2009年09月01日 (火)

SCE、29,980円の新型「PlayStation 3」を発売

ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、本体デザインを一新した新型「PlayStation 3」を発表しました。筺体のスリム化を図り、低価格化を実現したCECH-2000Aは、日本では9月3日より標準価格29,980円で発売されます。

新型PS3は、HDD容量を120GBに拡張する一方、主要半導体から電源ブロック、冷却ユニットに至るまでの内部構造を徹底的に見直し、再設計することで、大幅な薄型化と軽量化を実現しました。初代モデル(60GB HDD)に比べて、体積・厚さ・重量が約2/3にまで圧縮されています。また、更なる省電力化が図られると共に、ファンノイズを低減することで静粛性が高められました。

本体の外観については、従来のイメージを踏襲し、PS3の特徴である曲面を生かしたフォルムを継承しながら、表面には柔らかさを感じさせるテクスチャード加工を施し、より親しみ易いカジュアルな印象のデザインに仕上げたとしています。

システムソフトウェアは最新のバージョン3.00を搭載し、新たにDolby TrueHD及びDTS-HD Master Audioのビットストリーム出力に対応する他、HDMI CEC機能BRAVIA Syncをサポート。一方、今回のCECH-2000シリーズからLinuxなどをインストール出来る「他のシステムのインストール」機能は削除されています。その他、主な仕様は従来のPS3と同等で、SACDには対応しておらず、PS2専用ソフトウェアとの互換性も有していません。

なお、新型モデルの発売を機に、PS3のブランド表記をファミリーを総称する“PlayStation”に統一。本体のロゴを刷新しています。

Amazon.co.jp:PlayStation 3 CECH-2000A

HDゲーム機として、Blu-ray搭載などハイエンドな付加価値を満載しながら、ライバルに比べて絶対的に高い価格設定が問題点として挙げられていたPS3ですが、遂にこれを解決する新型が発表されました。エネルギー効率と静穏性の向上により環境コストの削減を図りながら、本体のスリム化まで果たしてしまったオマケ付きです。

“高級レストラン”から“大衆食堂”へ。久夛良木氏をして夢と語るも、結局、プラットフォームとしての固有名詞足り得なかった“PLAYSTATION”ですが、その実、マルチメディアAV機としての性能はそのままに、小さく薄く軽くなって−1万円。Wiiの定価が24,999円であることを考えれば、Xbox 360と同等の価格水準を実現した新型は、PS3が第二のスタートを切るに相応しい戦略的な製品です。

内容を見て行くと、従来通り、PS2専用ソフトウェアとの後方互換機能は無し。これは、現状ではPS2のソフトウェア・エミュレーションが難しく、かといってEmotion Engine+Graphic Synthesizerを追加しては逆ざやの解消にならないという観点からも望み薄でした。個人的には、PS3が最も後方互換を必要としていた時期はとうに過ぎたと思っているので、今後、アップデートでの対応があろうがなかろうが、大局に影響は無いと考えています。そもそも、PS2互換を搭載していた初期型の販売不振から始まった苦境であればこそ、今更、救世主信仰の如くPS2互換の復活を期待しても始まりません。少なくとも、この値段なら後方互換が無くても良いと思わせることは出来るのではないでしょうか。

むしろ、CECH-2000AはPS2どころかPS3が遊べなくても安い(!)

  • BD/DVDプレーヤ
  • アップスキャンコンバータ
  • ネットワークプレーヤ
  • ファイルサーバ
  • WWWブラウザ

これだけ入って29,980円というのは破格。そして、実際にはHDゲーム機としてのプレイアビリティがある訳で、それらを勘案すれば、PS3の価値は箱だけにあらず。今や、ソフトウェア・コンテンツも充分に揃って来ていると感じます。

ただ、これまでPS3が喧伝して来たメディア・プラットフォームとしての性格を考えると、新型機におけるシステムインストール機能のオミットは象徴的です。元々、コンピュータとしてはクラスタリングを行って初めて真価を発揮するマシンではありましたが、PS3を外部エンジンとして使用したり、HPC(High Performance Computing)として利用することが不可能になったことで、改めて、コンセプトの大幅な転換を余儀なくされたPS3の現状と、スパコンの称号を自ら捨てざるを得なかった新型機の悲哀を実感させられることになりました。一部のメディアでは70%もの製造コストの削減に成功したとの報道がありましたが、敢えて省く必然性の無さそうな機能をわざわざ削ったということは、本体の採算性が大幅に改善したことによる値下げではないのでしょう。

