2010年11月24日 (水)

Blu-ray「セブン」12月22日発売

モダン・サイコスリラーのスタンダードは「セブン」を分水嶺に語られる……と誰かが言ったかどうかは分からないが、もう今年で「セブン」から15年、「羊たちの沈黙」からは20年も経つのだから、月日が流れるのは早いものです。

サイコスリラーの金字塔として、未だにサスペンス界を呪縛しているデビッド・フィンチャー監督の代表作にして、映画界の潮流を変えた90年代を代表する傑作「セブン」が待望のBlu-ray化。DVD版に関しては、発売のタイミングが悪く価格が高かったこと、また、再生産が行われず入手の難しいタイトルであったことから、満を持してのBD化となった今回は、充実の映像特典に加えて、ハイクオリティな本編映像、音声を収録した、かなりレベルの高いBlu-rayソフトとなっています。

Amazon.co.jp:セブン

マイ・フェイバリット監督の一人でもあるデビッド・フィンチャーは、いわゆるコマーシャル・フィルム、MTV系出身の監督の中では、映画人として最も成功した人材の一人と言えるのではないでしょうか。

例えば、自分も昔から何かとディスっているマイケル・ベイを筆頭に、評論家筋からは「MTV出身の監督が撮った映画には“魂が無い”」などという揶揄のされ方をよくしたもので、その手の監督が撮ると

  • それなりに格好良い画面<カット>は撮れるが、場面<シーン>としては破綻している
  • 場面<シーン>の継ぎ接ぎだけで全体の流れ<ストーリー>が組み立てられていない

といったジャンク・ムービーになることが多いですが、デビッド・フィンチャーの映画は良くも悪くもそういった作品群とは一線を画していたと記憶しています。

ともすると技巧に走り過ぎるデビッド・フィンチャーが、「じっくり撮ること」に比重を置き始めたのは「ゾディアック」など割と最近の作品からなので、そうは言ってもキャリアの初期にはデタラメに外した映画もありましたが、それでもなお、彼の紡ぎ出す<ストーリー>にはある種の“品位”として共有されたビジョンがあり、その映像美学や演出哲学を“映画という文法”の中で表現できるセンスを持っていました。

「セブン」では、諸々の退廃的な雰囲気や登場人物の心理的苦痛を演出する上での緩急自在の艶かしい映像美が際立っていますが、一方では、これだけ暗澹とした陰鬱な作品が何故こうも繰り返し鑑賞され愛されるのかと言えば、それはそこにある種のデリカシーがあるからだと思います。仮にも、コマーシャル・フィルムの延長線上にある自慰行為を“自己完結する”行為として垂れ流すことに掛けては定評のあるマイケル・ベイの傲慢さとは対照的に、デビッド・フィンチャーには、その芸能をシステムに合わせて再構築・最適化できるだけのクレバーさがあります。即ち、現場監督として作品を俯瞰できるだけの客観性を持ち合わせており、アーティストとしての感性、演出家としての主張を客体的にコントロールできるロジックとフレキシブルなバランス感覚を兼ね備えている、ということだと思います。

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