「M-1グランプリ2008」優勝は結成8年目のNON STYLE
Posted by ramhorn05j
史上最多の4489組がエントリーした若手漫才No.1決定戦「M-1グランプリ2008」決勝戦が21日行われ、吉本興業のNON STYLEがグランプリを獲得し、賞金1000万円を手にしました。
この日、決勝ステージへと駒を進めたファイナリストは、ネタ順に、ダイアン、笑い飯、モンスターエンジン、ナイツ、U字工事、ザ・パンチ、NON STYLE、キングコングの8組。前哨戦では、7年連続決勝出場を誇る笑い飯が637点をもぎ取り、優勝候補との呼び声も高かったナイツが640点をマークするなど、600点超えが続出し、「今年はめちゃめちゃレベルが高い。正直言いますと、採点の基準はもう"好み"です。好きかどうかの評価しか残されてないぐらい出場者の力に差がない」と審査員も舌を巻くハイレベルな戦いに。そんな中、7番目に登場したNON STYLEは、島田紳助をして「今日、一番の衝撃」と言わしめるパフォーマンスを見せ付け、700点満点中644点の高得点をマーク。優勝候補と目されていた笑い飯、ナイツを抑えて一躍トップに躍り出ました。
ところがこの後、9番目に登場した敗者復活枠のオードリーが、NON STYLEを上回る649点を叩き出し、トップを奪う波乱の展開。この結果、ベスト3から転落した笑い飯が敗退し、ナイツ、NON STYLE、オードリーが最終決戦に進出。審査員7人による最終審査の結果、NON STYLEが5票(島田紳助、松本人志、上沼恵美子、オール巨人、渡辺正行)、オードリーが2票(大竹まこと、中田カウス)を獲得し、5対2の圧勝でNON STYLEが8代目王者に輝きました。
思てたんと違う!
敗者復活戦からの"刺客"の健闘、そして決勝初出場の"ダークホース"の優勝と、波乱に沸いた今年のM-1決勝。「爆笑レッドカーペット」など、ショートスタイルのネタブームが勃興する時勢を反映する様に、モンスターエンジン、ナイツ、U字工事、ザ・パンチ、NON STYLEの5組が決勝初出場という新世代の躍進を感じさせる顔ぶれに。総じてニューフェイスの台頭が目立った大会となりました。
昨今のM-1を語る上で無視することの出来ない潮流といえば、それは“手数”と“スピード”。ボケの数が多い漫才ほど有利であること、また、スピード感のあるネタほど高く評価され易いことから、4分間の短いネタ時間の中に笑いどころを極限まで多く詰め込むという手数重視の戦略と、テンポの速い漫才で客席の空気を掴むというスピード勝負の戦略が、近年、M-1を勝ち抜く上での基本スタイルとなりつつあります。
その点、如何に笑いどころを増やすか、如何にテンポの速い漫才を展開するか、という部分において、NON STYLEのパフォーマンスはその最たるものだったと総括することが出来るでしょう。テンポよく繰り出されるボケ、観る者をしっかりと掴みながらハイスピードで疾走する漫才、即ち、“手数”と“スピード”、これら2つの要素を高い水準で満たした唯一無二の漫才師がNON STYLEだったという訳です。手数でナイツを上回り、スピード感で笑い飯を上回り、更にはミスのない精密な笑いで他の決勝進出者全員を凌いだNON STYLE。現代漫才の潮流の最先端を行く彼らの優勝は、漫才日本一を決める大会の勝者としては如何にも妥当なものだったと言わざるを得ません。
しかし、こと個人的な感想はと言えば、NON STYLEには華やかさに欠けるという点で物足りなささえ感じてしまうのが素人観測による寸評。そういった意味でも、決勝の面子ではナイツかオードリーに勝たせてあげたかったのが本心ですが、如何せん、ネタ的にはもう一歩及ばなかった印象で、特に、オードリーは一本目のネタが会心の出来映えだっただけに、ファイナルでは痛恨のミスチョイスに泣きました。同じ系統の漫才でも、例えば「ビデオレター」であれば優勝により近い地点を狙えたと思います。
