2015年07月01日 (水)

Now Playing|access / binary engine

キーボーディスト浅倉大介とボーカリスト貴水博之による音楽ユニットaccess。2002年に活動再開後は継続して精力的な展開を行っているようです。

最近は売名番組・有吉反省会に出演しているところを目撃した貴水博之氏。元々二枚目に徹しきれないお茶目なところがあるキャラクターだとは思うのですが、特有のナルシストっぷりが芸能の域にまで達していて、じっとしていればイケメンなのにおもしろいおじさんだなぁなどと残念がりながら(笑)眺めていたのですが、振り返ってみるとaccessも世間的には微妙に売れているような売れていないような。ただまあ、活動停止期間も含めればもう20年選手ですし、その間のユニットとしての安定感を見れば上手く行っていないはずがない、とは思いますが。

さて、本作は"15th Anniversary Year"と銘打たれた2007年リリースのフルアルバム。TVアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」Stage 24 & 25のテーマ曲として「瞳ノ翼」がリカットされたことでも知られています。セールス的にはさほど目立ったところがなかった作品ですが、何よりこの頃は"access"という名前自体久しく耳目にしていませんでしたし、個人的には良くも悪くも90年代に埋没したアーティストというイメージがあったので、それを覆すだけの高い音楽性とエネルギーに満ち溢れたこの一枚には鮮烈な印象を受けました。

高揚感を煽るハイテンポなSYNC-BEATがハイライトとなる「瞳ノ翼」ですが、実はそれ一本槍でないところが本作の真骨頂。全体を通して聴くと「瞳ノ翼」はあらかじめシングルカットすることを念頭に置いた、かなり堅実で保守的な浅倉節にフォーカスしたサウンドであることが伺えますが、即ち、要所で挿入されるSFチックなシーケンス音、煌びやかで疾走感のあるサウンド、どこまでも高く飛翔し、どこまでも深く透き通っていくような広がりのあるポップセンス───といったファンタジーは本作においてはエッセンスの一つに過ぎません。

流行り廃りの大きいエレクトロニックにおいて、衰えを知らない伸びやかなハイトーンボーカルによる多重録音とギターキーボードのリフが冴えるデジタルビートは、流麗なメロディを穿つことなく素直な浸透圧でグラインドしてみせる計算高さを持っていながら、濃密に研ぎ澄まされたミクスチャーサウンドには不思議と古びたところがありません。

熟練した彼らを"自由自在"と評した人もいますが、基本を押さえた上での一歩を踏み出す勇気を恐れない冒険心は、アーティストとしての現役健在ぶりをアピールする一方で、どちらかと言うと次世代を見据えた繊細なサウンドプロダクションというよりは、accessというユニットの持つ音楽性の核心を今一度見詰め直し掘り下げたような図太いロックドリブンに感じられるのが本作です。それだけにアルバムとしての完成度が高く、極上のポップミュージックを供給してくれる名盤であります。

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