さて、その新筐体は、E3 2009直前に中国経由でリークされていたモックアップの内の一つですが、デザイン・クオリティの低さから一旦はガセとして葬り去られたものがそのまま表に出てくるというのは、昨今のハードメーカーとしてのソニーの看板を如何にも象徴する出来事として印象的です。

新型はプラスチック感のより強いシンプルなデザインで、雰囲気的にはPS2の延長線上にあるハードとしての文脈を感じさせますが、例えば、新ロゴの思わず気の抜けてしまう様な不格好さは何なのだろうという話で、全体的に扱いがぞんざいで安っぽく、貧相です。電源ボタンやイジェクトボタンがタッチセンサーからメカニカルスイッチに変更になるなど、全体的に未来感のあるテクノロジー・ガジェットから、実用を考えた玩具的構造にシフトしており、明確な意図こそ感じられます。が、勿論、デザインでゲーム機を買う訳ではありませんが、旧型の高級感は他機種にはないチャームであり、ユーザーの所有欲を満たすという付加価値が、ブランド戦略を語る上でアドバンテージになっていたのも事実。その点では、値段とHDD容量が同じだったら旧型の方を買っちゃうかも……という程度には、旧型の方が作りが洗練されて見える、というのは残念です。

一方、アダプタを内蔵しながら、通気口だらけだった外観から穴らしきものがほとんど消えたのは気になるところ。エアフローを考慮すれば縦置きの方が有利に思えますが、そこを敢えてデフォルトにしなかったのは単にコスト的な問題かもしれません。ただ、好意的に解釈すれば、曲線的なデザインは平置きした時に上に物を置かせたくない、という意趣返しなので、恐らくは相応の熱量を天板から自然放熱するのでしょう。

しかし、単純に技術面を考えると、小型軽量化はソニーの真骨頂だと思いますが、今回ばかりは開発者の意地、凄み、迫力といった、モノ造りに懸ける職人の魂を感じました。従来より30%以上軽量化しながら、そこに電源まで内蔵してしまうというのだから恐れ入ります。発売当初はハイテク部品の塊だったので、部品の調達価格が下がったというのは大きいですが、それを差し引いてもなお、技術者の尽力には感服します。元が高過ぎた、というのは言わないお約束でも、ソニーはPS時代から「後に安く作れるハード設計」を貫いているので、ハードを売ることで発生する赤字も長期的な販売戦略を立てることで減らすことが出来ます。期待のタイトルが並ぶこの時期に新型機を投入出来たのは、メーカー、ユーザー、双方にとって大きなメリットだと思います。

総じて、ゲーム機として3万円を切る価格は普及の為には絶対に欠かせないものですから、SCEの不退転の覚悟を感じさせるには充分なものです。絶望の淵に立たされながら、良くここまで持ち直したものですが、むしろ、一時の氷河期を乗り越えて、既に囲い込んだユーザーの多くがある程度ゲームを買っている状況こそが、SCEにとっての大きな財産だと思います。

正直、PS3黎明期の3年間は、SCEのあまりのやる気のなさに、彼らはもうPS事業に真剣に取り組む気がないのではないか、やはり久夛良木氏が居ないと駄目なのではないか、そんな思いが頭を過ることもしばしばありました。が、その陰では、優秀なリーダーの指揮の下、関係者の地道な努力が続けられていた様です。

その成果として、SCE本気の反攻戦略の具体像が少しずつ明らかになっています。9月以降のPS3のラインナップはまさに“攻勢”というに相応しい充実ぶりですが、ここ数年のSCEのグダグダぶりからは凡そ想像も付かない見事なタイミングで投入される新型機はその先鋒です。ソフト発売スケジュールに合わせた早期からの在庫調整は、仕組まれた凧状態を演出する上でも重要な役割を担っていましたが、無風状態の8月を設けた上での新型投入だけに、ユーザーからの反発も少なく、受け入れもスムーズだと思います。また、PS3には「FFまでには……」といった潜在的な顧客層も多いので、SCEとしては、FF13発売までに初動需要を十分に満たせるだけでなく、その後のFF13需要自体も見込めるのがポイントです。

