2013年05月26日 (日)

Now Playing|津田朱里 / WAVE OF EMOTION

音楽的にも評価が高いWHITE ALBUM 2のオリジナルサウンドトラック×3作は、楽曲、音質、ボリュームの全てにおいてレベルが高く、特に歌ものは絶品の味わいですが、上原れなの「l'espoir」、津田朱里の「WAVE OF EMOTION」などは、その延長線上に捉えても、質・量共に満足できる作品です。

Amazon.co.jp:津田朱里 / WAVE OF EMOTION

津田朱里の2ndアルバム「WAVE OF EMOTION」についてはより垢抜けた印象で、アルバム全体のムードとしては、春の訪れを告げるような爽やかさ、初夏のうららかな日差しにも負けないような心地良さに溢れているので、文脈的には、もう「身も心もグチャグチャになって胃の軋むような日々」が全て終わった後の世界、“不倶戴天の君へ”後の穏やかな気候に思いを馳せると良いかもしれません。

ただ、勘違い召されぬよう、この場合、WHITE ALBUM 2の文脈に含めても存分に楽しめる作品というニュアンスであって、勿論、翻って単体でもそれだけ完成度の高いアーティストアルバムであることは言うまでもありませんが、澱みのない透明感のある歌声に恵まれた津田朱里の自然体を引き立てるのに、とにかくこのCDDAは音が良い。アコースティックやジャズ的な視点での“響きの良さ”と言えるかもしれませんが(私にはそこまでの教養はないので何とも言えませんが)、適度にレンジが広く奥行きと立体感があって、情報量のメリハリと抜けの良さが爽快。個人的には坂本真綾のSHM-CD作品よりも気持ち良く聴けるので(過言だった)、マイベンチマークとしての基準にも耐え得る一枚かもしれません。

ちなみに、レコード会社にもトレンドと言うか、その時々での音の傾向というものがあると思うのですが、AQUAPLUSの自社レーベルとして設立された経緯を持つF.I.X. Records作品は、今の感覚で旧譜を聴き直してみると思わず「うーん」と唸ってしまう部分もあって、何とも言えず、意識の高い謳い文句と現実的な内容とのチグハグさに気を取られてしまいがち。時代の流れに敏感と言えば聞こえはいいのだけど、その実、軸がブレているような砕けた印象で、悪く言えばムラがある。

そこがオーディオ・マニアの間でも評価が割れている原因なのかなぁと思いますが、基本的にはニッチなクオリティ志向の会社だと思っていて、例えば、SACDでの精力的なリリースを殊更に喧伝していた頃は、どうにも器に酔っている感があって、それこそコンテンツたる音源にはムラがあったのだけど、とかく昨今は一本筋が通っていると言うか、根底の部分が上辺の流行に左右されなくなっている。いい人材、エンジニアでも見付かったのか、ミックス、マスタリング、編曲、プロデュースを含めた内容が伴うようになってきているので、近作のこなれた仕上がりは私好みです。

故に、零細レーベルとはいえ、現在のSuara、上原れな、津田朱里の三枚看板はまさに声、歌唱、個性に長けた3本の矢の如く、心強い歌姫なのだ。

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