2008年11月24日 (月)

「刑事貴族3 DVD-BOX」発売中

Amazon.co.jp:刑事貴族3 DVD-BOX

1992年4月〜12月に掛けて日本テレビ系列にて全26話が放送された水谷豊主演「刑事貴族3」がDVD-BOXとして待望の初映像商品化。

「太陽にほえろ」以来続いた日本テレビ伝統の金曜8時刑事ドラマ枠で放送された「刑事貴族3」は、寺脇康文、高樹沙耶が共演し、現在、テレビ朝日系列で人気を博している「相棒」の原型になったとも言われる作品です。お調子者で向こう見ずなはみ出し刑事・本城慎太郎が、後輩たちのドジな失態に手を焼きながらも、掟破りの方法で悪を追い詰めていく……そんな筋書きで物語が展開する本作は、シリアスさとコミカルさが入り混じった刑事ドラマであると同時に、珠玉の人間ドラマでもあります。「刑事貴族」は、パート2以降、水谷豊のアグレッシブさと若手の活躍を躍動的に描写することで活気に満ち溢れたシリーズとなっており、スタイリッシュなアクションとファッショナブルな設定が人気の原動力となっていました。

「太陽にほえろ」や「あぶない刑事」といった従来のオーソドックスな刑事ドラマのスタイルを踏襲する「刑事貴族」の特徴は、“貴族”というコンセプトに則って、意識的にファッショナブルであること。とりわけ水谷豊は、印象的なタキシード姿やベスト姿を披露し、愛車にイギリス車を使用、時には花束を持ってステップを踏むなど、随所に小技を忍ばせる、ファッショナブルなヒーローとして描かれていました。同時に、水谷豊の持ち味であるコミカルさもたっぷりと織り交ぜられており、彼ならではの刑事ドラマに仕上がっているのがポイントです。

また、例えば、劇中音楽ではフュージョンを用いたお洒落な楽曲を多用したり、或いは、オープニングでは英詞の楽曲を使用したり、エンディングでも織田哲郎、鈴木雅之といったアーバンワイルドな雰囲気を持つアーティストの楽曲を起用するなど、そういった小道具へのこだわりが作品の洗練されたなディテールを際立たせていました。

一方で、金曜8時枠らしいアクションも健在で、ガンアクションは勿論のこと、爆破シーンや激しい格闘シーンもあり、「太陽にほえろ」以降の流れを汲む派手なアクションがふんだんに盛り込まれていました。特に、パート2以降の小ざっぱりとしたアクションは完成度が高く、単純な物量と力技に任せた演出ではなく、リズムやテンポを重視した魅せる工夫と、様式美的な型を用いた品のある演出が現代的で、国産刑事ドラマにおける一つの到達点を提示していました。

かつては夕方に繰り返し再放送されたことで、レギュラー放送終了後も継続して人気と認知度を高めて行った「刑事貴族」ですが、要望は多かったものの、一向に映像商品化されることがなかった名作が「相棒」効果もあって遂にDVD化。そのお陰で、「刑事貴族」「刑事貴族2」を飛ばして、いきなりパート3が商品化されるという不可解な事態になってはいますが、ファンの待望であったシリーズのパッケージ化に大きく一歩踏み出しています。

90年代初頭、同時期には多数の刑事ドラマがありましたが、水谷豊主演の「刑事貴族」シリーズはその中でも最も豪華で、主要キャスト全員の代表作に数えられるほど、人気、クオリティ共に群を抜いている作品です。サスペンス、アクション、人間ドラマと、刑事ドラマにはそれぞれ傾向がありますが、このタイトルにはその全てが詰め込まれていました。ストーリーがしっかりしていて、それでいて絶妙な笑いも盛り込まれている本作は、国産刑事ドラマの中でも最高峰を争うほどの傑作です。

パート3に限っては、出演者が増えたことで、散漫故にパワーダウンした印象も強く、個人的に前田耕陽が好きになれなかったこともあって思い入れという部分でもパート2に及ばない点はありますが、それでもなお、バブルの名残が感じられるリッチな刑事ドラマとして楽しめること請け合いです。

見所は何と言っても水谷豊×寺脇康文ペアであり、他にも、若かりし頃の彦摩呂や中山忍など初々しいレギュラー陣も注目に値しますが、やはり「刑事貴族」は一にも二にも水谷豊。「あ、ラッキーラッキーラッキー」「お恥ずかしったらありゃしない」などといった名台詞も健在で、強力に物語を牽引しています。「傷だらけの天使」や「熱中時代」など、節目節目で人気を獲得している代表作がある水谷豊ですが、丁度「熱中時代」の次世代に当たる20代〜30代のファン層にピッタリとハマる私の年代では、水谷豊といえばこの作品です。

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