開発援助についても、最新のライブラリを配布してサードパーティをサポートするなど抜かりなく、ソフトメーカーに対する配慮も感じられ、純粋に「値下げ」だけではない全体をひっくるめた流れを作り上げたSCEの手腕は見事。現状、出来得る限りの手を尽くしたと思います。もはや、これ以上待つことに意味は無いので、黙っていてもゲーマー層のHD世代への移行は完遂出来ると見て間違いないでしょう。普及云々に関して言うと、携帯機市場が強い国内に限っては、据え置き機としての生存権を確固たるものとする為に、PS2以降、PSPで辛抱強くPS3が安くなることを待っていたユーザーを取り込み、晩年開花したPSP市場と同じ状況を作れるかどうかが課題と言えるかもしれません。

ネット全盛の時代、あちこちのルートから今回の発表に近い内容がリークされてしまい、正式発表はそれを追認する格好になってしまったのが惜しいですが、やはり公式リリースによりエキサイトしたのは確か。情報規制の難しさを露呈しながらも、今までの噂を最高の形で実現したSCEですが、あとは、その勢いを持続するだけのソフト、及びサービスを提供し続けることが出来るかどうか。

目下、SCEの目論みとしては、これを機に海外市場でXbox 360への遅れを取り戻したいところ。圧倒的なトップシェアを誇るWiiはさておき、北米、イギリス以外の地域では、既にPS3はXbox 360の立場を逆転しており、ソフト販売、ハード販売ともにHDゲーム機としての優位を保っています。が、如何せん北米市場の規模が大き過ぎるので、世界シェアではまだXbox 360に届いていません。これを踏まえ、Xbox 360が強固な地盤を築いている北米市場で如何にライバルを巻き返すかが新型の成功を占う上での重要な鍵となります。技術の進歩は世界共通ですから、PS3がCell 45nm化によって薄型化を達成した様に、Microsoftにも当然打つべき手はあるでしょう。

反面、個人がゲームに使う金額は限られるので、アタッチレートが際限なく伸びることはありません。例えば、任天堂ハードの場合は、任天堂のゲームが優先して買われるので、サードパーティの取り分が少なくなるのはある意味当然の成り行きですが、しかし、任天堂には仮にも自活出来るだけの力があり、かといって、任天堂以外のゲーム需要も、もう一社を食わせるだけはある……そういう意味では、この先、ゲーム市場はSCEとMSの壮絶な潰し合いになることが必至の情勢です。実際には、据え置き3位のPS3にも一定の市場があり、ソフトメーカーもマルチ戦略が主流であることから、従来の枠組みで、PS3を単なる負けハードとして片付けることが出来ないのが今世代機の特徴ですが、しかし、欧米の経済不況は長期化するので、ゲーム市場にも微妙な影を落とすでしょう。その点、日本の先行きも不透明なので、今後も携帯機優勢の動向は変わらないかもしれません。あとは開発スピードの勝負。今年のホリデーシーズンに向けた動きは例年以上に注目に値します。

いずれにしても、SCEのスケジューリングが珍しくハマりつつあることを含め、PS3への期待感はかなり高まって来ました。価格がネックになっていた人にとっては「買い」の価格帯に突入し、ソフトラインナップが引っ掛かっていた人にとっても9月以降は非常に魅力的なタイトルが揃っています。新型PS3、PSP go、PSPで基礎が固まったSCE陣営。まぁ、PSP goに3,000円を足すと新型PS3が買えてしまうというのは悪い冗談ですが、今年末商戦は久々にSCE陣営が大きな存在感を示すことになりそうです。が、その前に、まずはTGSで発表されるであろう更なる弾の追加と、来年度以降のソフトラインナップに関してユーザーを安心させる施策に期待したいところ。

あとは、無能な広報・マーケティング部門がもうちょっとマシな広告を打てる様になればいいのですが……エンターテイメント企業としてのソニーのお手並み拝見です。

リンク:http://www.jp.playstation.com/info/release/nr_20090819_ps3.html


でも正直、新型PS3にもすっかり見慣れてしまった(笑)。そうすると不思議なもので、今度は途端に旧型の方が野暮ったく見えちゃうんだよねぇ。相変わらず節操がない。

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