2014年06月19日 (木)

Destiny|日本語版の発売決定に際して

ゲーム史上最大規模の500億円を投じたAAAの超大作「Destiny」。若干、話題先行の部分もあり、MMO(のようなもの)を標榜する割には実態の見えないビジネスモデルを危惧する声もありましたが、E3 2014の開催に合わせて実施されたαテストも概ね好評を博し、徐々にその全貌が明らかになりつつあります。

さて、ここ極東の地にはなかなか情報が伝わって来ないので、そもそもの国内展開すら定かでない状況下での停滞ムードを憂慮していましたが、無事、ローカライズが決定したことは喜ばしく、更には北米から僅かに2日遅れでの発売を実現したというのは予想以上の成果。ただ、販売元がSCEJAということで、案の定、ゲハード的な吹き上がりを見せるファンボーイの間では悶着があるようです。

Destiny | プレイステーション® オフィシャルサイト

開発元のBungieは、直近では何と言ってもHaloシリーズの制作で知られるスタジオ。言わばXBOXの顔だった存在です。それが一転してライバルのexclusiveになって帰ってくるというドラマには思うところが無い訳ではありません。

ただ、既にHaloと決別し、独立する道を選んだデベロッパーに過去の因縁を吹っかけるのはナンセンス。また、個人的に思うのは、明らかに何らかの力の介入が伺える独占、実った果実を有り余るマネーの力で奪い取る、言わば「金で独占を買う」といった手法は、それこそMicrosoftが前世代機で散々やらかして来たことなので、今更、その点で煮え湯を飲まされたとSCEJAに批判の矛先を向ける声は傾聴に値しません。

一方で、今回、人材募集の広告などから推測されるに、各国語版のローカライズはBungie自身が担当しており、SCEJAは文字通り販売のみを担当しているものと予想されます。従って、ただでさえ困窮に喘いでいるSCEJAが「金で独占を買った」というよりは、日本展開に消極的なActivision Blizzardとやる気のないMSKKを筆頭に、腐りきったサードパーティをも含めて、ゲーム規模に見合わない不透明な市場動向を鑑みた時に、サポート体制の構築とリスクマネジメントを天秤に懸ける必要性から、誰しもが手を挙げなかった───結果的にSCEJAの独占に「なってしまった」というのが正しい理解ではないでしょうか。

そこで想起されるのが前世代におけるBorderlands。日本語ローカライズではXBOX 360向けの情報が先行していたものの、PS3向けの翻訳作業も進行しているとアナウンスされていたBorderlandsが、国内発売に際してMSKKによるパブリッシングで展開されると発表された時には絶望に打ち拉がれたものですが、それとなく時間を置いて、後日、テイクツー・インタラクティブ・ジャパンから別途PS3向けにもGame of the year editionが発売された事例もあるので、まあ、そういったパターンも有り得るのではないでしょうか。要するに時限独占というヤツですね。

いずれにしても、それにはある程度本体が普及している必要がありますが、今や家庭用ゲームの中心地は北米、そこから周回遅れになること、ここ日本ではソーシャルゲームにスマホゲームと、マーケットの特殊化、蛸壺化がますます進行し、据え置き機は壊滅寸前でありますから、本来であれば、エコノミーに更なる疲弊をもたらす時限独占の類いは好ましくありません。近年の我が国におけるPlayStationプラットホームの普及率や優位性を考えると、結果的にPS4への一極集中が起こってしまうのは道理であるし、それを意図的に阻むことは百害あって一利なし......とは思うものの、それはライバル不要説を意味するものではありません。即ち、市場原理が働いた結果の寡占ではあっても販路(供給先)の独占は得策ではないということです。公正な競争こそ正義ですからね。

コンソールの復権が"本物"となった欧米市場を尻目に、兎にも角にも、日本では業界全体が盛り上がらないことには据え置き機の滅亡衰退は必至の情勢なので、共にコアなハイエンドゲームを得意とするXBOXには粘って欲しいし、SCEJAもMSKKも揃って怠慢癖・迷走癖のあるメーカーですから、PS4とONEが良い競争関係になって切磋琢磨して欲しいと願うばかりなのであります。

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