2013年07月01日 (月)

Now Playing|Swordfish The Album

同名映画のオリジナル・サウンドトラックではありますが、事実上、Paul Oakenfoldのソロ・プロジェクト。UKクラブ・シーンの鬼才によるスリリングな電子音のうねりは、映画におけるダークで華やかなサイバー・アンダーグラウンドの雰囲気にぴったり。ジョン・トラボルタの語りもセクシーなこの一枚は、とびきりクールで、格好良くて、プログレッシブなハウス・サウンドを聴かせてくれるミッドナイト・ドライブ・アルバム。

Image:Swordfish The Album

このアルバムは、The Crystal MethodのVegasと並び、私のテクノ志向を決定付けた作品です。Underworld、The Chemical Brothers、The Prodigyが世界三大テクノバンド→転じて"踊れるロック"、或いはOrbitalも含めてテクノ四天王などと持て囃されていた時代、Spawn: The Album、The Jackal、Tomb Raiderといったコンピレーション・アルバムがサントラ市場にトレンドを形成していた隆盛期、テレビっ子が広げられるアンテナの大きさというものも限られている中で、取っ掛かりとしてそういう話題作を掻い摘んではみるものの、どうにも自分の中で思い描くテクノ、デジロック、広義にエレクトロニカ像といったものとの齟齬に消化不良を起こしていたというか、「自分の欲求している音が見付からない」と彷徨していた時期があって(先の四天王は四天王で好きですけどね)、Swordfish The Albumはそんな自分をロックの文脈から解放してくれた一枚です。

例えば、初期のWilliam Orbitのような開放感のある爽やかなトランスに比べるとより嗜好性が強く、依存度の高いデジタル・サウンドなので、極論、ダンスフロアのニュアンスすら包含できる(という体の)HD800を手に入れて以降はその中毒性がより一層加速した感がありますが、とにかくドッとハマる時期には毎晩のように何十、何百回とリピートし、それも間もなく飽きが来て、やがてはそっぽを向く。見向きもしなくなったかと思えば、また何かのきっかけでテクノ魂が再燃すると飽くまで熱中し───と、その繰り返し。

Swordfish The Albumの場合は、その周期が映画本編のTVでの再放送タイミングと重なっていることが多く、「あー、ソードフィッシュまたやってるのかぁ」と何気にチャンネルを合わせてBGVとして垂れ流していると、要所で高揚感を煽るデジタル・ビートがきらびやかに放り込まれ、やっぱりPaul Oakenfold△↑↑となり、その流れでiTunesライブラリの音源を駆り出すと、もう体内を巡る熱量とそのスピード、全身を切り刻むリズムの恍惚とした疼きが止まらない。

流行り廃りの大きいテクノ、トランスシーンの中にあって未だに陳腐化していないというのが本作の骨頂であり、純度の高さ故の普遍性という点では寿命の長い名盤です。

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