iTunes 8 公開中
Posted by ramhorn05j
Appleは、iTunesの最新バージョン「iTunes 8」を公開しています。Mac OS X、Windows XP / Vistaに対応し、Mac OS X版のソフトウェア要件はv10.4.9以降。一時はv10.3.9にも対応しているとの情報が流れましたが、残念ながら拙環境ではインストール出来ませんでした。
今回のアップデートでは、App Storeやビデオレンタル、Cover Flowといった前バージョンまでの機能を継承しつつ、基本デザインはそのままにUIの改良が行われている他、アートワークのグリッド表示と新しいビジュアライザが追加され、新機能ではGeniusの搭載が大きな特徴となっています。
目玉機能となるGeniusは、音楽の新しい楽しみ方を提案する自動プレイリスト機能で、Geniusを呼び出すと、iTunes上にストックしてある楽曲を元に最適なプレイリストを自動生成してくれます。また、GeniusはGenius Sidebarを通じてiTunes Storeとも連携し、iTunes上にオススメの楽曲や関連のあるアルバムなどを表示してくれます。
Geniusで生成されるプレイリストは、AppleのiTunesサーバーが各ユーザーから匿名で収集したミュージックライブラリ情報をベースとしており、ユーザーの音楽の趣味やリスニング傾向を独自のアルゴリズムで分析し、これを元に同機能を呼び出したユーザーに対して、カスタマイズされた処理結果をプレイリストとして再提案しています。なお、ユーザーのライブラリ情報の収集は1週間毎に行われ、iTSで楽曲を購入した後や、CDリッピングなどでライブラリが更新された後にも自動でデータが収集されるとのこと。
GeniusはiTunesユーザーの集合知を活かした機能であり、時間の経過と共に、データが集まれば集まるほど賢くなり、より関連性の高いプレイリストを作成してくれる様になるという意味では、多くのユーザーが存在するiTunesだからこそ優れたレコメンデーションが期待出来るという点で、興味深い機能です。今やオンラインストアでは、利用者の購買動向を元にしたレコメンデーション機能は、商品とユーザーを効率的に結び付けるシステムとしてサービスの生命線を成す存在となっていますが、GeniusのそれはiTunesユーザーがライブラリに収めているコンテンツや再生動向を基準にしたデータであり、また、オンラインストアとローカルソフトのシームレスな統合が反映されている点で、Appleならではのユニークなレコメンデーション機能となっています。ユーザーにとっては、今後のGeniusの自動生成精度の変化は注目に値するでしょう。
一方、個人的に目玉機能であるGeniusよりも印象的だったのがグリッド表示。見た目には格好良いCover Flowも、こと俯瞰性という点においてはアートワークの数が多いと何かと不便なことも多かったので、より直感的に扱えるグリッド表示は見やすく機能的で、便利です。また、ブラウズ機能の強化により、文字を中心としたリストよりも素早くライブラリ全体を把握出来るだけでなく、ビューの内容も充実しており、閲覧性が向上しています。グリッド表示はアートワークを集めていると楽しさが倍増するので、これをしてアップグレードの動機にするには充分です。
また、ビジュアライザの刷新も話題となっていて、「iTunes 8」には新たにFLIGHT404のRobert Hodgin氏が制作したMagnetosphereが採用されています。以前はフリーのビジュアルプラグインとして配布されていたMagnetosphereですが、今回標準搭載されたバージョンでは、球体エフェクトが多用されていて全体的に動きが細かく滑らかになっています。球状から光が迸るビジュアライザは、綺麗というよりは驚くほど美しく、圧倒されてしまいますが、表示の仕方がどんどん変わって行くので、このビジュアライザだけでも飽きることはありません。ただ、iBook G4ではコマ落ちどころの話ではないので、こういうところまで手を抜かないのがAppleらしいところ。
総じて、今回のアップデートは、いずれも音楽を聴くことをより楽しく便利にしてくれるものばかりだったので、個人的には満足しています。しかし、最大の問題はPantherで使えないこと。Appleのプロダクトデザインは先進的ですが、同時に、技術の水準を切り詰め、過去の遺産をどんどん切り捨てて行きます。ロードマップ的には2世代前のOSとなってしまったPantherも、リリースされたのはついこの間の話。骨・皮・筋になって久しいスティーブ・ジョブズは時間感覚まで無くしたかの如く、最近では専ら生き急ぎでいるかの如く刹那的なスピード感を伴っており、これではTigerでさえも風前の灯火なのではないでしょうか。