2009年01月16日 (金)

Apple、ユニボディ採用「17" MacBook Pro」発表

Appleは、MacBook Proシリーズの最上位モデルとなる「17インチ MacBook Pro」を発表しました。直販価格は標準構成時で318,800円。

10月に発表された新型MacBook / MacBook Proと同じアルミニウム削り出しのユニボディを採用した新しい「17インチ MacBook Pro」は、同クラスのノート製品では最薄最軽量を標榜する新型筐体のほか、17インチモデルの特徴として、新開発の内蔵式リチウムポリマーバッテリを搭載しています。バッテリを直接コンピュータに組み込むことにより、標準的な着脱式バッテリに不可欠な構造や枠組みを排除、前モデルに比べて40%拡大したバッテリは、1回の充電で最長8時間の駆動時間を実現しています。また、バッテリの充電可能年数を最大限に引き伸ばした結果、従来の約3倍となる最大1000回の充電サイクルを実現しました。

その他の主な仕様は、最高2.93GHzで動作する最新のIntel Core 2 Duoプロセッサに、最大8GBまで拡張可能な1066MHz DDR3 SDRAMメモリ、また、チップセットにNVIDIA GeForce 9400M、GPUに512MB GDDR3メモリを搭載するNVIDIA GeForce 9600M GTをサポートしたスイッチャブルグラフィックスアーキテクチャを採用。ストレージは320GB HDD(5400rpm / 7200rpm)のほか、最大256GBのSSDを用意。BTOオプションではアンチグレア液晶への変更が可能となっています。

なお、上記以外の基本スペックは、旧バージョンの17インチMacBook Proやユニボディ採用の新型MacBookシリーズに準拠しています。

Image:MacBook Pro 17-inch Early 2009

No Steve, No Surprises.

スティーブ・ジョブズ不在の基調講演で締め括られたMacworld Conference&Expo 2009。メインとなるiLife及びiWorkのアップデートの他にも、iTunes Storeの楽曲販売価格の見直し、全曲DRMフリー化と、幾つかの見所はありましたが、例によって、その大半で日本は蚊帳の外。次期OSとなるMac OS X v10.6 Snow Leopardのプレビューもなく、最後の錦を飾るMacworld Expoにしては、拍子抜けの感が否めません。

また、一年越しのアップデートが期待されたMac ProへのCore i7搭載は見送られ、人気に反して既に風化しつつあるMac miniがディスコンの気配を強めるなど、フィル・シラー上級副社長に噂の新ハードウェアを発表させなかったことで、欠乏感が増しています。そんな、最低限の義理を代理人に持たせただけの形となった基調講演にあって、ハードウェアとして唯一のアップデートがあったのが17インチMBP。最近の製品ラインの中では特筆すべきアンチグレア液晶が選択出来ることと、内蔵式の大容量バッテリを搭載したことが最大のポイントとなっています。

新しい17インチモデルは、MacBook Air同様、ユーザーがバッテリを交換することは出来ませんが、同モデルに採用されているリチウムポリマーバッテリによる駆動時間は最長8時間で、一般的なリチウムイオンバッテリの3倍以上に相当する最大1000回の充電サイクルを実現しています。

これほどまでにバッテリ駆動時間を伸ばせた理由は“内蔵式”の導入そのものにあります。バッテリ着脱式のシステムに必要な機構を排し、無駄なスペースの全てをバッテリの拡張に回すことで40%の大型化を実現、また、並べた時に隙間の出来る円筒形のセルではなく、ウェハースの様に薄く平らな短冊形のカスタムシェイプのセルを採用し、限られたスペースを有効活用することで効率化を追求。これにより、従来と同じパッケージサイズと重さで8時間のバッテリ駆動時間を実現しています。更に、電池に埋め込まれたマイクロチップがセル毎の充電状態をコンピュータに伝え、それに合わせてシステムが充電電流を微調整するなど、優れた充電管理を実現。これらインテリジェントモニタリングやアダプティブチャージングなどの採用により、バッテリの劣化が軽減され、充電サイクルの回数が飛躍的に伸びました。バッテリのライフスパンは最長で5年を謳っており、理論的にはノートパソコンのライフスパン全体を一つのバッテリで賄うことが可能となっています。“バッテリ交換不可”のハンデが、即ち、バッテリの大容量化、長寿命化に直結しているのが17インチモデルの特徴です。

しかし、ハイアマチュアやプロシューマーを中心に訴求する17インチモデルは、他のモデルよりもパワーを必要とするので、“バッテリ交換不可”のハードルは想像以上に高いものだと言わざるを得ません。本来、大きさ的にAC駆動向きのマトリクスである17インチモデルは、基本的にはバッテリの交換頻度が低い製品であると想定されるものの、トラブルシューティングを念頭に置いた場合、障害が発生した時に問題を切り分ける為にも、或いは、完全にコールドブートする為にも、バッテリを取り外せた方が安心出来るのは確かです。

逆に考えると、Appleとしては、17インチモデルが認められれば、一般的にノートパソコンでは嫌われるバッテリ一体型のシステムを他のモデルにも広め易くなる、という公算があるのかもしれません。Appleが、同技術をバッテリ機構を頻繁に持ち運ぶモバイルモデルではなく、敢えて17インチモデルに投入したのは、Appleの想定した使い方とユーザーの実際の使い方の食い違いを検証する為の実証実験的な意味合いが込められているとも考えられ、そういった部分では非常に興味深いスタディケースであることが伺えます。いずれにしても、他のメーカーには真似出来ないAppleならではの判断であることは間違いありませんが、これが即ち「先進的な試み」として受け入れられるかどうかはユーザー次第。実際のユーザーの使用環境でどのような評価が下されるのか注目したいところです。

2009年の展望

2008年、Macは米国においてPCの倍の成長率を記録しました。その勢いを2009年も維持することがAppleの課題ですが、一方で、今回の基調講演だけでは、その具体的な展望までもを推し量ることは出来ません。景気減速が鮮明になり、低価格PCに対する注目が高まる中で、昨年秋にAppleが投入したユニボディ採用のMacBook / MacBook Proシリーズは高い評価を集めましたが、反面、価格を引き下げなかったことが懸念材料として上げられていたことも事実です。意地の悪い言い方をすれば、BDドライブの一つも搭載せずに高級品面をしているMacBook Proシリーズ、特に30万円を超える17インチモデルは、この不景気なご時世にあって、決して安い買い物にはなり得ないということです。

フィル・シラー上級副社長は「iLifeは、人々がMacを購入する大きな理由の1つ」としていますが、iLifeの強化が、厳しい世情を打開する為の解決策の一つとなるかどうかは不透明です。景気が厳しい時期だからこそ、ハードウェアよりもまずはソフトウェアの強化から、というのは順番としては正しく、また、今回のiLife及びiWorkのアップグレードは、使い易さという持ち味を保ちながらも、よりパワフルな機能を求める人を満足させる強化になっているという点で、見所があります。しかし、それをして例えば、“Macの持続的なシェア拡大を狙って堅実な一手を打ってきた”というポジティブな印象は正直なところ余りありません。「値札は安くなくても、機能を考慮すれば断然“お得”なMacが、iLifeのアップグレードによって更に割安になりました」という理屈が、この景況感下で通用するのか否か、見物ではあります。

ただ、それよりもまず、“Late 2008”モデルの購入を控えているユーザーとしては、Appleには可及的速やかに円高を反映した価格改定の実施をお願いしたいところ。

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