2014年04月06日 (日)

訃報・蟹江敬三さんが死去

先月末、3月30日に胃がんで亡くなっていたことが報じられた蟹江敬三氏。享年69。

古くはロマンポルノ、また、我が家でもオンタイムで視聴する機会が多かった「鬼平犯科帳」を始め、屈指の名バイプレーヤー、個性派として知られる俳優活動は勿論のこと、近年では何と言っても「ガイアの夜明け」のナレーションが馴染み深かったカニカニ。2002年から実に12年にも及ぶ活躍を通じて、もはや蟹江節はテレ東の看板になくてはならない存在となっていました。

安易に残念だとか、ショックだとか書くことは出来るのだけれど、件の番組における蟹江敬三のナレーションは、ある意味、永遠にそこに居るかのような、火曜22時にテレ東を点ければいつでも変わらずにその声が聞こえるような身近さがあり、それは日々の生活の中でリアルタイムに接し、積み重ね、費やしてきた時間なので、呆然というか、あまり実感が湧かないというのが正直なところ。「ガイアの夜明け」の代名詞の喪失は、役所広司から江口洋介へのバトンタッチという案内人の世代交代を模したレベルではなく、もはや「『ガイアの夜明け』を見る理由がなくなった」とさえ思える出来事です。

もう「ガイアの夜明け」なんて番組など、必要ないよ、と言われるような元気な時代が来るまで───私もナレーションをやり続けます。

日経スペシャル ガイアの夜明け : テレビ東京

そう語っていた蟹さんが逝ってしまった事実。これほど大切な番組のレギュラーに穴を空けるくらいなのだから、重篤な病気だというのは分かっていたはず───分かっていたはずなんだけど、容易には受け入れられないなぁ。

訃報に際して、WBSのアーカイブで直近の映像を見てみると [「ガイアの夜明け」ナレーター 俳優・蟹江敬三さん死去:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京]、真っ先に「ああ、老けたなぁ、痩せたなぁ」とは思うものの、こう言っては何ですが、非常に充実した、穏やかで朗らかな表情をしているし(ある種、悟っていた部分はあったのかもしれないけれど)、一方では、耄碌とは無縁な、まだまだ壮年といった明瞭さがあって、いい歳の取り方をしていたんだなぁと。伊達に俗世間の理想の中年オヤジを張ってはいなかった。

何かこう、蟹江敬三の特別さって普遍的だったことなのかなと。当たり前であり、普遍であったものが無くなった時、人は「ポカーン」とする以外にやりようがないのだ。この現実感の無さったらない、しかし、どこか空虚でもある。謹んで合掌。

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