王者アロンソをぶち抜く!SAF1琢磨、6位入賞
Posted by ramhorn05j
2007 F1世界選手権、第6戦カナダGP決勝。
大荒れのカナダGPを制しハミルトンが初優勝! 琢磨は見事6位入賞
琢磨「あのピットインは完全に僕の判断」
クビカ、大クラッシュにもかかわらず明日にも退院へ 骨折は無し
モナコの祭典から1週間のインターバルを経て開催されたカナダGP。北米ラウンドの初戦は、快晴のもと、ジル・ビルヌーブ・サーキットを舞台に行われましたが、決勝は実に4回ものセーフティカーが導入されるなど大荒れのレースとなり、各チームの順位や戦略が瓦解したことで、得をしたドライバーと損をしたドライバーとの明暗が別れました。完走12台の過酷な戦いを制したのは、マクラーレンのスーパールーキー・ルイス・ハミルトン。開幕戦から5戦連続表彰台を続けていた驚異の新人が、6戦目にして遂に歴史的なF1初優勝を成し遂げました。2位には、BMWザウバーのハイドフェルドが入り今季初の表彰台を獲得。3位にはウィリアムズのブルツが続き、波乱のサバイバルレースを象徴する新鮮な顔ぶれが並びました。
そんな中、スーパーアグリF1の佐藤琢磨はチーム最高位となる6位入賞で3ポイントを奪取。スペインGPの8位入賞に続く快挙を達成しました。レース終盤の接戦で、トヨタのR.シューマッハと、現状最速のマクラーレンを駆るチャンピオン・アロンソをオーバーテイクするという激賞のチェッカーフラッグ。キャリアの中でも屈指のレースを戦った琢磨の気迫と根性に、世の琢磨ファンは酔いしれました。
佐藤琢磨
「素晴らしい週末だった。今回のレースではさまざまな出来事があった。クビサのことは本当に心配だったが、彼の無事を聞いてホッとしている。F1のセーフティチームに心から感謝したい。あのアクシデントの後、ぼくはレースに再び集中した。激しい戦いとセーフティカーの導入が渾然一体となったレースになったけれど、ぼくたちの戦略が成功した。ある時はセーフティカーが導入になった直後のチャンスを見計らってピットインすることができた。ピットレーンがまだ開いていたんだ。チームも状況を把握していて、すぐに対応してくれた。最後の数周は最高の気分だった。トップ集団と戦うことができたし、自信を持ってオーバーテイクして、ポジションを取り戻すことができた。ぼくのこれまでのレースキャリアの中でも最高に素晴らしい日だったし、本当に素晴らしいリザルトを手に入れることができた。チームのメンバー、そしてぼくたちを支援してくれているすべての人々に心から感謝したい」
アンソニー デビッドソン
「ビーバーのことは残念だった。ぼくのことを待って飛び込んで来たんだと思うよ! あの時はセーフティカーの後ろで3番手を走っていた。1ストップ戦略でコースもクリアだったのに、あれでフロントウイングにダメージを負ってしまった。スピードが出ていて見えなかったので、なぜ、フロントタイヤが突然ロックアップしたのか理解できず、ピットインせざるを得なかった。ぼくが突然入ってきたので、ガレージのスタッフたちも驚いていたが、すぐにその後の戦略を考えてくれた。セーフティカーをオーバーテイクして周回を取り戻すように言われた。最終的にはとても楽しいレースになったよ。クビサのアクシデントはコースの反対側から見ていた。彼の無事を願うよ。レースはスタートから大混乱だったけど、完走できてハッピーだ。これまでのベストリザルトと同じ結果だったが、今日一日頑張ってくれたチームにとっても、いい結果だったと思う。ぼくはオプションタイヤで走っていて摩耗がひどかったので、チームに報告した。セーフティカーが導入になっている間にピットインしてタイヤを交換したので、琢磨がファストラップを走る前には、チームもすでにプライムに戻さなければならないことを知っていた。それが成功したんだ。素晴らしいチームワークだった。本当にハッピーだよ」
鈴木亜久里 チーム代表
「完ぺきな1日だった。チームも琢磨も3ポイントを獲得することができた。今日のチームの仕事ぶりは本当に素晴らしかった。アンソニーも本当によく頑張ったと思うが、レースの最中に動物が当たって、マシンにダメージを負ってしまったのは運が悪かった。今日もチームの全員が素晴らしい仕事をしてくれた。彼らのことを心から誇りに思う」
SUPER AGURI F1 TEAM | 2007年トピックス:
2007年 カナダGP 決勝
今回のおめでとうは2つ。まずはハミルトン。
参戦6戦目、22歳のルーキーが遂にやりました。波乱のレースの中、セーフティカー導入の度に稼いだマージンをふいにしつつも、終始1分16秒台の安定したラップを重ね、ピットインも完璧に消化、全てがパーフェクトな運びで、文字通りの完勝でした。しかし、あまりにも新人離れした速さとレース運びに、呆気ない印象すらあったのも事実で、これだけの荒れたレースであったにも関わらず、彼の走りには一切の影響がありませんでした。それは、まるでM.シューマッハ全盛期を見るが如く、周りが勝手に脱落していくかのような感覚さえ覚える味気なさ。低年齢化が進んでいるモータースポーツ界とはいえ、純粋に下位カテゴリーから進級してきたルーキーが、よもや風格さえ漂わせる勝ち方で勝利するというのは、それだけ異例中の異例と言えると思います。最速のマシンを与えられているとはいえ、良いマシンでちゃんと勝つ、というのは並大抵のドライバーに出来ることではありません。
