2017年03月13日 (月)

Sennheiser HD700

承前、年の瀬の物欲日記でも吐露していたこの煩悩、

しかし、この"無難"というヤツが厄介で、殊更に何かを短所だと見立てて不満に思うことはないのだけれど、長年使用していると次第に物足りなくなってくるんですね、人間というのは。つまり、開放型の持ち味は残しつつも、よりバランスがイビツで、癖が強く、味付けの濃い製品も嗜みたくなってくる訳です。

よくよく考えてみると、これは(一部でHD800ユーザーには不要という評価もある)beyerdynamic T1 2nd Generationよりも、むしろHD700じゃね?という閃きに至り、衝動買いとなったのが吉日。人気がイマイチなのは重々承知していますが、そのお陰で特価で購入できるという部分もあるので、臨時の出費にも心理的障壁は幾分低めでした。

Amazon.co.jp:Sennheiser HD700

繰り返しになりますが、引き篭もりの黄昏人間にとって、SennheiserというのはTHE無難を地で行くメーカーですからね。より広範なリサーチをし、情報を掘り下げていけば、単純なドンシャリホンにしてももっと自分の趣味趣向に合う製品はあると思うのですが、色々と考えることが面倒臭い思考停止マンにとっては、ある意味、近場で見過ごしがちな穴場であったと言えます。

不肖、経験値という点でそれほど豊富な含蓄がある訳ではありませんが、それでも日頃からヘッドホンを常用しているヘビーユーザーという意味では重度のヘッドホン愛好家ですから、2万円前後のエントリークラスとなると性能的には物足りない。かと言って、経済的に10万越えのハイエンドクラスをホイホイと買えるような生活水準ではないので、そうなるとやはり5万前後のミドルクラスが自分にとっては最も手に取りやすいターゲットということになります。

一般的にハイエンドにもなると、その製品のポテンシャルを引き出すのに上流やアンプにも充分な投資をする必要がありますからね。HD-DAC1で果たして満足な駆動力が得られるかというと、HD800よりはHD700の方が分相応に近いでしょうし。

さて、HD700はHD800譲りのDの字型のイヤーカップに、このクラスでは驚きの300gを切る軽さで、装着感は極めて良好(HD800に比べるとカップの径が一回り以上小さいので、自分のように耳たぶが大きい人間だと、耳がすっぽり収まらず縁々に干渉してしまうのは残念ですが。側圧は弱いので痛くはありません)。シックなデザインと適度に小慣れたお手頃な質感、取り回しの容易さ、そしてサウンドを含めて、これは想像していた以上にHD598の系譜と言えるかもしれません。

反面、Sennheiserらしさを何処に見出すかという部分については意見が分かれるところで、「豊かな中〜低音域と柔和なサウンド」という点でのSennheiserらしさはややトーンダウンしていますが、ギターサウンドやエレクトロサウンド、ライブサウンドを楽しく聴けるタイトで抜けのいい低音はグッド。ボーカルの距離感を含めた定位や音場に関しても意外と不自然さはなく、他方、充分な分解能があるのにただやかましいだけの脳筋ではない、不思議と聴き疲れはしないという辺りのマジックに、トータルでSennheiserの世界観を感じることは出来るのではないでしょうか。

末端の出音と中継機器の味付けとではまた異なる部分もあるのですが、やはり私は基本的にドンシャリ(というチューニングの方向性)が好きな人間なので、このHD650ともHD800とも重ならない押し出しとメリハリのある音色は好きです。

将来的にHD800に回帰することは勿論あり得ますが、最近の私は若干「HD800疲れ」が見えていて、環境的にHD800を充分に鳴らしてやることが出来ない欲求不満と、一方では解像度ばかりが伝わってくるモニタ寄りの音響にジレンマを感じ、持て余していたというか。かつてはその睡眠導入作用を絶賛したこともありましたが、これだけ付き合いが長くなってくると見えてくる粗もあり、即ち、上流も音源も誤魔化してはくれませんから、「自宅でゆったり快適なホームリスニング」にはやはり不利。裏を返せばこれ以上のリファレンスはない訳ですが、それをオーディオ的に「つまらない」と感じてしまうということは、それはもう手に余るということですよね。

足るを知ることこそがオーディオ的愉悦の第一歩だとすれば、当面はHD700に満足することが至上なのではないでしょうか。モノを買い替えた直後は毎回そう思っている気がしますが、しかし、HD700に限れば、これで耳さえすっぽりと収まってくれていたらそれこそパーフェクトだったかも。現環境最強説。ということで、かれこれ......ここ5年だか10年ばかりの間に、HD598、HD650、HD700、HD800と、開放型の主要なラインナップを全て経験することになってしまった訳ですが、どうやら個人的には直近のHD800よりもHD700のキャラクターの方が好みだったようです。

追記1(2017.04.01)

駆動時間(慣らし運転)も大台を超えて色々と考えているのですが、"鳴らしきれている"かどうかは分かりませんが(そもそもどういった場面を"鳴らしきれている"と呼ぶのかもよく分かりませんが)、インピーダンスの関係でマージンは感じますよね、抵抗は従来のおよそ半分ですから。HD-DAC1との相性もすこぶる良く、AMP Gainは音場が最大のHigh安定。

それと、やはりHD800は環境を選び過ぎる。ボーカルに限らず、あれだけ音が迂遠だと散漫......とまでは言いませんが、物足りなく感じ始めるのも時間の問題だった気がします。耳の側には振動板すらなく、ベールの掛かっていない荒涼とした音が何処までも広がっていく───といった性質が好きな人には堪らない神器でありましょうが、やはり個人的にはドンシャリという傾向に加えて、しっかり耳の側で圧を(空気の震えが、さざ波が伝わってくる......というか、安価な据え置きスピーカーに耳をうんと近付けて聴いてる感じと言いますか)、音を叩いている手応えをダイレクトに感じられる方が好みだと分かりました。

