2011年09月04日 (日)

Sennheiser HD650

一体、この短期間に、俄自慢のオーディオ環境がここまで飛躍、もとい暴走するとは誰が予想したであろうか。HD598の購入から一年にも満たない間に、物欲の発作は、遂に禁断のHD650にまで辿り着いてしまいました。

ただまあ、その分、今時、携帯電話も無ければデジカメも持っていないのが私なので、お金を掛けられるのはMacとPS3回りだけ。胸を張れることではないけれど、引き蘢り故の節制術で、無駄な投資と言えども、ごく狭い生活圏の中で自分の手の届く範囲内に集中しているからこそ成せる散財ですな。

しかし、なんだろう、オーディオの世界に片足の指を突っ込み掛かっていますが、「そんな世界、知らない方が幸せ」というのはつくづく至言です。環境を揃えると最初の内は感動するんですよ、でも、いずれそれが普通になっちゃう。おまけに、音の悪いものはもう体が受け付けない。最初はちょっといいヘッドホンで→でも、そうするとアンプも揃えたい→しかし、今度は上流の音の悪さが気になって……という具合に歯止めが利かなくなるのがオーディオ。意思をもって妥協することを覚えないと、本当に底なしの無限地獄です。

そんな環境下にあって、これ以上は踏み込めない、踏み込んではいけない絶対領域という意味で、一つの到達点と言えるのがHD650。世界で初めて開放型ヘッドホンを発売した老舗ゼンハイザーが誇る絶対的な標準機であり、唯一無二の完成型であるHD650は、貧乏耳にとってはまさに至高といえる存在です。しかし、今やこれが30,000円ちょっとで手に入るんだから……いい時代になったものです。

Amazon.co.jp:HD650

オーディオファイルHD650は、究極のオープンエア型ダイナミックヘッドホンです。受賞機種のHD600をベースに開発されたHD650は、再生音質をさらに向上させるため、使用材料を改善しています。HD650は、絶対的な精度と迫真の再生を維持しながら、表現性と情感で聴く人を魅了します。完成された音をぜひお楽しみください。

http://www.sennheiser.co.jp/system/xb/sen.user.ItemDetail/id/7.html

備忘録

さて、もはや評価の確立しきったHD650を敢えて今更レビューすることもないので、シェイクダウンの感動を簡単な備忘録程度に留めておきます。

まず、HD650というと開封の儀式ですが、開口一番、化学原料や有機溶剤などが混じり合った新品特有の何とも言えない芳香が、評判通り独特のウンコ臭さで思わず苦笑い。シンプルなフォルムで嵩張らないデザインですが、フレームはプラスチックで、新品早々に左耳のユニットの付け根が軋むほか、ヘッドバンドの接合部には塗装の剥げすらあり、流石にこの辺の作りは高級ヘッドホンらしからぬ安っぽさ。国産ヘッドホンの品質の高さを当たり前に思い浮かべていると面食らうと思います。

また、一般にデノンやゼンハイザーのヘッドホンはデカ頭に優しいと言われていますが、HD650のアジャスターはHD598以上のビッグサイズにまで調整可能。ただ、イヤーパッドの形状・素材、フレームのデザイン、両出しのケーブル、総じて使い勝手の微妙な違いから、装着感にそこまで特筆すべき部分はありません。私にとってはHD598との相性が良過ぎたとも言えますが、(あくまでもHD598と比較した場合の)フィット感の悪さを、側圧の強さで補っている感覚です。従って、軽量な割には圧迫感があります。

一方、HD650は300Ωというハイ・インピーダンスへの特化ぶりから、真価を発揮するには充分な再生環境を整える必要がありますが、とりあえずNR1601との組み合わせにおいては相応の音を鳴らせているのではないでしょうか。HD598からマスターボリュームを下げて、-47.5dBくらいの出力でも充分な音量が取れています。しかし、ある意味HD650の白眉は、物理的な圧迫感とこれだけの分解能がありながら、長時間のリスニングでも全く聴き疲れしないということか。全くどうなっているんだか、恐るべき音色の心地良さです。

まだ下ろして1〜2週間ほどなので、エージングに100時間前後の時間が掛かると言われているHD650にあっては、慣らし運転もそれほど進んでいない状態ですが、一度耳にすれば分かる明らかな違い、それは音の膜が一枚も二枚も剥がれた様な鮮明かつ伸びやかな響きであり、生々しいまでの表現力の高さ。音の粒が見える解像感と奥行きを感じさせる音場の広がり、これまで想像で補っていた音がしっかり聴こえるというのは感動的です。何よりもHD650は「高〜低音域までのバランスが良く調和の取れた音質で、高度に完成されたオールマイティ・ヘッドホン」であるとされていますが、その分、HD598に比べると、低音の強度、パンチといったものが“量”に対して若干寂しいので、スピード感のあるロックやテクノといった類いの音源ではキレが足らず、まったりし過ぎる感があるか。とはいえ、まだまだその辺りにポテンシャルを感じさせるのがHD650なので、一ヶ月、二ヶ月と使い込んだ時にどこまで化けるのかが楽しみです。

総括

昨年末のHD598から始まって、春旬MDT231WGの失敗を駆け抜け、既に今年一年分の運と経済力を使い果たした昨今、といった感じですが、その甲斐あってと言うべきか、NR1601とこのHD650は、AV機器では久々に本気でチュッチュ♥(´ε`)状態の逸品です。

PlayStation 3【HDMI】           【HDMI】MDT231WG
              }NR1601 <
MacBook Pro【光デジタル】        【Phones】HD650

実は、訳あってこの間にPS3を最新のCECH-3000Bに買い替えていますが、メタルラックに乗せて位置決めをするのに本体を動かしていただけでゴム脚が取れるなど、想像以上のコストカッターぶりに目眩がし、おまけに、データ転送ユーティリティでtorneのチャート情報が引き継がれないのは、現状仕様らしく、600時間超のデータがリセットされて大いに凹むなど散々───という裏情報があったりなかったりしますが、それはともかく、AVアンプ、ヘッドホンが揃うことで、今ようやくPS3のAV機器としての実力を堪能できているとも言えるので、この三種の神器は今後とも末永く愛用して行きたい。ただ、唯一懸念があるとすれば、NR1601のサポートが切れた時に、ドルビーヘッドホン搭載の後継機がないことへの不安か。

マランツさん、ビクターさん、何卒よりよき次善策を頼みます。

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