2014年08月11日 (月)

Marantz NA8005トライアル

さて、このご時世、デジカメもケータイも持たず、衣食もごくごく質素(テンプレ)、MacとPlayStationを中心とした限られた趣味娯楽に持てる財産を一点集中して投資できるのも、未だ日常生活に不自由するレベルの健康弱者であればこその裏返し、といった部分があります。故に、好ましいことではないと自覚しつつも、一度物欲の発作に見舞われると、気持ちばかりが逸ってしまって、その衝動を抑えることが難しい。まさに生き急いでナンボ。貧困世帯に経済的な余裕は無いですから、そこで求められるのは、せめてもの売っては買っての繰り返し。

即ち、初期不良が疑われる挙動に改善が見られなかったNR1605は、店舗に問い合わせの上、返品。加えて、PS3の残滓たる積みゲーの消化も、現状、体力的に出来得る範囲内の物件については一区切り付いた(と思い込みたい)ので、こちらも本体含めて処分。それを元手に入手と相成ったのが、この度のNA8005であります。

Amazon.co.jp:NA8005

承前、筆頭候補となっていたNA8005ですが、厳密にはネットワーク機能は必須ではなく、ニーズとしてはAudirvana PlusのInteger modeに対応する為のUSB DACと、PS4の音声出力を迂回する為の光デジタル端子があればOK。その点、PM7005も検討物件ではあったのですが、PMシリーズは恐らくスピーカーアウトをレベルダウンして出力しているはずなので、AVアンプやプリメインアンプのヘッドホン出力が専用のものに比べて劣る(と言われている)ことは理解していますから、そこを突き詰めてもしょうがない。また、ディスプレイ(電子ボリューム)を搭載していないので微妙な音量の調節が難しく、ヘッドホン用の据え置きアンプとしては使い勝手に難があるのも引っ掛かりました。

そこへ持ってくると、仮にもヘッドホンアンプを内蔵しているNA8005であれば……ということですね。重要なのは、パソコンもゲーム機もヘッドホンも一纏めに出来る複合機としての利便性とコストパフォーマンスであります。

とはいえ、最近はDAC / HPAにも良い製品が多く、話題のOPPO HA-1はちょっと高くて手が出せませんが、定番のFOSTEX HP-A8や、発売して間もないPioneer U-05などはスペック的にも満足が行くもの。ただ、HPAに関しては完全に素人なのでもうちょっと勉強したかったのと、マランツの「HD-DAC1」を待ちたい気持ちもあったので、今回はこれまでの流れを踏まえた汎用機でワンクッション置くことにしました。

その前段階に当たる下準備として、脱ドルビーヘッドホン環境に順応する為に必要だった矯正作業ですが、案外造作も無かったというか、ステレオの距離感にはあっさり慣れました。なんだかんだと、HD800の音場の広さには助けられていると思います。流石に、FPSやTPSにおける定位の把握には難儀しますが(方向感覚などあってないようなものですが)、そこは気合いで何とかするしかあるめぇ。

一方、朗報が一つ。NR1601〜NA8005と来て、これでMac mini(Late 2012)に関しては光デジタル、HDMI、USBと全ての音声出力系統を試したことになるのですが、NA8005についてはUSB DAC経由で最高352.8kHz / 32bitまでのフォーマットで出力デバイスを設定することが可能でした(アップサンプリングにしても、実際はそこまで使いませんけどね。ただ、従来の光デジタルに比べると、USBはやや音色が粗く感じます)。てっきり、この個体は一律96kHzでリミッターが掛かっているものとばかり思っていたので、ラッキーでした。

で、NA8005ですが───素人考えながら、多機能性に重きを置くAVアンプの、それもエントリーモデルともなると、個々の音質の洗練にリソースを振り分けるだけのマージンはそれほど確保されていないと思うので、その分、基本がHi-Fi志向のオーディオユニットであれば、ステレオに特化した分の品位の向上は得られるのではないか、また、初〜中級グレードと言われるヘッドホンアンプも、それ自体が未知の領域なので、ワンランク上の音質体験を密かに期待していました。

まず感じるのは、ディテールが増し増しで情報量が多いこと。分析的傾向の強い鮮度重視の粒立ち感で、音の距離も近く、立ち上がりが速い=スピード感がある。しかし、残響はタイトで重心が高く、全体的に軽薄(上滑り感があり)で、量感や奥行き、立体感が今ひとつ。押し出しの弱さから、低音も不足気味に感じられます。従来の物量系アンプであれば電源容量やパワーはありますから、馬力に任せた「厚みのある音」という点で、ちょっとしたイヤースピーカーらしい“響き”や音場を活かせる鳴らし方が、思いの外、HD800とは相性が良かったということですね。

結局、印象に残るのは、NR1601、NR1605のステレオサウンドは意外にムードがあったんだなという実感と、NA8005の物足りなさ。正直、このような結果になるとは思わなかったので少々面食らってはいるのですが(巷のレビューではヘッドホンアンプも割と高評価なので尚更)、筐体のデザインは高級感があって好きですし、ディスプレイの視認性やレスポンス、操作体系も良好なので、音質については耳エージングの進行に伴って多少なりとも改善されることを祈っています。

追記

数日間継続使用してみて、NA8005下の環境にも大分慣れて来ましたが、良くも悪くも、本機のヘッドホンアンプはこれまでのヘッドホン出力とは根本的にモノが違うと感じます。

AVアンプの場合は、それこそ耳の側にスピーカーがあり、空気を隔てた膜一枚を挟んでドライバが鳴動している感覚だったのが、NA8005の場合は、耳元にはスピーカーもなく、振動膜もなく、そういう概念すら空気に溶けてなくなって、脳内に直接サウンドが鳴り響いてくる感覚というか。近い音はどこまでも手近く、遠い音はどこまでも迂遠に、HD800が本来持つ壁のない解放的なサウンドグラデーションが新鮮で、これはこれで音楽などは楽しく聴けます(HD800を“鳴らしきれている”とは感じませんが、当初はタイトに感じられた残響もより自然な伸び代を示し、Integer modeのお陰なのか、将又、聴覚エージングが進んだ結果なのかは分かりませんが、Audirvana Plusがまた一段と神々しく輝いております)。

それだけに、通常運用時の相性問題として、個々の音の分離がもう少しハッキリしていれば、ネガティブな印象は大分減っただろうなぁと。やはりHD800は高解像度と音場こそが持ち味、ベタ踏み的な情報密度よりも、三次元的な空間表現を味わいたいので。

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