追記2(2017.04.05)

私にとってヘッドホンは毎日使う物ですから、日用品としての些細なストレスの積み重ねが重く、即ち、やはりイヤーパッドが干渉してしまうのは辛い。

ただ、音質面ではいよいよパーフェクト指向に拍車が掛かっており、分解能はHD800と比べても違和感のないレベルで頑張っており、上下が張り出すドンシャリ傾向のサウンドにも関わらずここまで全体像とディテールが潰れない高級ヘッドホンは初めてなので新鮮な驚きの連続。立体感に優れ、その中で最も近距離で味わうことが出来る女性ボーカルの美しさは圧巻です。中島愛のマーブルをここまで綺麗に聴けたヘッドホンはこれまでにありませんでした。

とはいえ、(実際上の)装着感に難ありといった我慢が何処まで続くかは分からないので、日常の耳はHD700で当面の軸足を置きつつ、リファレンスが必要になった場合はHD800で、といった使い分けを念頭に置きながら二刀流をストックしておく方向で落ち着きそうです。HD650は確かに名機ですが基本設計が古過ぎるので自分には合わず、その点、良くも悪くもリファレンスとして唯一無二のHD800は、日常の耳としては物足りなく感じることもあるでしょうが、重量以外にストレス要因はなく、モニタリングホンとしては完成されていますからね。

自転車操業の理なので売っては買っての繰り返しですが、沼というのはどうしてこうも業が深いのか、なかなか「これ!」といった逸品には巡り会えないものです。本当にイヤーパッドさえもう一回り大振りなら......。

追記3(2017.04.27)

やはり現環境はパーフェクトに近く、自分にとってはHD700がこれまでで最も至高に近い存在。

HD800比で言うと、解像度も分解能も大筋では申し分なく、立体感では凌駕しており、ボーカルホンとしての贅沢な側面も持ちながら、高いところまで綺麗に出る高音と、しっかり主張するタイトな低音のバランスが良好。それでいて、音源の粗もそれなりに誤魔化してくれるので、圧縮音源でもストレスなく視聴することが出来ます。それは即ち、ヘッドホン自体に味付けや脚色があるということですが、前述の通り、モニタリングホンとしてあまりにも完璧なHD800に疲れが見えていた自分としては、HD700は十分以上に刺激的で、楽しいリスニングホンということになります。

例えば、「空気感」という曖昧な表現しか出来ないのがもどかしいですが、解像度も分解能も必要十分なものを備えていますから、Audirvana Plus上でCD-DA以上のWAVとそれ未満に圧縮されたAACを比較すると、やはり厳密に空気感や密度の違いは感じられます。ただ、ボーカル、高音、低音と3支点がそれなりに主張してくれますし、それぞれに色があるお陰で圧縮音源に特有のデジタルノイズが刺さって煩いということもないので、従来では厳しかった廉価な配信音源でも主食として食べていけるレベルです(限度はありますが)。なんだ、完璧じゃないか。これがクラシックやジャズのようなHD800の独壇場とでも言えるような分野になるとどうかは分かりませんが、いわゆるポピュラー音楽に対しては全般にこなせる万能ホンですね。

一方、これから夏場に突入していくとまた状況は異なるかもしれませんが、問題の装着感も当たりが柔らかいので意外と慣れます。まあ、そこは多少大袈裟に「干渉」と表現していますが、恐らくは耳の縁が触れている程度ですし、音が良いので他の瑣末なことには気を取られない、装着感に気を取られない(目の前の作業に集中できる)、という部分も大きいかもしれませんね。長期間HD800を使用していた後なので、軽量さがアドバンテージになっている部分もあるでしょう。

追記4(2017.05.05)

この間、耳エージングも含めてHD700だけで攻めているのですが、印象として多少もったりしているのは事実なので、あのクリアで清涼感のある音が恋しくなる瞬間もたまにあります。翻って、それだけHD800には魔力があったということですね。失ってみて初めて分かる大切さ、じゃないですけど、まあ使ってる期間も長かったですし、まだ始まったばかりのHD700との旅は、パーフェクトとはなんぞやという禅問答を繰り出すたびに、そんなことをも実感させてくれます。

ということで、表題からは若干脱線しますが、主食として食べていけるレベルの配信音源もぼちぼち物色するようになったのですが(限度があるというのは、俗に言う「マスタリングに左右される」というヤツですね)、直近のJ-POPを見てみても、未だにシングルしか置いていないようなアーティスト風情がいる。置いてあるならそれはまだいい方で、iTunesで全てを横断検索できる訳ではないので、当然、特定のサイトにしか卸していない作品は、ユーザーが二度手間三度手間を掛けて、いちいちe-onkyoだのOTOTOYだのmoraだの主要なポータルを調べないといけない。で、結果、どこにも姿形が見当たらない歌手さえいる訳ですよ。

ここ数年来、我が家にはCD円盤を読み込む為のドライブがないので、一部のハイレゾ配信を除けば、この間の新譜チェックはほぼほぼブランク状態となっている訳ですが、人がCD-DA以上の媒体(器)に拘泥している間に、実は「世の中は随分進んでいたんだぞ」というような、そういう未来、そういう展開を期待したいじゃないですか。それが、未だにインターネッツガン無視さえまかり通るような道理が蔓延っているとは想像しませんでした。このブログでも、日本の音楽業界を批判する体の記事は大昔に何度か取り上げたことがあると記憶していますが、この期に及んでもまだ、その頃と見える景色が全く変わっていなくて、なんだか酷くガッカリです。

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