それに比べて、ディフェンディング・チャンピオンのアロンソは良い所がなく、完全にお株を奪われた格好です。1回目のピットインとセーフティカー導入のタイミングが重なり、ペナルティ覚悟で給油せざるを得なかったなど不運はありましたが、1コーナーでミスを連発し、何度もラインを外すなど精彩を欠いており、彼としても焦りを感じていたのか、今回のレースではあまり乗れていなかった印象です。辛うじて入賞はしたものの、ドライバーズチャンピオンシップではハミルトンに8ポイントも先行を許す結果となり、差し当たり厳しい週末となりました。王者としても、これは望ましいシチュエーションではないでしょう。
ということで、再びポイントリーダーに返り咲いたハミルトン。今後、彼がポディウムの頂点に立つ姿を、指折りでは数え切れないほど目撃する事になると思いますが、記念すべき1回目の優勝をリアルタイムで観戦することが出来たのはラッキーです。連続表彰台記録をどこまで伸ばすのか、そして、まさかのルーキーイヤーチャンピオンが有り得るのか、F1界に現れたニューヒーローの活躍から目が離せません。
そして、2つ目のおめでとうは何といっても我らが琢磨。
琢磨は週末を通して好調で、予選では作戦的に有利な11位を獲得、決勝では一時5位を走行していました。展開次第では3位表彰台も夢ではなかっただけに、ピットインのタイミングと重なってしまった3回目のセーフティカー出動が悔やまれましたが、しかし、それもラスト10周でのオーバーテイクショーで帳消し。セーフティカーのタイミングを上手く利用してソフトタイヤに履き替えたことが、最後のスプリントをハードタイヤで走ることを可能にし、ソフトタイヤを履いたアロンソをパッシングすることに繋がった───チームの機転も手伝って、琢磨の判断によるピット戦略が奏功したからこそ、アロンソをパスするという値千金の見せ場が演出されました。チーム最高位という記録も見事ですが、あの王者アロンソをオーバーテイクしてのこのリザルト、いくら彼の調子が振るわなかったとはいえ、現在最強を謳うマシンをぶち抜いてしまった事実は、もう天晴としか言い様がありません。参戦2年目の弱小プライベーターが、2年連続でチャンピオンの座に君臨するアロンソをスリップから見事一発でパス───こんなシーンは全く想像だに出来なかったことです。一昔前のモータースポーツシーンを考えれば、日本人パイロットが現役チャンピオンをパッシングするなど、俄には信じ難い出来事。それでも、何度でも言ってやるんです、昨シーズンのお荷物チームが、今季最強のワークスチームをコース上でぶち抜く日が来るなんて、まるで夢のよう。
今回のレースは、上位に失格者が出るなど運も味方しましたが、琢磨の着実なドライブが成果を生んだ典型であり、実力で勝ち得た6位です。琢磨&SAF1が結果を残すと、レースが荒れたから、前が潰れたから、そんな嫌味を垂れ流す輩も必ず現れますが、そういう意味では、棚ぼたで表彰台に上がった、などと穿った見方を耐え忍ばねばならない3位よりも、嫉妬や猜疑心で純然に評価されない表彰台よりも、インパクトの大きい6位と言えるでしょう。アロンソを抜かしたこと、そして6位という順位は、チームに未来を感じさせるのと同時に、ドライバーの頑張りを周囲の人間と環境が、真っ当に評価してくれるのに好都合な絶好の位置です。これは今週末のレースで望みうる最良の結果でしょう。
SAF1は、上位陣の若干落ち程度でラップタイムが安定するなど、マシンにも中段グループの力が定着して来ている様子です。各車がトラブルに見舞われる中、コンペティティブなタフさを再度実感した琢磨はもちろんのこと、SAF1もチームとして最高の仕事をこなしました。本当に厳しいレースでしたが、SAF1は2台とも踏ん張りました。こうなると、いよいよ本家ホンダなど、もうどうでもよくなって来ます。マシンはダメだし、レース戦略も相変わらずグダグダ。上記の集合写真には、ホンダ陣営も顔を覗かせるなど微笑ましいカットが活写されていますが、そんなことはもう関係ない、今年はSAF1に夢を見させて貰います。なんたって、琢磨選手は私にとってのリアルヒーローなのだから、な!
さて、レース中盤に大クラッシュを演じてしまったBMWのクビカ。マシンのパーツが粉々に砕け散り、激しく横転するなど、かなりショッキングな事故でしたが、奇跡的にも軽い脳震盪と捻挫だけで済んだ模様。フォーミュラカーとしては最も危険な部類に入るクラッシュでしたが、それが幸いにも捻挫で済んだというのは、近年のF1マシンの安全志向のお陰とも言えるでしょう。大事に至らなくて何よりです。