2018年10月14日 (日)

ゾンビランドサガ

記録的な酷暑に恵みの大地も干上がってしまったようで、素直に豊潤の秋......とは問屋が卸さない今日この頃、相変わらず本数だけは多い有象無象の新作群を押しのけて、ご当地アイドルアニメとしてはシュールで尖り過ぎている問題作・ゾンビランドサガが堂々の今期一強枠。ここでも無駄に攻める佐賀県、恐るべし。

事前の予想を裏切り、即落ち2コマの出落ち感があった第1話を半ば勢いと宮野真守で乗り切って、さあこの先どうなる───展開が繋がっていかないと少々厳しいが......と身構えていたところを、更にageてくるという離れ業を成し遂げて見せるゾンビー。出落ちのハードルをあっさり超えて来るのはスゴイ。

次回予告では謎の3DCG化まで果たしており、設定も脚本も構成も巧みで、ここまでは完全に想定以上。このまま裏をかいて王道を突き進むのか、むしろ「こっちが王道じゃろがい?」とばかりにニヒルなアイロニーで毒を吐き散らかして見せるのか、この先どう転ぶのかは読めませんが、まあ冒頭2話を見る限りでは、作品の性格上、監督の掌の上でコロコロと転がされている限りは悪い気はしなさそう。

と言うのも、アイドル衆にしても無駄にキャラが立っている辺り、色物と見せ掛けて実はデザインはしっかり可愛いのが食えないし、あのグリーンでエコな出で立ちでさえしっかりキュートなので、これはゾンゾンせざるを得ない。

また、宮野真守(CV:宮野真守)といった感のある正体不明のアイドルプロデューサーもすこぶる敏腕であり、ゾンビィを使役し、ハリウッド仕込みのパテを盛り盛りんぐする謎の技術と経歴の持ち主でありながら、第2話ではアドリブでボイスパーカッションまでかまして見せるなど極めて有能。

ゾンビランドサガ、全般に尋常でなさとただ者ではない感が溢れているので、この先どんな展開が待ち受けているにせよ、その物語の帰結を見届けたい。

追記1(2018.10.22)

現在、配信リピート中につき、伝説の山田たえの中の人が判明した第3話をヘビロテしている辺り。

硬軟のバランスが良く、王道のアイドル結成回でも、セリフを強奪されるさくらはんの不条理に草が生えるなど勢いは失われていませんが、どう結末するにせよ座して見守る心積もりではいるものの、エンディングテーマ「光へ」が示唆するように最終話で彼女らが卒業=成仏してしまうとすると号泣は必至なので、出来ればシリアス展開であるとか倫理面での辻褄合わせであるとか、そういった難しいことは考えず、シュールなギャグ路線のまま突き抜けて欲しいと思う今日この頃であります。

追記2(2018.11.09)

現在、愛と純子の死因が明らかになった第6話のOAを終えた辺り。緩急織り交ぜながら、今週は特に重い展開ですが、ギャグ一辺倒にならずゾンビィの背景、アイドルの価値観、生への動機をしっかり掘り下げ、フランシュシュの現実を突き付けてくる構成はとても好感が持てます。何より、どシリアスでもしっかり面白い。

それこそ有象無象の下手なアイドルアニメよりよっぽどアイドルアニメしているし、ゾンビィ以外はかなり正統派。ゾンビィ成分故に飛び道具が多くなりがちですが、全体的にはとても丁寧に作られていて、話数が進むごとにますます良い。ゾンビィもの故に生をぞんざいには扱わない、これは伝説だ。

追記3(2018.11.23)

まさお親子の物語に涙が止まらない。ネットの感想を読み込んでは号泣して、本編を見返しては号泣して、恐らく今年一の落涙量。よりもいどころの話ではなかった。

第7話、第8話と特殊EDが続き、折り返し地点でのピークを迎えている感のあるゾンビランドサガ。しかし、これで終わりとは思えないのがゾンビィの底知れないところ。これはもはや正統派どころの話ではなく、後悔も、絆も、業も、幻想も、救済も、そして命さえをも、全てを包摂する勢い。「私たち、生きたい。」───正直、ここまで深いとは予想していなかったゾンビランドサガ、この先、どんなファンタジーが待ち受けていようとも、自分はこのゾンビィたちに寄り添っていようと決心した一夜。

追記4(2018.12.21)

おーっはようございまあああああーっすう!

追記5(2019.1.7)

某所での一挙生配信をタイムシフトで視聴して、ようやく年を越した感のあるフランシュシュ一同。

綿密な計算に基づく緻密な構成と丹念な脚本、大胆な演出で、アニメーションの新たな可能性の一端を指し示した、かもしれないゾンビランドサガ。アニメは自由だ───平成も終わりに、そのことを改めて思い起こさせてくれた大切な作品です。ある種の誠実さと実力を兼ね備えた制作者が、時間もお金も積み上げて作ったアニメ、という意味では意外なほど正攻法であり、ドラスティックに見えて実は泥臭く地道でストレートだよ、という点ではどこか宝石の国などと通じる部分もあるかもしれませんね。

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