2008年09月14日 (日)

Apple、iPodのラインナップを一新

Appleは現地時間の9日、米サンフランシスコで「Let's Rock」と題した新製品発表イベントを開催、スティーブ・ジョブズCEOがiPodシリーズの新モデルなどを発表しました。

今回、最も大きくデザインを変更した新しい第4世代の「iPod nano」は、初代に近い縦長の筐体デザインに、大型液晶パネルを採用。初代とほぼ同等の筐体サイズながらiPod史上最も薄く、アルミニウムとガラスを曲面に仕上げたデザインが大きな特長となっています。機能面では、縦・横の切り替えで操作性が損なわれないようにユーザーインターフェースを改善している他、新たに搭載した加速度センサーで従来の「iPod nano」にはない新しい操作体系を導入。本体を回転させることでのCover Flow画面への切り替えや、本体を軽くシェイクすることで曲がシャッフル再生されるShuffleモードへの切り替えなどを実現しています。また、iTunes 8と連動することで、ワンクリックで音楽ライブラリの中から相性の良い曲を自動的にセレクトしてプレイリストを作成するGenius機能にも対応。ボディカラーは、nano-chromaticと呼ばれる色鮮やかな9種類がラインナップ。バッテリー駆動時間は、音楽再生時が最長24時間、動画再生時が最長4時間。税込価格は、8GBモデルが17,800円、16GBモデルが23,800円となっています。

また、初代から僅かに小型軽量化された新しい第2世代の「iPod touch」は、美しくカーブした金属製ボディにガラス製の3.5インチワイドLCDを備え、802.11 b/g Wi-Fi無線LAN、音量調節ボタン、内蔵スピーカー、内蔵加速度センサーなどを搭載。外観的な変更点は、音量調節ボタンと内蔵スピーカーを追加したことで、その他の主な仕様は従来モデルと同等となっています。なお、新しい「iPod touch」では、iTunes 8と連動したGenius機能と、Nike+iPodセンサーに標準対応しています。バッテリー駆動時間は、音楽再生時が最長36時間、動画再生時が最長6時間。税込価格は8GBモデルが27,800円、16GBモデルが35,800円、32GBモデルが47,800円となっており、前モデルから大幅な値下げとなっています。

その他、「iPod classic」はラインナップの変更が実施され、160GBモデルが廃止となり、価格や筐体サイズは従来の80GBモデルのままHDD容量を増加した120GBモデルに一本化、「iPod shuffle」はカラーラインナップのみが変更されています。

Image:iPod nano 4G

今回の発表で最も変化があり、かつヒットしたのが「iPod nano」。従来モデルのいいトコ取りをしたという「iPod nano」では、nanoの原点回帰を感じさせるポートレイトスタイルに第3世代のワイドディスプレイを融合。事前にリークされていた通りのオーバルな形状ですが、改めて見てみるとその薄さと美しさは他の追随を許さないかの如く、これまでで最大となる9色のカラフルなバリエーションも壮観。如何にもアメリカンな色彩センスは、キャンディカラーの「iMac」を思い起こさせます。機能的にはさほど驚きはありませんが、ここを直して貰いたいとか、こんな機能があったらいいなというポイントが手堅く押さえられているので、ユーザーの心に響く正常進化と言えるのではないでしょうか。また、スリムな筐体に縦方向のディスプレイが組み合わされたことで、旧モデルと同等の画面サイズも心持ち大きく感じられ、心理的には第3世代から随分と変わった様に思えます。とにかく、シルバーとブラックのシックな魅力には物欲を刺激されっ放しです。

翻って、「iPod nano」に比べるとデザイン面での変更が見え難い「iPod touch」ですが、リクエストが多かった機能として音量調節ボタンやスピーカーが内蔵されたことで、従来のユーザーにとっては大きな変化が感じられるアップデートに。特に、タッチパネルでのボリューム操作には限界があったので、音量調節ボタンが追加されたことで、メディアプレーヤーとしては格段に使い易くなりました。また、iPodで唯一Wi-Fi機能を備え、「iPhone」同様にApp Storeを利用出来ることから、「iPod touch」は最もホットなiPodと言えるでしょう。ただ、「iPod touch」は「iPhone」の技術を踏襲しながらも、一定の距離感を保った進化を義務付けられているだけに気になる部分も見られ、GPSやBluetoothが搭載されなかった点には物足りなさを感じます。特徴的なNike+iPodセンサーも、「iPod nano」や「iPod shuffle」を差し置いてまで「iPod touch」の選択に迫られる必要性があるのかどうかを考えると、率直に微妙な感想です。とはいえ、最安モデルで「iPod classic」を下回る価格は魅力的。国内価格で見ると32GBの「iPod touch」には割高感があるので、PDA的に使うのであれば8GBで充分でしょう。

一方、個人的に気になったのが「iPod classic」。いずれ終焉を迎えることが判っている「iPod classic」は、分厚い大容量モデルが好まれなかったという理由から薄型モデルに統一されましたが、実は160GBでも足りない、160GBオーバーの大容量モデルを期待していた向きも多かったのではないでしょうか。「160GBは売れないから120GBに統一しよう」の目論見も、問題は値段が高過ぎたことだけで需要は消えていなかったことを考えれば、いよいよ円熟の領域に達したというよりは、やはりclassicはディスコンモデルのシンボルに過ぎなかったという印象です。まあ、どうせ160GBでも全ては入らないし諦めて薄型にしようか、といったムードのところに320GBの刺客でも現れれば、あっという間に差されてしまうとも限らないのが怖いところ。しかし、それでも120GBのiPodが3万円以下で手に入るとは、良い時代になったものです。

総じて、何だかんだと今回のイベントは、着実なスペックアップを果たした堅実なアップデートだったと言えるのではないでしょうか。連日のリークでほぼ正確な情報が事前に出揃ってしまい、当日には何の驚きもなかったという点では、サプライズのない地味なイベントではありましたが、iPodウォッチャーの視点で見てみれば、ユーザーからのフィードバックが手堅く押さえられた結果、より一層、隙のないラインナップに仕上がったという印象を受けます。昨年発表のnanoやtouchの購入に踏み切れなかった人でも、今年のモデルには食指が動くのではないでしょうか。とはいえ、「iPhone」と共にまだまだ成長の余地が伺える「iPod touch」を除き、iPodでは大方の事はやった感があり、もう特に新しく出来る事もないだろうと思うので、刺激的なキーノートはMac本体のイベントに期待したいところ。

そういった意味では、今回の“one more thing”はスティーブ・ジョブズの生存が確認出来たことだと言えますが、最近では時間感覚すら無くしているかの如く、専ら生き急ぎ過ぎている感のあるジョブズのこと、骨・皮・筋になっている自覚があるのであれば、体調のことを考えてスピードを緩めることも必要なのではないでしょうか。Appleが極めて安定した状態にある今だからこそ、彼というカリスマには将来の展望を見据えながら、ゆっくりとじっくりと歩みを進めて貰いたいものです。

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