2013年02月01日 (金)

Pt|WHITE ALBUM2 幸せの向こう側

WHITE ALBUM2 幸せの向こう側は、2010〜2011年にPCゲーム界で話題をさらった傑作ADV(18禁)のPS3移植版(CERO:D)です。前後編2部作をレーディングに合わせてリファインし完全収録、更にノベルやドラマCDといったエクストラコンテンツ、新シナリオを追加した決定版となっています。

Amazon.co.jp:WHITE ALBUM2 幸せの向こう側

個人的にCSブランドであるアクアプラスは、WHITE ALBUMのような儚い恋物語から、ToHeartのような爽やかな学園ものまで取り揃える、この振り幅の広さが好きなのですが、左様の通り、元々WHITE ALBUMは浮気や三角関係をメインに据えた切ない冬のアルバムを謳ったADV。これがToHeartなら、このみ&タマ姉よろしくハーレムエンドを迎えることもできるのでしょうが、WHITE ALBUMではそうも行きません。

しかし、WHITE ALBUM2ではそれに輪を掛けて生々しく、残酷です。一人が幸せを掴む裏で、必ず悲しみを背負う人がいる。「もう見たくない……でも、見届けずにはいられない」という本作のコピーは真理です。人間の美しい面も醜悪な面も包み隠さず描くWHITE ALBUM2は、感情を揺さぶり、惹き付け、どうしようもない痛みと緊張と息苦しさの中で、心に何かを残すことでしょう。

彼の神様、あいつの救世主

メジャー志向の重厚長大な作りで、分岐セーブによるショートカットや既読スキップを多用しても優に60時間は費やせるボリュームがありますが、シナリオ、音楽、演出、CV、どれをとっても完成度が高く、選択肢へのジャンプやシーン回想モードも完備した配慮の行き届いた仕上がり。相変わらずプレイヤーの思考を邪魔しない期待通りのアシストで、さり気なさに巧みが光る演出、そして安定して良好なBGM(サントラも超オススメ!)。前作から引き続き登場する定番ナンバーの数々も好印象。反面、モーションポートレートの実装は控え目。動いているのか動いていないのか分からないくらいの微妙なアニメーションで、個人的にはWHITE ALBUM-綴られる冬の想い出-やToHeart2 DX PLUSくらいグリグリ動くのが好きなので、やや拍子抜けの感あり。

さて、これをして「WHITE ALBUM2を超える美少女ゲームはない」かどうかは浅学な私には断言できませんが、何年かに一度、世代の節目節目で稀にお目に掛かることができる化け物クラスのソフトであることは確かでしょう。

物事の二面性……というにはあまりにも過酷な運命、相思相愛故の擦れ違いによってあれよあれよと言う間に壊れて行く人間関係、よくもまあ、ここまで救いようもなく奈落のどん底に突き落とす展開を考えられるものだと呆れるくらい、笑顔と涙を対比させたからくり仕掛けの物語に、胸が張り裂けんばかりの勢いです。ちょっとしたイベントの匙加減一つでいいように感情を揺り動かされる私は本当にいいお客だと思いますが、こそばゆい音声とお手盛りの感動でさえシナリオライターの掌の上で弄ばれている感覚は、悔しさよりも感心が先に立つほどで、むしろ、そういった雑念さえ排除して没頭できる危険な麻薬。正直、あまりにも胃が軋んで読み進めるのを躊躇するような場面にも多々遭遇するのですが、そんな非日常にもそれほど不自然さはなく、多分、きっとそれは普遍的なファンタジーで、よく出来たドラマです。

不倶戴天の君へ

本作では、小木曽雪菜 / 冬馬かずさとそれ以外、といった具合に明確にメインヒロイン>サブヒロインの図式が成立していますが、そのサブヒロインにしても誇張なく全員が破壊力のある攻略対象(まあ、割とストレートに萌え萌え純情乙女している風岡麻理さんに比べると、和泉千晶は一筋縄では行かないジェットコースターですが)である中で、私はといえば一貫して、一筋として、冬馬かずさ派……だったはずなのですが、誰もが皆幸せにはなれない連鎖を、即ち、小木曽雪菜への非道なまでの仕打ちであり、現実に打ちのめされ慟哭する彼女を見届けるのは本当に辛かった。でも、よりにもよって、耐えに耐えた、最後の最後で、冬馬かずさその人との別れで最もやるせない虚脱感に襲われるとは……持ち上げて落とすとはこのこと。まあ、感情移入が過ぎたのが運の尽きだったのかもしれません。

何より、そんなWHITE ALBUM2のことが頭から離れなかった半月、日に2〜3時間読み進めるだけでもどっと疲労感に襲われること、何をするにも身が入らないというか、手に付かないというか、気を紛らわそうにも理性が追い付かなかったこの間、傷心中───というのは決して大袈裟ではなく、台詞の一つ一つが心臓に突き刺さり、フラッシュバックする光景が脳裏にこびり付いて離れない重症の日々でした。

パッケージ絵を見るだけでも胃が絞り上げられる、総毛立つ感覚は、まさにちょっとしたトラウマ。不倶戴天の君へ───こんなトロフィー名を見るだけでも、もう思い巡らせて泣けてしまう。こんなにもお互いを想い続けて、こんなにも愛し合っているのに、避けられない「さよなら」が身も心も引き剥がす絶望感……フィジカルもメンタルも、ちょっとでも弱っている時にやったらダメですよ、これは。私のように心が抉られてしまいますから。でも、それが決して作品自体をネガティブに評価するものではないということが、WHITE ALBUM2の凄みであると解釈して頂ければ幸いです。

こんなにも辛い、こんなにも苦しい、こんなにも胸を締め付けられるのに、それでも二次元と三次元、どちらか選べと言われたら、自分はもう二次元でいいかなぁ───本気でそう思えた作品という意味では、何かの扉を開いてしまいそうな、何かのきっかけになってしまいそうなゲームでもありました。

After All

ちなみに、個人的に推奨する攻略順は以下の通り。参考にしたサイトはこちら(ネタバレ注意!サイトの記載順にやると幾つか前後するEDがあります)。


ic1周目 →【デジタルノベル】→【ボイスドラマ】

ccノーマル → 杉浦小春 → 風岡麻理 → 和泉千晶ノーマル

ic2周目 →【ボイスドラマ】→ 和泉千晶 → 小木曽雪菜 →【ボイスドラマ】

最後まで

【エクストラエピソード】


その都度アンロックされるデジタルノベルやボイスドラマは随時消化。この順序だと物語の全体像を把握しながら満遍なくシナリオを堪能できるので、オススメです。

最後に……とにかくこの半月は、辛く、苦しい戦いでした。健康状態も、ちょっと悪化したかもしれない(笑)。でも、この“恋愛経験”をもっともっと、より多くの人に味わって貰いたい、これをスルーするなんて勿体無い……それほど絶賛に値する名作であったと、強く、そして繰り返し述懐させて頂いたところで、【届かない恋】の終末を見届けた黄昏者からの〆の挨拶と代えさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

トロフィーカードステータス

レベル:17(1%)

プラチナ:36
ゴールド:153
シルバー:460
ブロンズ:1472

トロフィー数:2121

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