2012年10月28日 (日)

Now Playing|スネオヘアー / slow dance

今年、メジャーデビュー10周年を迎えたスネオヘアー。前作「スネオヘアー」より約1年2ヶ月ぶりの新作となる「slow dance」は、シングルとしては通算18枚目の作品です。表題曲はTVアニメ「好きっていいなよ。」のエンディング主題歌となっています。

Amazon.co.jp:スネオヘアー / slow dance

どちらかと言えば、初見のインパクトで一目惚れするような楽曲ではなく、繰り返し聴くことでその鮮やかな風合いの魅力が分かってくる本作は、疾走する景色を眺めているような爽やかなメロディと、“胸キュンと男臭さとヘタレが一体となった”青春の味がするボーカルに、ザックリとした心地良いギターロックサウンドが相俟った、総じて渡辺健二の卓越したポップセンスが光る、有り体に言って良い曲です。タイアップアニメの淡い水彩画のイメージにフォローされるような、聴けば聴くほど、噛めば噛むほど、じわりじわりと体の芯に浸透して行く、しつこさのないある種のマイナー感が実に癖になる“らしい”仕上がりとなっています。

ただ、それだけに全体に音が粗く、俗に言う糞録音なのが残念(※)。昨今の圧縮音源にフォーカスしたマスタリングのせいなのか、スタジオ、設備など一貫した制作環境によるものなのかは分かりませんが……と、まあこんな具合に、最近では本来生活に潤いと彩りを与えるはずの音楽という嗜みにも、より良い音質で───という一本別の通りを渡った異なる評価軸が加わってしまったので、それだけ至高のヘッドホンを日常的に使い回すというのも難しいものです。どんなに素性の優れた楽曲でも、それが糞録音であれば自然とリピートの手は遠のいてしまう(まあ、それでもうんざりするくらい聴き倒すんですけどね)。オーディオの泥沼に片足を突っ込んだペーペーが漏れなくぶち当たる贅沢な悩みです。

しかしながら、相応の機材があって、しっかりとしたスタジオミュージシャンが演奏を行い、ちゃんとしたサウンドエンジニアがミックス、マスタリングを施した楽曲というのは、やはり音響がいいんですよ。それは、CDDAというレガシーな規格の内に矮小化された音楽でさえそう。お金を掛けた作品にはお金を掛けたなりの、それだけの価値と理由があると私は思うのですよ。

まあ、これは音楽に限りませんが、やはり私はメジャー作品……という表現が適当かは分かりませんが、プロフェッショナルがコストを掛けて仕上げたリッチな嗜好品が大好きな人間なんだなぁと、改めて。ニコニコ動画を始めとしたネットカルチャー発のアマチュアリズムも良いですが、例えば、それが商業流通に取って代わるエコノミーだとは思いません。二者択一ではなく、どちらも違ってそれぞれ良いということですが、ただ、過剰品質、重厚長大といった旧来の色々なモノの価値が低下している今だからこそ、敢えて時代錯誤なメジャー路線への回帰というか、プロも、プロの世界観が分かる人間も泥臭く応援して行きたいなと。脱線しました。


(※)やばい、勢いで糞録音とか書いちゃったけど、そうでもないのかなぁ。単なる演出だったらどうしよう。HD800で聴き続けていると段々トリップしてくるんで、分からなくなってくる。

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