2008年05月12日 (月)

アニメ「ヒロイック・エイジ」最終回

タイミングを逸して没記事となっていたエントリを再生産。

第26話「エイジ」

「黄金の種族」の呼びかけに各種族は応え、宇宙への進出を果たした。
最後に進出を果たした人類は「鉄の種族」と呼ばれた。
その後、遥かな時が流れた時代、人類はより強大な種族である「銀の種族」らの脅威にさらされ、存亡の危機を迎えた。
王女ディアネイラは人類存続をかけ、王家に代々伝わる「黄金の種族」からの予言をもとに、遥かなる銀河へ旅立つ。
そして、一人の少年と出会った。少年の名はエイジ。
王女と少年の出会いが宇宙に大きな運命の変転をもたらしてゆく・・・

http://www.starchild.co.jp/special/heroicage/

黄金の種族の遺産……それは外宇宙へと続く扉だった。黄金の種族への扉を身を挺して開いたエイジは消えた。銀の種族とノドスが旅立ち、後事を託されたディアネイラは、エイジとの約束を果たすべく奔走する。そして4年後、復興を果たした惑星オロン、出会いの地で奇跡は起こった───エイジのいなくなった世界でのエピローグ。

ドラマ的なクライマックスが第25話「最後の契約」に絞られていたお陰で、エピローグに徹した作りとなった最終話は、しかし、予定調和なだけに感慨深く、余韻に浸れる素晴らしいラストとなりました。特に、これまで聖人君子の如く描かれていたディアネイラが、脇目も振らずに駆け出す姿は感動的。4年という別離の期間を置いた割には捻りのないストレートな再会劇でしたが、EDにも繋がる伏線の妙味と、静かな幕引きは大人の物語であったことを感じさせます。

壮大なスケールで描かれたスペース・オペラ「ヒロイック・エイジ」、神話的な設定をベースにドラマチックな物語が展開されましたが、その中心にあったのは上品なラブストーリーであったと言えるでしょう。しかし、SF色が強い世界観はよく作り込まれており、それも“現実の世界”を示唆的に再構築した焼き直しではなく、あくまでも個別の完結したファンタジーとして描かれていた辺りは好感が持てました。また、固く結束したアルゴノートクルーも、一見仏頂面なのに個性豊かな銀の種族も、全般において隙の無いキャラクター描写が光っており、特に、天然真っ直ぐなエイジと崇高なるディアネイラ、メインの二人が完璧だったお陰で、作品全体の印象がグッと引き締まって感じられます。適材適所のキャスティングも見事で、世界の壮大さとそれを再現しきったアニメーションのクオリティは評価したいところ。あれだけ嫌っていた平井久司によるキャラクターデザインも、この「ヒロイック・エイジ」に限っては、その柔和で有機的なレタッチが成功していた様に思えるから不思議です。

一方では、名前のあるキャラクターの誰もが無下に命を落とさずに済んだ幸福な作品であったとも言える本作。“ヒロイック・エイジ”というだけあって、ご都合主義的ながらもエイジを始めとしたノドス達の英雄らしい活躍が見所だった作品ですが、「宇宙 + 英雄 + お姫様 + 強い敵 = 燃え」の法則が成り立つそこには生命讃歌の躍動すら感じられ、心地良いまでのハッピーエンドが満ち溢れていましたね。

総括すれば、序盤こそ緩慢で退屈な流れが目立ったものの、話の輪郭が見え始めてからは俄然面白く、目の離せない展開で畳み掛けながら、エピローグもよくまとまっていた本作。構成も演出もほぼ完璧で、一つのエピソードに内容を詰め込み過ぎない余白(含み)を持たせる絶妙な匙加減が、巧みなクライマックス感の演出と相まって、作品の印象を一回りも二回りも良くしていました。シリーズ全体を振り返ってみると、時に高度なテーマ性を追求しつつ、同時にエンターテイメント性にも配慮することの難しさを実感させられましたが、その実、視聴者通りの解釈が出来るという意味では刺激的な作品だったと思います。ただ、完成度が高く、気品さえ感じられた「ヒロイック・エイジ」ですが、空気と間を大切にした大人向きの作品であるが故の渋さをも持ち合わせていたので、ともすれば地味にすら感じられたのは痛し痒しといったところでしょうか。それでも、特筆すべき部分として、暗示に富んだEDと劇中音楽は最高でした。

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