とはいえ、突然決まった決勝の舞台にも、自信満々のキャラを崩さずに悠然と登場する春日のハートの強さといったらなく、ネタ中にセリフを噛んでしまったことすら爆笑に転化する腹の据わりようで、大竹まことをして「こんな漫才見たことない。噛んで面白いってどういうことだ(笑)」と言わしめたオードリー春日の存在感は圧巻。緊張感の張りつめた舞台で、胸筋をこれでもかと誇示するあの鳩胸姿勢のまま、揺るぎないキャラクターで客席に笑顔を振りまいていた春日の怪演は、それを軽くいなして見せる相方・若林も含め、M-1という大会にあってまさにオードリーの独壇場でした。或いは漫才的にも、敢えて春日押しのネタで二本目も攻めて来た心意気は買いたいところで、今大会での活躍によってオードリーの株はストップ高となっています。
オードリーの胆力に見るオルタナティブの力
しかし、疑惑と銘打たれたカンペ騒動を筆頭に、陰謀論に根差した突き上げによる巷での喧噪が一際印象的だった今年の決勝。個人的に、M-1の沽券には未だに信じられない部分があるのも事実ですが、かといって“リテラシー=陰謀論”では錯誤もいいところ。例えば、“漫才が一番面白い奴を決めよう”という大会に、呆れるほど真面目に取り組んでいるオール巨人師匠の様な審査員がいる一方で、今更、テレビに頼らずとも舞台だけで食って行ける様な漫才界の神々が、何故にテレビ局の下らないお膳立てに乗じなければならないのか───を考えれば、自ずと、ヤラセ、八百長、出来レースなどといった諸々の陰謀論を唱えることのバカバカしさが理解出来ます。ただ、賞レースという大義名分の元に、オール巨人師匠を始めとした現役漫才師の真摯な選評がM-1ブランドを最築する上での白眉となる傍らで、島田紳介や松本人志の方法論で審査員の“好み”が前面に押し出されてくると、視点が玄人過ぎて、素人との評価のポイントにズレが生じがちなのは気になるところではあります。“好み”の差でありながら“圧勝”という、ちょっとどうかと思うコメントが出てくるのも、それだけ東西のお笑いに対する嗜好の違いが伺えた大会でもありました。
私個人の贔屓目で見れば、少なからず嫌われるほどの個性無しには通用しない時代に、オードリーは今まさに旬に向かって、先月より今月!先週より今週!昨日より今日!といった具合に、人気実力共に上昇気流の真っただ中にあります。勢いほど恐ろしいものはないという意味では、もう1ヶ月遅くM-1が開催されていれば、優勝はオードリーだったかもしれません。それほど、実力伯仲、僅差の大会だったと思います。
例えば、「普通のことを喋りながら、ちょこちょこ邪魔をする相方にツッコミを入れながらネタを運ぶ」オードリーと、「間違いだらけを喋って行くボケに、ちょこちょこツッコミを入れながらネタを進める」ナイツは、同類項の真逆のコンビだと言われていますが、両者とも“笑い待ち”をしないのが従来の漫才の基本形からは外れている、というのがオール巨人評。それは、ショートスタイルのお笑いが浸透しつつあるお陰で、短いスパンのネタにも着いて来られる様になった観客の変化が、そのまま漫才のトレンドにも現れていることを意味しています。その時代の変化を味方に付けたのが、今回の最終決戦進出者、中でもNON STYLEだったのでしょう。
受け手の目が肥えると、芸は洗練されるものの客を限定して行きます。必ずしも諸手を上げて賞賛することの出来ない“如何わしさ”をも内包しているM-1にあって、その行き着く果てを慮る術はありません。しかし、時事ネタで一部の耐用年数を落としてまで敷居を下げたナイツと、完璧な一回目がファイナルへのフリだったオードリーをして、また、来年のM-1が楽しみになったのは言うまでもありません。
年々その影響力を強め、視聴率的にもピークを迎えつつあるM-1景気ですが、オードリーは、そのキャラクターと腕の良さから、関東圏では既に足掛かりを築いているので、今回の結果によって、優勝のNON STYLEよりもむしろオードリーの上昇気運に拍車が掛かりそうです。前評判が高かったナイツは損な役回りでしたが、こちらも関東では更に仕事が増えるのではないかと期待しています。


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