2013年06月06日 (木)

Now Playing|Kasabian / Velociraptor!

2000年代を代表するイギリスのロックバンド、カサビアンの4thアルバム(2011年リリース)。

beat UK亡き後、専門局を除くTVプログラムでは唯一と言っていい貴重な洋楽チャンネルであるベストヒットUSAでのピックアップがアンテナにヒットした由縁から、迂遠を凌ぎ、ここ10年の英国産バンドの趨勢では最も実績に恵まれていると思われるカサビアンも、本格的に聴き込むのはこれが初めて。

最初に思ったことは、ボーカルの喉が開いているなということ(笑)。メロディラインからは近代UKロックらしい青臭さも伺えるのだけど、アレンジはオェイシスOasisのような直球のブリットポップ(死語)とは違い、The BeatlesやLed Zeppelinなどの源流により近い感じ。Oasisの兄弟分として蜜月の関係にある相関図とは裏腹に、大衆性という部分を除けば、あまり音楽的な類似点はないように見える。何せ自由なのだ、それでいてアウトプットはカサビアン以外の何者でもないという咀嚼フィルターの優秀さ。実際、これがどの程度計算によって裏打ちされているものなのかは分からないけれども、衝動や発想といったセンスだけではない、技術も感性も教養も試されることなのではないかな。意外と頭脳が機能しているバンドなのだなと。

そして、ハーモニーで聴かせるよりも、エレクトリック・ビーツなグルーヴでザックザックと刻んで行く様は、どこか野蛮で、雑多で、オリエンタルか将又、エスニックな雰囲気。サイケデリックでファンキー、ダンサブルで切れ味鋭いサウンドプロダクション───中近東寄りの民族音楽を連想させるアプローチやエキゾチカを標榜とするアレンジが取沙汰されることも多いカサビアンですが、シンプルでいて荒涼とした、カラッと乾いた軽快な音響には非常に分かりやすい格好良さがあり、どこかクラシカル。その懐かしい異国調の演奏は時代感覚を忘れさせます。

不穏な音塊の迫力に圧倒される、なんてことは全くないけれども、シーンの最前線でこれだけの成功を収めていながら、このバンドとしての本能に妥協がない、単にラッディズムと一括りには出来ない放浪感漂う奔放さは、確かにPrimal ScreamやKula Shakerといったビッグネームと並び称されるのも理解できる。一つ一つがバラエティに富んだ豊かな楽曲群も、全体としてはどこか使い古されたような、聞き覚えがあるような錯覚を覚えるのに、印象としては新しく、飽きが来ない楽しさ。個人的にはOasisやColdplayほどその音楽性にハマっている訳ではないけれど、たまにはこんなリズムと戯れるのも乙なものなのだ。

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