2010年04月09日 (金)

Pt|God of War III

マシンパワーの極致とも言える驚異的なグラフィックスケールを尻目に、いわゆる純粋なACTとしては想像以上に大味だったGOD OF WAR III。本来はデビルメイクライに代表されるコンバットアクションと比較するのはあまり適当でないアドベンチャー寄りのゲームなので、テクニカルな三次元戦闘の駆け引きを期待すると肩透かしの食うのもむべなるかな……といったところですが、アクションの粗さを演出でカバーし、“見栄えよりも中身”といったゲームの本質論を“エンターテイメント”という名の力業で捩じ伏せてしまう、まさに古今に伝え聞く正しく洋ゲーといった雰囲気の作品です。

第一印象では「これならまだベヨネッタの方が面白かったかも……」とさえ思わせる微妙な手応えで、理想と現実の落差にモチベーションを維持するのに苦労させられました。GOD OF WAR IIIのゲーム体験は、逆説的にベヨネッタの価値あるアクション性に気付かせてくれる反面教師としても役立っています。

……と、そんな風に考えていた時期が私にもありました。事前に思い描いていた左様なイメージとは異なる、地に足の着いた強烈な“ビジョン”を持つGOW3の全貌───それは予想を遥かに超える“モンスター”の如き本能のカタルシス。正直、舐めていました。このエントリの為に用意していた草稿は放棄する必要があります。

神、いわゆるゴッド・オブ・ウォー

Amazon.co.jp:GOD OF WAR III

クレイトスさんが格好良過ぎて生きているのが辛い

ギリシャ神話をベースとした神々と人間との戦い、クレイトス・サーガの最終章を恐るべきダイナミズムと迫力で描くGOW3。徹底したリアリティと高い質感を追求したビジュアルは確かに圧巻で、ハードウェアの限界に挑んだ映像面での進化は、MLAA(AA×16相当)を始めとするCellのテクノロジーを存分に活用することで一つの頂点を形成していることは間違いありません。が、そのインパクトすら忘れさせてしまうほど、実はそれ以上に夢中になれる中身が凄かった。

破滅と殺戮をもたらす戦神の復讐劇、神殺しを題材にした過剰な暴力表現は時に残虐でグロテスクですが、それすらもアドレナリンに変えてしまうクレイトスさんの圧倒的なカリスマと背徳的な世界観。粗暴なバイオレンスだけでなく、内面の葛藤や心情の機微までもをエレメントとして盛り込んでしまう懐の深さ。そして、ステレオタイプな洋ゲーの先入観を覆す操作性の良さと絶妙なゲームバランス。映画的演出がシームレスに持続するGOW3にあって、グラフィックよりも、むしろ遊び易さを追求したというゲームデザインの隙の無さに感心してしまいます。

他のゲームが手に付かなくなる危険性有り

アクション、CSアタック、謎解き要素がゲームデザインの根本から組み込まれ、オリジンとして成立しているのがGOWの魅力。それらが一つの流れの中でテンポ良く展開するGOWなりのパッケージ作法、流儀にさえ慣れてしまえば、その悪魔的な中毒性に浸されることも吝かではなく、本作に限って言えば、GOW3は娯楽大作として本気で頂点を獲りに来ている───そう断言出来る究極のインタラクティブ体験が眼前には広がっています。その浴びる様な極限の完成度に心酔すること請け合いのGOW3は、ストーリー、グラフィック、サウンド、アクション、その全てが高度な次元で融合した傑作。GOW3を作り上げたSCEA Santa Monica Studioには、惜しみない賛辞を贈りたい。

ちなみに、公平性に疑問が投げ掛けられて久しい某雑誌のクロスレビューですが、片やベヨネッタが満点で、このゲームがそれより点数が低いというのは、いささか時代錯誤な“洋ゲー”の色眼鏡を通して評価したとしか思えず、実に奇怪。歴代GOWの点数と比較するとまるで数字遊びをしている様で、一体、ファミ通(あ、書いちゃった)が国内最有力メディアとして存在することの意義とは何なのか。まあ、彼らの恣意的な方針がグローバルな潮流から乖離しているのは今に始まったことではなく、KILLZONE 2やMASS EFFECTよりもHAZEの方が、デモンズソウルよりもラストレムナントの方が高得点だったのが、ファミ通のレビュー媒体としての価値基準を示唆する最たる証拠。仕方ないね。

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