2015年05月01日 (金)

Now Playing|The Crystal Method / Vegas

きっかけは、在りし日の亜洲影帝、今やすっかり堕ちぶれた業界人であるチョウ・ユンファのハリウッド進出第一弾である映画「The Replacement Killers」のオープニング。現在でこそ音響も音質もいささか地味に感じられるKeep Hope Aliveですが、当時は、ダンスホールでの銃撃戦を眼前に劇場内でけたたましく鳴り響くキレッキレの電子音に大層痺れたものです。

国内盤リリース時には「The Chemical Brothersに対するアメリカからの回答」的な大した宣伝文句が謳われていた記憶がありますが、別段ロックを意識したりビッグビートに張り合うようなところはなく、当時のクラブシーンに寄り添った素直な仕上がりのプロダクションに思われます。ハイライトとなるHigh Roller以外にも、サウンドトラックに引っ張りだこだったTrip Like I Do(Filterをフィーチャーしたremixバージョンとは別)や、TV番組で耳にするようなリフなど、何処かしらで聴いたことのある楽曲が散発的に収録されているので、さながらベスト盤の如き趣きであり、そういう意味では、通年の彼らの名刺代わりになる一枚であったことは確か。

昨今、欧州から遅れること十数年、ようやく北米でもダンスミュージックがムーブメントになっていると見聞しますが、正直、チャートの上位に食い込んでくるような曲は大抵が陳腐な量産型ピープ音でダサイし、いわゆる狭義のEDMビジネスが主体となって生み出される流行は、従来のハウスミュージックやテクノサウンドを生業とするDJカルチャーの音楽的背景、文脈とは異なるものなので、こうしてたまにVegasを引っ張り出してはモヤモヤすることも吝かではないのであります。

要するにパラダイムシフト......ですか、結局、市場の新陳代謝が進んでいるということなんでしょうし、それこそ振り返れば90年代にUKが牽引したダンスミュージックシーンにおいても懐古主義的な批判の声はあった訳で、そこで過去幾度となく繰り返されてきた老害的な立ち位置を今まさに自分が演じているというのは、老いること、延いては生きることの健全さを実感するという点で、妙に感慨深い今日この頃です。随分と話が飛躍しましたね。

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