期にはゲーム事業の営業赤字が2000億円以上になるなど、ソニー社内から経営責任を追求する声が上がっていました。名誉会長に退くに当たって、久夛良木氏は

4つ目のプレイステーションプラットフォームを導入し終えた今、これらのプラットフォームにより最先端の技術と全世界のクリエイターの皆様の創造力を結び付けることによって、コンピュータエンタテインメントの新しい世界を加速できたことは私にとっても大変エキサイティングな経験でした。今後はこの経験を活かし、更なるチャレンジを、SCEを離れて更に広いネットワークで加速していきたい

とコメントしています。

PS3の敗北宣言とも取れる最悪のタイミングでの取締役退任となりました。事実上の更迭に等しい扱いで、負担の大きいゲーム規格を整理する為のステップとして、詰め腹を切らされたとも言われています。従って、名誉会長になると言っても、出井伸之氏とは異なり、実質的には経営に手出しが出来ないポジションでしょう。名実共にSCEが平井一夫体制に移行することで、PS3事業のビジネス戦略も見直されることになりそうです。これが直ちにPS3の価格引き下げとはならないでしょうが、消費者感情としては、これまでの営業方針を否定してでも、いっそマルチメディア機能を削ぎ落としてでも値段を下げ、ゲーム機として消費者の需要にすり寄って欲しいという気持ちが第一。裏を返せば、それだけPS3を諦めるにはまだ早い、ハードそのものには見込みがあるということでもあります。

個人的には、任天堂の一強時代を切り崩したプレイステーションの父として、久多良木氏がゲーム業界にもたらした功績は評価しています。しかし、技術への傾倒がある意味で極地に達してしまったPS3事業に関しては、氏の個人的な妄想と妄言ばかりが強調されていた印象です。技術的な野望と壮大な夢を語る姿は嫌いではありませんでしたが、具体的なビジョンを提示せず、結果的にゲーム事業を業績不振に陥らせた経営責任は免れません。重厚長大主義を拡大し、ゲーム業界に対してもユーザーに対しても求心力を失いつつあるSCEの今を作り出したのもまた、久多良木氏その人です。久多良木氏がエンターテイメントを語れば語るほどユーザー意識との乖離は進み、現状を見据えていない者の意固地にしか映らなかったのは、皮肉であるとしか言い様がありません。

リンク:
【特別企画】SCEI・久夛良木氏、退任までの軌跡

ARCHIVES

  • Browse All Archives [1745] »

RECENT ENTRIES