2014年01月18日 (土)

Now Playing|BBS / EMBRACE

BOOM BOOM SATELLITESと言えば、詳しい前後関係はよく覚えていないのだけれど、その昔、彼らがデビューして間もない頃に、NHKだかフジテレビだかで深夜にライブドキュメンタリーを放送していて、ヨーロッパで人気を博している日本のバンドがいるぞ、新しい音だぞ、今度はアメリカだ、逆輸入だ、凱旋だ、とやたらに煽り立てられていたのを見掛けたのが馴れ初め。不憫半分、訝しさ半分で眺めていたのですが、演奏を見ると確かに格好良くて......そんな出会いだった記憶があります。

そこから1stアルバム「OUT LOUD」を手に取ってみるも、ライブではあんなに格好良かったのに、CDになると途端に「あれ?」という印象で、当時の私には理解が及ばなかったのか、将又、CDスケール故の矮小さなのかピンと来ないもどかしさに首を傾げていると、そうこうしている内にPS2「リッジレーサーV」とのタイアップが発表され、同エンディングテーマに一目(聴き)惚れしては「On The Painted Ddesert - Rampant Colors」のシングルを聴き込んで。

その後も、折りを見てはテレビやネットの世界で音源を耳にし、上々の評判も見聞していたのですが、同時に彼らの国内での認知度が高まるにつれて、旧来のファン層の間からは「普通のデジロックになってしまった」という反応も伺え、世間の「ブンブンの新しさへの興味が薄れて行く」という潮目を感じ取ると、「格好良い、だが普通だ」と私の中でも途端に熱が冷めてしまって(ミーハーだ)、久しくブンブンからは遠ざかっていました。

Image:BOOM BOOM SATELLITES / EMBRACE

そして、そこから実に6作をすっ飛ばして「EMBRACE」となる訳ですが、ご多分に漏れず、私にとっても今作が訴求するきっかけとなったのは「機動戦士ガンダムUC episode 5」の主題歌。PSストアで配信されていた「BROKEN MIRROR」をフィーチャーしたAMVが飛び切りクールだったのだ。しかし、その文脈からアルバムの全体像を想像すると裏切られることになります。このアルバムは、「BROKEN MIRROR」で示唆される世界観をも軽々と飛び越え、凌駕して行く。普通のデジロックでもいいじゃないか、格好良いんだから───でも、その格好良さも極まると普通じゃなくなるのだ。

久々に聴くブンブンは自然と耳に馴染み、素直に心地が良い。かつての斜めに構えたニヒルな難解さ、回りくどさは消え失せており、人間、丸くなるものだなぁと(笑)。その分、デジロックというよりはテクノ寄りのサウンドで、美しく、恍惚とした、トランス的な高揚感をもたらします。高度のある音の広がりとドライブは思いの外ストレートで、一瞬、これがブンブンか?と。

ただまあ、筆舌に尽くし難いとはこのことでありますが、この作品は純度の高い音楽そのものであり、個々の楽曲がどれもシングルカットできるほどの完成度の高さを誇っているにも拘らず、それがそのままアルバムの背骨として成立する尋常でなさ、スタンドアローンなコンピレーションではなく、個を含む全体としての奔流が存在するサウンドトラック的な趣きを纏っているにも拘らず、駄曲なしというその凄まじさが、このパッケージに「殊更に取り立てるようなムードはないし普通なんだけど特別」という不思議な感覚を与えています。恐らく、テレビで最初にライブ映像を目にしたあの日、あの時、頭の中で思い描いていたビジョンをも、遥か後方に置き去りにしてしまった8thアルバム「EMBRACE」。今、再びのワールドスケールを目の当たりにするブンブンに震える傑作です。

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