2008年10月07日 (火)

初ナイトレースを成功裏に終えたシンガポールGP

2008年F1世界選手権、第15戦シンガポールGP決勝。F1史上初のナイトレースは、市街地のド真ん中に作られた特設サーキット、マリーナベイストリートサーキットから。

初のシンガポールは波乱の展開 アロンソ&ルノーが劇的復活勝利!
シンガポールGP日曜ドライバーズコメント:アロンソ「優勝など不可能だと思っていた」

心配された降雨もなく、ドライコンディションのまま61周の決勝レースを消化したアジアラウンド初戦。優勝を飾り歴史的なメモリアルレースに名前を刻んだのは、セーフティカーの混乱を切り抜けた元王者フェルナンド・アロンソ。週末を通じて絶好調を維持しながら、前日の予選では痛恨のマシントラブルに泣き15番グリッドと沈んでいただけに、今シーズン低迷しているルノーにとっては2006年の日本GP以来となる念願の、そしてアロンソにとっては2007年のイタリアGP以来となる劇的な復活勝利となりました。

一方、今、最も勢いに乗るフェリペ・マッサは、会心のポールポジションからレースをリードするも、セーフティカー出動中のピットストップで給油リグが外れる前にピットアウト、燃料ホースを引きちぎってしまった為にピットレーン出口手前での停車を余儀なくされ、その後ドライブスルーペナルティまでもを課されるなど、フェラーリ悔恨のミスに祟られ撃沈。佐藤琢磨有するSAF1撤退以降、今季はアンチ・ハミルトンの急先鋒として、マッサ、アロンソ両選手の応援に力を入れていたので、悲喜こもごも、明暗の別れる展開となりました。以下、ペナルティストップを受けるもセーフティカーの間隙を縫ったニコ・ロズベルグが2位、大きなトラブルなく戦局を乗り切ったルイス・ハミルトンが3位となり、この結果、ドライバーズチャンピオンシップではトップのハミルトンが84ポイント、2位のマッサが77ポイントとなり、一気にハミルトン優位の情勢となりました。

歴史的な通算800戦目のメモリアルレースとなったシンガポールGPは、アジアで4番目の主催国となる初開催のシンガポール、史上初のナイトレースと、全てが初づくしの開催で、F1の歴史にまた一歩、足跡を刻むことになりました。今回の為に実にサッカースタジアムの4倍の明るさと言われる照明1800個、照明総費用8億7000万円が投じられるなど、シンガポールの威信を懸けた一大国家事業だけあって、何もかもが規格外のバブリーなグランプリ。新旧の名所を駆け巡る夜の市街地決戦は幻想的かつ非現実的で、見た目にも面白い新世代のコースとなっていました。

特設サーキットは、バンピーで滑り易く、ミスを誘発し易いという公道コースの特徴を踏襲しており、1周1分45秒という長い間、如何に高く集中力をキープ出来るかに加えて、世界的にも珍しい半時計回りの進行方向はドライバーの肉体にも過酷である為、総じてドライバーの腕が試されるコースとなっており、波乱が予想された下馬評通り、セーフティカーが投入されることで動きのあるレースとなりました。

初めて照明の下で行われることになった今回のグランプリは、夜間開催が果たしてレースにどのような影響を及ぼすのか、未知数な部分があったものの、きらびやかなネオン街の中心に浮かび上がる光の道を時速300kmで駆け抜ける魅惑のナイトレースは、マシンに反射される照明の美しさに目を奪われるなど、五感を刺激し、視覚的にも楽しかったというのが一点。実際には、火花が飛び散るまでにスキッドブロックが削り取られるバンピーな路面の方が問題視されるほど、照明による明るさの問題はクリアされていました。ただ、これがウェットコンディションではどうなるか分からないので、必ずしも懸念が払拭された訳ではありません。

また、シンガポールGPが成功裏に終わったことで、バーニー・エクレストンがアジア地域でのナイトレース拡大を持ちかけるなど、恐れていたことが現実に近付きつつあるという意味では、首脳陣の動きを危惧せざるを得ません。まあ、テレビ放送的には、低迷が叫ばれるゴールデンタイムの視聴率を考慮しても、21時スタートでF1が生中継されるというのであればそれはそれで結構な気はしますが、それでも、アジア地域の全てがナイトレースになってしまうのは嫌だなぁ......というのが率直な感想です。

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