2012年09月01日 (土)

Sennheiser HD800

HD598(通称プリン)から始まったオーディオ・スパイラルは、尋常ならざるハイペースでHD650を通り過ぎ、遂にHD800まで辿り着いてしまいました。流石に既製品(マスプロダクト)についてはここが終点でしょう。HD650のリケーブル、つまりケーブル一本に5万掛けるのと、新たなパッケージに10万掛けるのと、どちらの方がまだ正気度が高いか悩んだ末の結論です。更なる泥沼があるとすれば、HD800を中心とした環境の整備、或いはHD800そのものを極めて行く方向だと思います。

決して経済的に恵まれている訳ではない我が家にとって、ましてや自宅療養中(世間体ではニートと同義)の身にあっては、たかがヘッドホンに10万越えというのは理解される世界ではありません。それでもこうしてHD800を手に出来ているのは、下取り、買取、各種ディスカウントキャンペーンのフル活用は勿論のこと、間もなく4~3回忌を迎える祖父、及び父親の遺した心遣いの賜物であり、また、散財する対象がMacBook ProやPS3周辺の限定的な投資に限られるなど趣味の範囲が狭いこと、更には、生活必需品を限界まで削っていることでの節制の結果であると解釈して頂ければ幸いです。粒選りのAV機器が小さな生活の大きな支え、という訳です。

Amazon.co.jp:HD800

さて、ゼンハイザーのフラッグシップとして既に評価の確立されているHD800なので、敢えてここでレビューすることはしません。備忘録程度にざっと気付いた点のみを列挙して行くと、まず、その重さを感じさせない軽さ。即ち、耳をすっぽり覆ってしまう大振りなD型イヤーカップの構造とフレキシブルな可動域が、圧倒的な装着感の良さを演出しているということです。とにかく軽量でソフトなHD598の装着感の良さとはアプローチの方向が異なり、まさに高級機らしいギミック満載のフィット感です。ただ、そうは言っても、やはり絶対的な重量はあり、側圧もそれほど強くはないので、ちょっと頭を動かすと装着位置がズレてしまうことが多く、慣れるまでは首が疲れます。

それと、忘れてならないのが相変わらずのジャーマン・スメル(爆)。アイルランド産のHD650に次ぐ、高級ゼンハイザーの臭さは健在です。

一方、8月下旬にロールアウトしたばかりのHD800ですが、エージングに関してはまだまだ途上。例えば、個人的な印象では、機械的エージングも耳エージングも全部引っ括めて、HD650の音が落ち着くまでには大体500時間overの運転が必要だったと認識しており、凡そ75〜100時間毎に「あれ?昨日までこんな音出ていたっけ?」「なんか今までにない恐ろしく甘美な響きが聴こえるな」という気付きがあって、それが500時間を超えるくらいまでは続いたということなので、HD800にもそれと同等の、もしくはそれ以上の駆動時間が求められるでしょう。

それを踏まえた上で現時点での印象を述べるとすれば、HD650が質のいいヘッドホンなら、HD800はその一段上を行く、まさにちょっとしたイヤースピーカーといった塩梅。ダイナミック型でここまで生々しい空間表現と、臨場感溢れる広大な音場を実現していることに感心しますが、「リファレンス」を超える「パーフェクト」の名が示す通り、ゼンハイザーらしい柔和で豊かな中〜低音域にプラスして、どこまでも繊細な分離解像度と精悍な音の響きで原音を忠実に再現している(原音を再現できるだけの力がある)と感じます。HD650のように音の角を丸く包み隠してくれるようなまろやかさはないので、元の音が悪ければ悪いなりにそれがそのまま伝わって来ます。

即ち、音の粗さは上流に左右されるので、再生機は元より、アンプがNR1601では流石にやや心許ないか───といったところ。HD650やHD800は、300Ωと高インピーダンスな反面、感度も高いので、このクラスの製品であればNR1601は余裕を持って駆動しますが、それでもことHD800となると、音源によっては高・低音域が若干音痩せしていると感じる場面も(それでも全体としては充分過ぎるほどの量感を感じますが)。

正直、最初は「これは失敗だったかなぁ......」と思ったんですよ。というのも、HD650に比べると音の輪郭がパリッとしていて鮮明なので、スピード感はあるものの、その分、当たりが強いというか聴き疲れすることが多く、解像度と引き換えに失う物も大きいと感じたので。でも、それも結局、エージングの進行に伴って音色に深みが増して来ると、そんな次元で物を語るのがHD800に失礼であると思い知らされるのにさして時間は掛からず、実に安直な杞憂でした。

ただ、現状、拙環境で体験し得る最高音質といえば、iTunes + Audirvana PlusによるWAV(CDDA)及び、マルチchに関しては、PS3経由のHDサラウンド5.1ch~リニアPCM 7.1chが限界。こうして見るとHD800にはまだまだ役不足であると言わざるを得ず、SACDやハイレゾのような高音質ソースでこそ、真にHD800は輝くでしょう。まあ、それでもHD650で聴き倒した音源が馴染みを通り越してまるで見違えるので、既存のライブラリを隅から隅まで改めながら、もう音楽を聴くのが楽しくて楽しくて仕方ないですけどね。

ごくシンプルに印象を総括するとすれば、実に真っ当な高級機としてのHi-Fi感と装着感の良さ、或いは(ケーブル、イヤーパッド、ダストプロテクションが交換可能であることの)メンテナンス性の良さという結論に集約されます。個人的に、10万越えのヘッドホンとなると、下手に音質を追求するあまり、例えばGrado(は特殊な例としても)のように妙な癖があったり変態的な構造のヘッドホンも多いという先入観があって。それがここまで音質と装着感を(或いはメンテナンス性を)両立している、まさにあらゆる意味でハイエンドと言えるヘッドホンというのは、何気に凄いと思うんですよ。小手先の技術ではない、総じて、ナンバーワンヘッドホンメーカーの矜持が詰まったフラッグシップには別格という言葉が相応しく、その"Perfection"に偽りなしといったところ。本当に素晴らしい製品ですよ、これは。

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