2008年10月10日 (金)

マンナンライフ「蒟蒻畑」の製造を中止

兵庫県の1歳男児がこんにゃくゼリーをのどに詰まらせ窒息死した事故の影響で、製造元のマンナンライフは、この事故の原因となったミニカップ入りこんにゃくゼリー「蒟蒻畑」の製造を中止しました。同社品質保証室では「警告マークを大きくするなど行政に要請された改善策に応じられないため」としています。

今回の事故を巡っては、野田聖子消費者相が同社の幹部を呼び出して、自主回収やゼリーの形状の変更などの自発的な検討を要請。農林水産省も業界側に、子どもや高齢者が食べないように警告する外袋のマークの拡大やミニカップ容器にも警告を表示するなどの再発防止策を求めていましたが、メーカー側は要求された対応が困難と判断し製造中止に踏み切りました。今後は販売を再開するかどうかも含め、対応を検討していく予定。

マ社によると、製造中止となるのは、蒟蒻畑(25グラム12個入り)の8種類▽蒟蒻畑ライト(24グラム8個入り)の6種類▽蒟蒻畑コンビニ専用商品(25グラム6個入り)の3種類。8日の出荷で販売をいったん終了する。製造再開のめどは未定という。

 今回の事故を受け農林水産省は、子供や高齢者が食べないよう警告する外袋のマークの拡大やミニカップ容器にも警告を表示するなどの再発防止策を要請。業界団体は取り組みを表明していたが、マ社は「時間的、物理的に対応が困難で流通に混乱を招く恐れがある」と判断したという。既に流通している商品は「商品が危険だから製造中止にするわけではない」として自主回収せず、テレビCMなどで子供や高齢者は絶対に食べないよう注意を呼びかける予定だ。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081008k0000m040170000c.html
こんにゃくゼリーでは95〜96年に8件の死亡事故が相次いだ。センターの注意喚起や業界団体の注意表示で97〜04年は8年で3件と減ったが、05〜07年の3年で5件と再び増加の兆しを見せている。

http://www.asahi.com/national/update/0930/TKY200809300112.html

こんにゃくゼリー問題はネット上でも議論を呼んでおり、「餅の方が危険」といった反応から「保護者の責任も大きい」「こんにゃく製品にだけ厳しい対応を求めるのはおかしい」といった意見も多く見られます。それも当然のはずで、マンナンライフは率先して事故を起こり難くする為の改良を行ってきました。死亡事故が頻発した90年代半ばの段階では多くの問題を抱えていたこんにゃくゼリーも、事態を受けて、マンナンライフではカップ形状を変え注意喚起を行い、対策を実施しました。その結果、ここ2、3年、新規参入組の影響で再び死亡件数が増加傾向に転じるまでは、目立った誤嚥事故は起こっていなかった訳です。

痛ましい事故に対して、安易に自己責任論を展開することには躊躇を覚えるものの、今回の事故は、「祖母が・凍らせて・乳幼児に」食べさせたという状況であり、ある程度、自己責任が問われても仕方がない要素はあると思います。考えてもみれば、容器ごとに警告が大きく表示されていたとしても、それを読まずに無配慮に子供に与えてしまうような保護者は必ず存在する訳で、事前にカップの形状を工夫していたとしても今回の事故を防げたとは思えません。製造物責任の範囲を明確にせずにこの手のツッコミを突き詰めて行くとただの魔女狩りメソッドにしかならないので、少なからず、マンナンライフがこれだけの心血を注いでいるのだから被害者には同情出来ない、メーカーとしての頑張りが報われないからこその消費者相批判という論調にも、共感を覚えずにはいられません。

個人的には、今回の事故は、どのような食品にでも起こりうる誤嚥事故の一種であると理解しています。そういう意味では、こういった事故に遭遇した際にメーカー側がどう対処すべきなのか、という点でマンナンライフの動向には注目していますが、何せマンナンライフの売り上げの9割弱を「蒟蒻畑」が占めているということからも、体力がなければ即倒産という部分で、今後の成り行きを憂慮せざるを得ないのが実情です。企業努力を続けて来たマンナンライフからすれば、責任の全てをこんにゃくゼリーに押し付けるやり方は、言い掛かりに近いとさえ感じられることでしょう。製造中止の決断も、どちらかと言えばトレードオフの観点から、いくら警告表示を強化したところで、このままでは再度事故が発生して賠償問題にも発展し兼ねないとの判断が働いたものと考えられます。果たして、マンナンライフをせっつくことで一体誰が得をするのでしょうか。メディアの中にも比較的冷静な意見は見受けられますが、消費者団体などの突き上げを注視していると、どこか不二家に対するバッシングをも彷彿とさせます。

そもそも論で言えば、子供のリスク管理は、まず最初に保護者がやるべき事柄のはず。保護者の責務を問題にせずに頭ごなしに国がしゃしゃり出てくると、おかしなことになってしまいます。

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