2014年07月23日 (水)

ソニー、「Android TV」を全面採用へ

いち消費者に過ぎないトーシロが、黄昏の巨人の背中を眺めながら物思いに耽るとこんな与太記事が出来てしまう、という意味では確かに「的がデカイ」と言わざるを得ないソニー。

さて、やや旧聞に属する話題ですが、ソニーが2015年度よりBRAVIAに「Android TV(Android L)」を全面採用することを発表しました。「今ソニー自身が、新しいOSを開発することはあり得ない」というコメントが象徴的です。

ソニー、2015年よりテレビに「Android TV」を全面採用へ - AV Watch

正直、この一件で、個人的には「あ、ソニーやっぱりダメかも」と思ってしまいました。当てが外れて欲しいし、ダメにならないことを祈っていますが、それこそ「ソニーならでは」と聞いて真っ先に思い浮かぶPlayStation OSやtorneをここぞという場面で武器にすることが出来ない時点で、One Sony的な構造改革宣言や部署間の連携、横の繋がりなどという大本営発表は幻想だったんだな、と。要するに「ガッカリだよ!」ということです。

無能なストリンガーがようやく退き、平井体制になって以降のソニーの製品群にはモアグレッシブな攻めの姿勢が伺え、往年のソニー復活の気配は割と多くの人が感じ始めていたと思うのですが、メーカートップがエレキとテクノロジーに理解があったところで、それが業績に繋がらないことが大きな課題でした。

時代の潮流、構造の変化というものは厳然としてある訳なので、今やMicrosoftが直轄でPCハード事業に乗り出すご時世ですから、例えば、VAIO事業の切り離しなどは内外にショッキングな出来事である反面、致し方ない部分も理解できるのですよ。感傷に浸ったところで、ソニーとしても足枷になる苦渋、自由を縛られる窮屈さは感じていたはずなので。ただ、じゃあ、それとテレビは何処が違うの?テレビに固執する意味は?と考えた時に、ソニーのテレビである意義、独自の価値とは何なのか。

結局、PCというアーキテクチャを手放した今、次世代のメディアハブを何処に据えるのか、という話になるのですが、これは普通に考えたらPS4が担うべき役割なんですよね。ところが、日本においてはPS4は孤立し、コンテンツの連携を図るどころか、ますます縦割りに拍車が掛かり、ホームエンタテインメント分野ではXbox Oneにすら遅れを取っているのが現状。PS3失敗のトラウマや反省があるのは分かりますが、他社でも出来ることにリソースを投入するソニーに未来があるとは思えません。

現在のソニーが置かれている苦境を鑑みると、赤字脱却に躍起になるのも半ば道理で、難しいところではあると思うのですが、すぐ側には並の企業では真似できない優れたソフトウェア資産を持つSCEという組織があるのに、汎用部品の寄せ集めに苦心することが「ソニーらしさ」なのかなぁと。

いや、組み立てるのは出来合いの部品でも完成するのはその個性に対して独自のもの、という方法論───核心部分にのみ秘伝のタレを用い、メーカーオリジナルの演出と味付けを施して世に送り出す、というのも立派な価値創出の一つだとは思うのですが(ゲーム機としてのPS4はまさにこのやり方で成功したケースだと思うので)、BRAVIAに限っては、その核心部分すら手放したように見えます。

パネルもチップもソフトも外注、じゃあ最後にはデザインと映像エンジンで勝負?数多の制約の中、多少小綺麗にした程度のデザインで耳目を集めつつ、画質や音質で勝負すればいいと考えているのだとしたら、そういったハイオーディオ・ハイビジュアル的な思想面でのアプローチが、残念ながら大衆に対して売りにならないことは、ソニーが一番良く分かっているのでは?

意地の悪い野次馬には「保険屋」とも揶揄されるようになって久しい昨今、AV家電メーカーとしてのソニーがどのような価値観を世に問おうとしているのか、エンターテインメント企業としてどのような夢を我々に提示してくれるのか、今回の一連の報道を見る限り、私にはそれが分からないです。

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