2007年05月23日 (水)

天元突破グレンラガン 第一部完

大きな騒動にまで発展してしまった件の第4話は、注文を付けるとするならばむしろ脚本や構成にあると考えていた私は、烏合の衆を突き動かした衝動は理解し難く、事の成り行きを遠巻きに眺めることしか出来ませんでしたが、まあ本編に悪い影響だけは与えてくれるなよと祈りながら、皆勤するに至っています。

第8話「あばよ、ダチ公」

要塞型ガンメン・ダイガンザンとの戦いの最中、グレンラガンのピンチを救ったのはリットナー村のダヤッカや「黒の兄弟」キタンたちだった。彼らはカミナ同様、獣人のガンメンを奪取し自分のものにしてきたのだ。「大グレン団」の旗の下、各地で抵抗を続けてきた仲間たちが続々と集結する。カミナは彼らと共にダイガンザンの乗っ取りを決意する。作戦を前に盛り上がる大グレン団の面々とは裏腹に、カミナの無謀な行動に一抹の危惧を抱くヨーコ。決戦の朝、シモンはカミナとヨーコのキスシーンを目撃してしまい、激しく動揺する。そんな彼の心中をよそに、激しい戦いの幕は切って落とされる。
果たして作戦は成功するのか?!

http://www.gurren-lagann.net/

ライバルであり、兄貴分であり、リーダーでもあったカミナの花道は、王道一直線を地で行くベタなもの。伏線は全て暗示されており、お話的には一寸盛り上がりに欠けるものでしたが、メリハリの付いた演出と、見せ場に懸ける作画の力で、彼の終焉は屈指の熱いシーンとなりました。正統派な直球ストーリーをこれだけ仰々しく感動的に見せることが出来たのは、正に天元突破の面目躍如とするところ。これまで「死」の場面をハッキリと描いてこなかっただけにインパクトは大きく、許容されていた油断が一気に瓦解した印象です。

しかし、死のその瞬間まで格好良いことこそが、カミナに対して大きな情動を呼び起こしました。死に至るまでの攻撃的な活写こそ、死んでもただでは起き上がらない不屈の精神の持ち主である彼の真骨頂。グレンラガン復活のドリルクラッシャーは、燃えカス一つ残さない命の炎。大往生を遂げたと、胸を張って叫ぶことが出来る死というのも、早々あるものではありません。それでも、翌週には「生きてたんだね、兄貴!」「オレを誰だと思ってやがる!」なんて展開を望んでいましたが、それは叶わぬ願いらしい。

面白かった!熱かった!が、あまりにも壮絶だったカミナの最期。この喪失感は大きい。サブタイトルは言わずもがな、Aパートでも露骨に死亡フラグが確立していましたが、ここまで身も蓋もないフラグの立て方をすると、むしろアニキは死なないのではないか、というよりも、アニキならその立てまくったフラグさえも覆せるのではないかと半ば確信していたのですが、現実はかくも厳しく、そして儚かった。フラグを真正面から受け止めたカミナに、漢の生き様を見ました。そして、つくづく、カミナの兄貴っぷりが身に染みます。他の誰もがシモンに見向きもしなくとも、カミナだけは誰よりも彼を信じて見守っている。友人であり兄貴であり父親であるように。雨に濡れたグレンラガンの、まるで涙を流しているかの様な描写が切ない。カミナはきっとトドメを刺されたあの時点で死んでいたのに、シモンを心残りに思うばかりに気合いで戦い続けたのだろうことを思うと、胸が苦しい。

まだ1クールも半ばの第8話。シモンの成長のきっかけになることを考えれば存在自体がお別れフラグだったとはいえ、嗚呼、アニキ、今ここであなたが退場してどうするの。復活フラグを微塵も立てずに終わらせる潔さはアニキらしいとも、唯一の未練はヨーコへの10倍返し。お似合いのカップルだと思ったんだけどなぁ。いずれにしても、この作品の“ノリ”を支えていたカミナの死を前に動揺する私は、見事なまでに制作陣の術中にハマっていると言えそうです。

これまで物語を牽引してきた主役のカミナが退場となると、この後の展開は、シモンの成長やヨーコの変化、といった辺りにフォーカスしていくことになるのでしょう。ただ、このアニメの調子だと、気合いがあれば何でも出来てしまう世界ということで、案外2クール目辺りでカミナの復活劇があるかもしれません。獣人のテクノロジーで蘇生され、敵対、やがて改心、とかなんとか。ただ、こんなにも派手な死に方をされてしまうと、安易な復活は逆に反発を招きそうなので、それもないかしら。

とまれ、今期は「デスノート」「おおきく振りかぶって」「ロミオ × ジュリエット」「精霊の守り人」「電脳コイル」と、比較的粒が揃っている地上波。そんな中でも、毎クール地味に作られ続けているB級C級のSF系では、ロボットものが充実。「ヒロイックエイジ」は既に息切れ寸前で惰性が掛かっていますが、「ギガンティック・フォーミュラ」は今後も地味に良好な物語が期待できそう。「天元突破グレンラガン」は、アニキのテンション頼りの展開にも限界を感じていたので、大きくバランスが変化すると思われる第9話以降からがむしろスタッフの本領でしょう。良作になれるか否かはガイナックス次第、「天元突破グレンラガン」は第8話で終了した、などと言われないよう頑張って貰いたいものです。

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