2008年08月23日 (土)

iMacが10周年

2008年8月15日をもって、iMacは発売から10年目を迎えました。初代のボンダイブルーが登場したのは1998年8月15日で、価格は1299ドル。日本ではそれから二週間後の1988年8月29日に178,000円で発売されました。

Image:iMac (Summer 2000)

当時はまともにMacに触れる機会すらなく、私にとってはパソコンそのものがまだまだ高嶺の花といったイメージの直中にありましたが、それでも、従来のオフィスツールとしてのパソコンとは一線を画するシンプルさとデザイン性を兼ね備えたキュートなiMacのデビューは衝撃的でした。iMacの登場は、パソコンは四角くなくてもいい、カラフルであってもいい、トランスルーセントであってもいい、といった形で様々な既成概念を打ち破って行きましたが、第一印象では何よりもオモチャっぽいと思ったのを覚えています。楽しいことが出来るかも……そんなイメージが詰まった新しいカタチでした。

オールインワンのコンセプト自体は当時既に当たり前のものとなっていましたが、その頃はまだプロユースと認識されていたPowerPC G3プロセッサを搭載し、ファンレスにて静穏性を追求、更にはフロッピーディスクドライブを廃止し、まだ周辺機器も少なかったUSBを実質的な接続インターフェイスに採用するなど、iMacといえばデザイン性が強調されがちな反面、あの筐体に思い切ったスペックを搭載しており、Appleらしい先進性とシンプルさを追求する発想が盛り込まれた機種でした。

実用面では先見性に溢れた装備と割り切ったスペックでインターネットマシンとしても優れていたiMacですが、他方で話題性にも事欠かず、市場に登場するや否やソーテックのパクリ騒動などに見られる様にスケルトン素材を用いたフォロワーが続出し、また、頭に“i”を冠した安易な名称が俗世を席巻するなど、AppleはiMacによってリーディングカンパニーとしての地位をも確立して見せました。1998年といえば、Windows 98によってMicrosoftがその支配を盤石にした時代。MS帝国の躍進に押され、業績悪化のどん底にいたAppleであればこそ、そこでiMacを世に問うた意義は大きく、各社から次々と発売される高性能なPCを尻目にMacを諦めかけていた(潜在)ユーザーにとっては9回裏の起死回生逆転満塁ホームラン気分を味わわせてくれるもので、iMacの発売はコミューンの内外を問わず、まさにエポックメイキングな出来事であったと思います。

iMac、iPod、iPhone……と振り返ってみると、“i”の付くこれらの製品群が悉くAppleの転機となって来た訳ですが、その先駆けとなったのが10年前のiMacでした。そういった意味では、iMacこそがデジタルハブ構想の素地を作ったと言っても過言ではありません。一方では、G4 Cubeが出ればキューブ型のデザインが流行る、白いMacが出れば他社も白いPCを作るという具合に、Appleはその後も影響を与える側の企業であり続けています。ソニー以上にソニーらしい企業とは言い得て妙な表現ですが、それもこれも、独裁的とも言える強力なリーダーシップの元に、技術者の既成概念を破壊して画期的なコンセプトを打ち出すスティーブ・ジョブズの、大凡コンピューターメーカーのCEOとしては似つかわしくない芸術家然とした辣腕があればこそでしょう。

ただ、見た目こそ大きく変化しているものの、iMacというプロダクトの根底に流れる本質は、初代モデルから何も変わってはいません。iMacは、パーソナルコンピューターとして、ある意味では行き着く所まで行った究極の具現と言えるのではないでしょうか。とはいえ、ノートブック派の私にとっては、これまでiMacを所有する機会こそありませんでしたが、やはりiMacといえばキャンディカラーのiMacであり、第一世代のデザインが一番好きです。

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