2007年07月04日 (水)

ドラマ「のぞき屋」最終回

For-side提供の深夜ドラマ「のぞき屋」が最終話を迎えました。

大仰な看板を掲げつつも、「屈折した社会を創っているのは、個人のゆがんだ欲望である」というテーマが全く伝わってこなかったC級エログロサスペンス。フィルム撮影の様な陰影のある画質に、ちょっぴり格好付けたカメラワークという、Vシネマ的な映像作りの面白さに惹かれてチェックしていた作品ですが、“個人のゆがんだ欲望”をそこまで掘り下げてはいないので、お話としては在り来たりの水準に留まっており、エピソードの連綿に深みや奥行きは感じられませんでした。ただ、ポーズを気取ってみただけのそのカジュアルさが如何にも軽薄で、For-side枠らしい独特の浮ついた雰囲気を醸し出しており、これが結構癖にならないとも限りません。一見、レベルが高く見えなくもない映像の一方で、内容は極めてぬるいという、気怠い月曜深夜の息抜きにはピッタリのドラマだったのではないでしょうか。

第13話「再生の周波数」

のぞき屋解散宣言をした見の元にレイカが誘拐されたと情報が入る。レイカを捜索する見は、以前レイカと訪れたホテルで不可解な情報を得、過去に強いトラウマを抱く原因となった倉庫へ辿り着くが、なんとその倉庫には見の写真が大量に貼られており、すべては仕組まれていたことを知る。発端は過去のあの事件。見は呪われた自分の生い立ちを嫌悪するが、スマイルと聴の助けを得て、人として、『のぞき屋』として、復活する。

のぞき屋:テレビ東京

のぞき屋解散宣言をした見の元に、見を覗けとの依頼が入る。ネットには監禁されたレイカの映像。レイカを捜索する見は、目を背けていた過去の自分を覗く。事件を仕組んだのは誰なのか?そして、見の失われた過去と失われた片目の秘密とは───思わせぶりだったリンの姿は、見の核心へ迫る伏線として存在しており、見の記憶を手繰って辿り着いた山荘でちょっとした展開を見せた後、最後はなんとも力が抜ける大団円へ。

どこもかしこも変態ばかりが揃っていた割には、最後まで実に中身のないドラマでしたが、それがいい。盗聴絡みの題材だけあって、突き詰めればどこまでも黒くなりそうなネタでしたが、伊崎右典のひょうひょうとした演技も手伝って、仕上がりは明るく乾いており、見ていて胃もたれしませんでした。また、テンポも良く、連続ドラマとしてストレスの掛からない作りには好感が持てます。ただ、「屈折した社会を創っているのは、個人のゆがんだ欲望である」という主題を掲げているにしては、作品の根底に流れる思想は物足りなかったと言わざるを得ないでしょう。4篇+αからなる全13話のエピソードの中に、“屈折した社会”や“ゆがんだ欲望”というほどの大それたモチーフは描かれておらず、「のぞき屋は孤独である」という見の言葉にもまるで重みがありません。とってつけた感がありありと感じられるテーマのハリボテ具合からは、凡そ社会の歪みを発見することは叶わず、かと思えば露骨な性描写にはとことん情熱が注がれるなど、内容的には著しくバランスを欠いていた印象があります。この「のぞき屋」で語られた哲学は、「月並みの社会を創っているありふれた欲望」以上でも以下でもなく、一線を超えていない普遍に留まった作品だと評価するのが妥当です。

ちなみに、伊崎右典の演技には賛否両論あったようですが、ダークな雰囲気を醸成する彼のルックスは「のぞき屋」の世界観の中ではかなり様になっており、良く言えば自然体、悪く言えば捕らえ所のない微妙な芝居も、渡辺哲や黒田耕平といった脇を固めた役者の助力によって、随分と魅力的に映っていました。個人的には彼の存在感を存分に評価したいところですが、ただまあ、このギャグともシリアスとも付かない微妙な体温のドラマだからこその立ち振る舞いであって、普通のドラマでこれをやったら多分ダメなんだろうなぁ、とも。その一方で、ヒロインの秋山莉奈は覗いたり覗かれたりと必死そのもの!「仮面ライダー電王」のナオミも、或いはオシリーナとしての所作もそれぞれ魅惑的ですが、この手の一寸抜けた小悪魔キャラこそ似合う素材なのだと再認識したところで、まだまだ伸びしろがありそうな手応えを感じました。

なんだかんだと個人的には肩の力を抜いて楽しめた作品ですが、しかしながら、流石に1万円超もするDVD-BOXは一体誰が買うんだYO!という感じ。

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