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2009年02月22日 (日)

U2、最新作「No Line on the Horizon」をリリース

2004年に発売され、全世界で900万枚以上を売り上げた前作「How to Dismantle an Atomic Bomb」から約4年半、U2の通算12作目となるスタジオ・アルバムが登場します。

今作は当初、リック・ルービンのプロデュースで制作が開始されましたが、それらの楽曲は全てお蔵入りとし、新たに長年のコラボレーターであるブライアン・イーノとダニエル・ラノワ、そして共同プロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトが参加。U2のこれまでの栄光を支えた3人が揃い踏みする形で制作が進められました。

レコーディングは、モロッコのFezを皮切りに、ダブリンにあるバンド保有のスタジオ、ニューヨークの Platinum Sound Recording Studiosで行われ、現在閉鎖騒動でも話題となっているロンドンの老舗スタジオ・Olympic Studiosで最終的な仕上げが行われました。

新曲についてジ・エッジは「今までの楽曲とは全く違うサウンドだし、今世の中に出ている楽曲とも全く違うサウンド」とコメントし、制作に携わったダニエル・ラノワは「トラックはものすごく革新的。ロックンロールがもう一度ここに復活した」と発言していますが、U2にとってはエレクトリックやアンビエントといった要素をも含む挑戦的な内容になっているとの噂が専らで、早くも2009年のベスト・アルバムが期待出来そうです。

なお、「No Line on the Horizon」は、ノーマルCD版、デジパックCD版、マガジンCD版、ボックスCD版、LPビニール版の全5タイプが用意されるとのこと。3月2日の正式リリースに先駆けて、日本盤は2月25日に先行発売されます。

Amazon.co.jp:U2 / No Line on the Horizon

U2といえば、「Beautiful Day」といい「Vertigo」といい、近作はそのアルバムの何たるかを象徴する冒頭3曲から、“one of them”の1曲が先行シングルとしてリリースされていましたが、「No Line on the Horizon」ではまさかの6曲目がリードカット。乱暴に言って、大概のアルバムで6曲目というのは言わば息抜き≒捨て曲のポジション。前作から地続きの「Get On Your Boots」を敢えて前振りに持って来た今回のアルバムは、先行シングルのイメージだけでは到底語り切れない、底知れない予感がします。

というのも、2000年代になってリリースされたU2の2枚のアルバムは、アルバムのコンセプトよりも個々の楽曲の洗練に重きを置いていた感がありました。かつて「All That You Can't Leave Behind」発表時にボノが“シングル”の重要性を語っていた様に、純粋に一曲一曲の力を信じ、突き詰めて行ったのが21世紀初頭のU2だったと言えるでしょう。しかし、それ故に「全体が個を超えていない」……そんな印象があったのも確か。特に「How to Dismantle an Atomic Bomb」に見る「名曲揃いなのに、一枚の作品として見るとやはり何かが物足りない」といったモンタージュは、即ち「『The Joshua Tree』『Achtung Baby』には一歩及ばない」といった前後関係を語る上での決まり文句となっていました。

或いは、枯渇した作品のテーマ性という意味ではハッキリしていた「All That You Can't Leave Behind」も、U2史上最もヘヴィネスな駆動力に裏打ちされていた「POP」も共に名盤を名乗れるレベルのものでしたが、「The Joshua Tree」「Achtung Baby」程に“特別な空気を纏う”ところまでは行かなかったのが実情です。

ところが、「No Line on the Horizon」は、僅かに30秒の試聴だけでもアルバム全体を覆う濃厚な空気感が伝わってきて、今作にはその“特別”がありそうな尋常でないムードがあります。アルバムならではの表現に欠け、ただの“いい曲の寄せ集め”という印象すらあった「How to Dismantle an Atomic Bomb」に対して、新作には「The Joshua Tree」「Achtung Baby」が自身の世界観を持っていた様に、全曲を通しての統一した見解があり、個を超越した次元に包括的な本流があります。それは例えば、プログレッシブ的なアプローチをして、コンセプチュアルに寄り掛かった手法で個が全体に従属しているのとも異なり、強烈な個性すらまとめ上げる文脈がしっかりと存在している感覚です。ストレートなロックサウンドから一転、分厚い鉄板をぶち破るが如く押し寄せる音圧の波を掻い潜り、趣向を凝らした音の遊びを浴びるといった風情の今作、「How to Dismantle an Atomic Bomb」に唯一足りなかったものが、こんなにも理想的な形で補われるとは思いませんでした。

ある意味、現実に打ちのめされた「POP」での傷心を「All That You Can't Leave Behind」「How to Dismantle an Atomic Bomb」で癒し、また好き放題やりましたよ、という作品でもある「No Line on the Horizon」は、どの楽曲も今までのU2とは違う旋律とリズムでありながら、どの楽曲もU2としか言いようのない“音楽”で彩られています。それは、あの常にどこか“くどさ”や“重さ”があり、単純明快なキャッチーさとは無縁で、故にシングルヒットはあまりなく、しかしアルバムは売れていた、そんなかつてのU2ロックが戻って来たことを実感させます。

U2のアルバムは、出端こそ変化に戸惑い、或いは単純に変化を楽しんで視聴するのが慣例ですが、どの作品も聴き込んで理解が深まれば思うことはいつも同じ───U2はU2───彼らが変われば変わるほど、絶対に変わらない部分こそがより一層浮き上がって見え、U2が変貌を遂げれば変貌を遂げるほど、U2の核となる部分が抽出され凝縮されて行く様な、そんな気がしています。もっとスマートなやり方もあっただろうに、それが出来ない不器用さにもどかしさを覚えつつも、だからこそ、これまで辿って来た生真面目なまでの過程に信頼を感じます。変化の先にこそ、U2の本質の極みがあると確信して止みません。

正直、初見では思ったよりも地味に感じた本作。特に、ボノのシャウトは相当苦しそうで、聴いているこっちがハラハラする程、嫌に緊張感があったのも確か。しかし、このくらいの第一印象の方が、長く聴き続けられる愛聴盤になる可能性が高く、プライオリティを見出すことも容易。近寄りがたいほどの重厚感、煌めく理想主義、激しい高揚感、総じて「Achtung Baby」以降の歴史を集大成したアルバム───それが「No Line on the Horizon」です。

前作も相当に良いアルバムでしたが、時節柄、U2の作品群の中では最も「意義」の無いアルバムでした。今作は、“良作”止まりだった前作のそれを更に“特別”で上回る刺激的な作品になりそうな手応えがあります。「Achtung Baby」以降のアルバムでは間違いなくベストな仕上がりであることを半ば確信するに当たって、U2史上3枚目となるマスターピースの誕生と、U2らしいスケール感のあるロックが詰まった傑作を期待しています。

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