2014年06月30日 (月)

Spring is here|ラブライブ!2期終了

#9「心のメロディ」で一つの山場を越え、#10「μ's」以降はμ'sの核心と大団円に向けて感情のうねりが加速して行った涙腺崩壊系「ラブライブ!」。

厳しい見方をすれば、“疑惑のシーン”や“茶番”(いずれも描写の仕方の問題)など曲折あった2期も、流石に終盤は澱みのない流れでまとめて来ました。特に、メンバーの美学や溢れ出る想いが物語の結末を決定付けた#11「私たちが決めたこと」は見事。#12「ラストライブ」でのアンコールから「僕らは今のなかで」への流れは感動的でありました。ラストライブ後の余韻を残しながらも、「涙を拭こう、笑顔で胸を張ろう」といった応援歌で締めるHappy maker!なエピローグも象徴的です。

Image:ラブライブ!2期

でも、惜しくはないですよ。「続きは劇場版で!」といった安直な引き延ばしをせず(便宜上、そういうことにして話を進める)、レギュラー放送で全てを出し切った、完全燃焼したという潔さもそうですが、承前、

この先もずっと、この9人で続いて欲しいなぁと強く思わされます

というのがアニメ1期、3rdライブを経ての率直な感想だったので、そうなるべく覚悟はしていたし、そうなるべき展開なので、これ以上の納得感はありません。元々、時空間の整合性は二の次であり、シチュエーションのお膳立てに特化した演出主義、一種の外連味としての様式美が「ラブライブ!」の真骨頂なので(まあ、匙加減を間違えると“茶番”になってしまうのが難しいところですが)、1期から連綿と続く時間の流れが、2期において一つ、また一つと結実していく展開は、μ'sの起こした奇跡が全て一本の線で繋がっていることを実感させる仕掛けであり、草の根ラブライバーの輪を増やし、繋ぎ止めることに成功した秘訣でもありましょう。

2期でより強く意識されるようになったドメスティックな表現は、ともすれば内輪向けのネタとしてまとまってしまい、視聴者を白けさせる可能性もありましたが、結果的にはそれが奏功する形で覇権化した2期を見るに、μ'sの芸風(パーソナリティとコンテキスト)が広く受け入れられたことは、一方ではメジャー化に伴う一抹の寂寥感を覚えつつも、幸せなことです。

翻って、今や「ラブライブ!」と言えば飛ぶ鳥落とす勢いの有望なコンテンツ、言い換えれば稼げるコンテンツですから、延命の手段は幾らでもあった筈です。世代交代によるライフサイクルの定着化や、いっそサザエさん時空化する方法もあった。しかし、制作陣は「ラブライブ!」が形骸化することを良しとしなかった。様々な大人たちの思惑が動いているプロジェクトですから、実際はそんなに素朴な話でないことは理解していますが、それでも作品性を第一義に考えたスタッフの熱意には頭が下がる思いです。

全盛期の内に潔く身を引き、有終を飾るというのはなかなか出来ることではありません。仮に当人たちが望んでも、周囲の喧噪がそれを許さないこともあります。その点、「ラブライブ!」はこれまでの積み重ねの大きさに比例して、幸いにも多くの人間から支持を集め、関わり合う人々から愛情を注がれていたムーブメントだったので、条件としては恵まれていたと思います。逆に言えば、School idol projectの頂点、到達点としてのアニメ化を経て開花した人気は、その幕引きのあっけなさ故に伝説化するものなので、ある意味、周辺のビジネスはやりやすくなるはず。クレバーな判断だと思います。

1期、2期を通して、実りある中身の濃ゆい一年を全速力で駆け抜けたμ's。それこそ彼女たちにとっては奇跡のような時間であり、限りある一瞬の輝ける人生が眩しい。僕たち、私たちのタカラモノズであるμ'sの新たなる門出に際して、彼女たちの行く末に幸多からんことを願わずにはいられません。

ちなみに、今期、最も印象に残ったエピソードと言えば、#5「新しいわたし」こと凛ちゃん回が殊勝。#8「私の望み」こと希回も捨て難い。1期との持続性や関係性、或いは伏線と言ったものをしっかり回収し、メンバーの成長を絡めた魅力を劇中で描き切っているという点で、μ'sそのものの株が著しく底上げされるハイライトだったと思います。“特別”な1期と、より深い部分でのμ'sの成長と本質を描く2期、やはり両方合わせて初めて夢の跡先であり、青春の一ページたるSchool idol projectなのですよ。自分にとって、「ラブライブ!」はとても大切な作品になった、はずです。

いささか残念なのは、このコンテンツに関しては、共感装置としてのニコニコ動画がいよいよ使い物にならなくなってしまった点か。まあ、作品自体に(着火点として)これだけの感情を揺さぶるエネルギーがあれば、ファンの間でも意見は割れるでしょうし、元来のコア層の中にはオタク同士の軋轢やルサンチマンの拗れが物事をややこしくする部分も出てくるのでしょう。純粋なラブライバー同士の間ではそこまで殺伐とした摩擦を生じる場面は少ないと思いますが、その分、何気ないWebサーフィンの合間に不意に紛れ込んでくる悪意の塊、リスペクト不在のラウドノイズには酷く気分を害されるので、スルースキルがなく、脳内あぼーんで物事を適切に処理できない、アンチやイナゴ勢力の怒涛に対しては内心フラストレーションを溜め込むばかりで、一向に割り切れない脆弱な神経の持ち主としては、かくも厳しいインターネッツであります。

ARCHIVES

  • Browse All Archives [1745] »

RECENT ENTRIES