2007年08月06日 (月)

「ネットランナー」休刊

ソフトバンククリエイティブから発売されているネット情報誌「ネットランナー」の休刊が決定しました。1999年9月に創刊された「ネットランナー」は、2002年のピーク時には20万部を発行していましたが、直近では8万部にまで部数が減少。同社では、休刊の理由を「ブロードバンド普及に伴ってWebが発展し、ネットランナーが担ってきたWeb1.0時代の使命が終わったため」としています。

私にとっては遠く縁のない雑誌でしたが、こと耳に入って来るのは悪評ばかりで、アンダーグラウンドを邁進していたと言われる内容には良いイメージがありません。それが証左に、多くの鬱屈した反感が噴出する形で、休刊に際して「ざまぁみろ」といった声も少なからず聞こえて来ます。

「ネットランナー」は、インターネットの活用方法について明解に解説し、業界の時事ネタにも敏感に反応してみせる傍らで、違法行為を幇助する記事の掲載が度々問題視されていました。いわゆるスクリプトキディを対象とした雑誌だっただけに、ツールを利用したHowToに偏重する一方で、技術基盤や倫理面に触れようとしない姿勢はハック志向とは言い難いもので、寄生虫雑誌と揶揄される由縁が、同誌が倦厭される最大の動機となっていたことは間違いありません。休刊といっても、ありったけの毒を巻き散らした後では今更感がなきにしもあらず、アングラの敷居を著しく低下させた罪は目に見えるだけでも重大です。扇情的な見出しと挑発的な内容で、"ネットコンテンツは無料で当然である"という意識や、"お金を出さずにネットで"といった観念を醸造し、クリエイターへの敬意を矮小化させたこと、その究極として「購入厨」という驚愕の蔑称を生み出す原因の一端を担ったソフトであることは疑いようがなく、また、Winnyなどによる個人情報流出の遠因を作るなど、諸々を含めて、ネットのマナーやモラルを低落させる根拠となっていたことは否めません。

良くも悪くも、近代ネット社会の浮き世を反映していた媒体ではあったと思うので、それだけに休刊は一つの時代の終わりと、次世代への変遷を感じさせます。

リンク:「ネットランナー」休刊へ

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