2010年02月28日 (日)

MICHAEL JACKSON'S THIS IS IT

魂の体現者・忌野清志郎、グレイシー柔術の創始者・エリオ・グレイシー、強さと華麗さ、オリジナリティとクレバーさを兼備したトップレスラー・三沢光晴、G7朦朧記者会見による失脚で晩節を棒に振るにはあまりにも惜しかった政治家・中川昭一……訃報を報じられた故人を思い浮かべるだけでも、大原麗子、山城新伍、森繁久弥、そして三遊亭円楽師匠と、この年が如何に諸行無常の節であったか。

既に時代は遠く、多くの喪失に苛まれた2009年にあって、最も衝撃的だったのがマイケル・ジャクソンの死です。

バラク・オバマが大統領となり、MJが死んだ年

期間限定の劇場公開を経て、Blu-ray&DVDも記録的なヒットを続けている「THIS IS IT」ですが、Amazon.co.jpで即日購入したまま寝かせておいたBlu-ray版をようやく視聴し終えました。

Amazon.co.jp:マイケル・ジャクソン THIS IS IT

本作は、2009年6月25日に急逝したマイケル・ジャクソンの幻となったコンサート“THIS IS IT”のリハーサル風景を収めた音楽ドキュメンタリー。2009年4月から6月までの時間の流れを追いつつ、2009年夏にロンドンのO2アリーナで開催予定だった“THIS IS IT”の100時間以上にも及ぶリハーサルと舞台裏を捉えた映像から構成されています。

本番を迎えることの無かった世界最高峰のステージ

キング・オブ・ポップの自意識を極限まで肥大化させた様な圧倒的なライブパフォーマンスの裏側で、皆が知っていたようで実は知らなかったマイケル・ジャクソンの素顔。「THIS IS IT」には、彼の表現者としての本質がギュッと詰まっています。マイケル・ジャクソンのアーティストとしての存在価値をこれほど的確に伝える映像作品はこれまでに無かったかもしれない───それほど、彼の天賦の才能を凝縮した生涯最高の“PV”が、死後になってようやく世間にお披露目されるというのは、何とも皮肉なことです。

というのも、生前のマイケルにはあまりにもスキャンダルが多過ぎました。マスコミは稀代のスターを三文記事の役者として扱い、結局、死の間際までネガティブな話題が途絶えることは無かった。その内の幾つが真実で、何が捏造されたことなのかは、彼がこの世を去った今となっては誰にも分かりません。しかし、この映像の中で眩い輝きを放つマイケルは間違いなく世界最高のポップスターであり、この作品には紛れも無いキング・オブ・ポップの真実の姿が映し出されています。衝動とカタルシスの呼び人が、虚空を打ち破るかの如く手を振りかざした瞬間に、彼を取り巻いていた噂の数々がどれほど些細で下らないことだったのかを思い知らされます。

Black or White

彼のアーティストとしての素顔は、プロフェッショナルにして妥協を許さない完璧主義者。しかし、気に入らない部分があっても、「怒って言ってるんじゃないんだ、LOVEだよ」とフォローを入れる彼のピュアな少年性は、彼の“人間”というものに惚れ込んだスタッフ達で守られ、決して侵されることがありません。誰もが自身をマイケルのファミリーだと語るように、彼が思い描く通りのステージを作ろうと全力でサポートするバックステージ全体が、「全てはマイケルの為に」の名の下に集う人間達が作り上げた巨大な無菌室のよう。それはMJという宗教で密封された世間との隔絶なのか、悪意の入り込む余地のない無垢なる空間で、楽しそうに歌い、踊っているマイケルは、さながら“ネバーランド”の住人であるに違いなく、スーパースターとしての屈折した運命を授けられ、生涯の“ヘルタースケルター”を宿命付けられた孤高のエンターテイナーが、もはや人種も、性別も、善も、悪も、全てを超越してしまった唯一無二の個性としてそこに存在しているのです。

病との闘い、そして、度重なる整形手術と投薬治療による副作用で、彼の肉体はもうボロボロだったのではないか、限界だったのではないか───マイケル・ジャクソンは死ぬべくして死んだ、この作品を見るまでは、確かに私もそんな風に考えていました。しかし、それは大きな間違いだった。

誰の体がボロボロだったって?とんでもない。感情を揺さぶる力強いボーカルも、重力を粉砕するキレのあるダンスも、マイケルのカリスマはまるで衰えてはいなかった。むしろ、50歳にしてこの状態をキープしていることが奇跡的にさえ思えるほど、やはり、彼は今、ここで死ぬべき人ではなかったのだ。理想を追い求め、美しいものだけを見詰める人生と、それを許さない社会の喧噪。全世界の愛憎の的となり、全世界の平和を歌った“神に最も近い”孤独なスーパースターの最期は、古き良き時代のアメリカンドリームと、80年代以降のポップカルチャーの終焉をも意味する時代の節目でありましょう。

思えば、「とんねるずのみなさんのおかげです」におけるパロディ・コントを笑いの種にし、連日加熱して行くゴシップ報道を好奇の目で見ていた私もまた、生前に彼の本当の姿を知ることはありませんでした。最後の最後に、「THIS IS IT」という形で、マイケル・ジャクソンがキング・オブ・ポップとしての伝説の足跡を後世に残せたことは、決して幸運では有り得ないが、心ばかりの救いとは言えるかもしれません。

音楽ファンであれば、特典映像を含めて、最高の映像と最高の音響で視聴すべき追悼ドキュメント。とにかく一人でも多くの人間の目に触れて欲しい。Blu-ray版は必見です。

オリジナルストーリー:
http://ameblo.jp/sinobi/entry-10376616588.html

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