2017年05月29日 (月)

佐藤琢磨、インディ500を制す

苦節云年、我らがリアルヒーローが遂に世界を制す。

世界3大レースの一つとされるアメリカン・トップ・オープンホイールの伝統的なレース、通称インディ500が現地時間の28日開催され、佐藤琢磨が日本人初となる優勝を果たしました。

【インタビュー】日本人で初めて世界三大レースの「インディ500」で優勝した佐藤琢磨選手に聞く - Car Watch

今年で101回目の開催となるインディ500は、F1モナコGP、ル・マン24時間耐久レースと並び称される世界3大レースの一つ。残念ながら、モータースポーツに関しては文化的後進国である日本の場合ほとんどニュースバリューがありませんが、インディ500で勝つことは、テニスの4大メジャー制覇やサッカーW杯優勝と比べても遜色のない歴史的快挙。特に、アメリカ本土では一般紙の一面に記事が掲載され、TVショーに引っ張りだことなるこの一週間、レースに興味のない人間にもその名が知れ渡ることになるスター街道というのは誇張ではありません。

これから生涯、琢磨は「インディ500ウィナー」と紹介されることになる───その凄さがここ極東の地ではまず理解されないのが悔しいですが、そうは言っても、いちファンである私でさえ今はその実感が湧かないので、それを一般人に理解しろと強弁するのも無理な話なのかもしれません。

今年のインディ500は幾つかの点で注目されていましたが、一つには現役最強ドライバーの一角であるフェルナンド・アロンソが(主にホンダのせいで)低迷しているF1シリーズを蹴ってスポット参戦を果たしたこと。彼は琢磨とも非常に良好な関係を築いていたようですが、もう一つには、その琢磨自身が実はフリー走行から予選まで、一貫して速かったこと。

長いこと琢磨を追ってきたファンは、それ故に逆に過度な期待はしないように......と自分を諌め、抑えてしまう傾向にあるのがもどかしいですが、現場で彼を見守っていたプレス関係者の中には予感するものもあったようです。

インディ500は、平均速度350km/hの3時間耐久レース、優勝賞金はおよそ2億8000万円、観客動員35万人、表彰台がなく讃えられるのは優勝者だけ(2位はファステスト・ルーザー)、シャンパンファイトの代わりにスーパーミルクを提供───という、インディカー・シリーズの中でも殊更に特別感のあるレースですが、それだけに今回もレース自体に多くのドラマがありました。赤旗やイエローコーションが乱れ飛ぶ中で、アロンソがその才能を遺憾なく発揮したこと、スコット・ディクソンがあわやという大クラッシュに見舞われるも無事だったこと、そんな中で琢磨が勝ったこと。エリオ・カストロネベスのサムアップや盟友であるAJフォイトのクルーもハイタッチで喜んでくれたこと、そして、因縁浅からぬダリオ・フランキッティがあの場に駆けつけ祝福してくれたこと......ああ、このレースは何もかもが最高でしたとも。

自転車部から始まった異例のキャリアを引っ提げ、日本人ウィナーは夢物語とさえ言われたマカオGPとインディ500を制し、インディカー・シリーズではロングビーチとインディ500という共に伝統のレースで優勝を飾った琢磨。思えば、F1で唯一表彰台に登ったのもここインディアナポリスの地でしたから、彼にとっては何かと縁がありますね。ただ、こと今回に限って言えば、一番強いレーサーが優勝した完全な実力勝ちのレース。ある意味、インディ500らしくはないかもしれませんが、誰もが納得の結果だったと思います。そう、今回は"速い"琢磨ではなく、"強い"琢磨が見れたのが最大のポイントでした。

しかし、苦節云年〜御年40歳とはいえ、AJフォイトでもがき苦しんだからこそ、御大が琢磨のキャリアを繋ぎ止めてくれたからこその今日がある訳で、「フォイトが育て、アンドレッティが完成させた」という見方もあながち間違いではないでしょう。何より、琢磨自身が2012年のファイナルラップに置き忘れてきたものを取り返した訳で、守りに入らず常に上を目指すレーシングスピリッツ「No Attack, No Chance」は、いつか彼に大いなる栄光をもたらすだろう───そう言われ続けてきたことが遂に現実のものとなりましたね。

インディカー・シリーズは今週末もレースがあるはずなので凱旋はまだちょっと先になりそうですが、それにしても、琢磨の勝利者インタビューはいつ見ても爽やかですね。不思議と浪花節ではないんですよ、カラッと明るく爽やかで、SUPER H2Oばりの浸透圧で迫る笑顔と誠実さの人たらしスポーツマン、そういうところも従来の日本人の型には嵌らない人柄なのかもしれませんね。

追記(2017.06.04)

GAORA特番の無料放送で、セレモニーにおける琢磨の20分超のロングスピーチを初めて字幕付きで拝見しましたが、いやぁ、やはり彼のスピーチ力というかコミュ力というか、頭が良く理路整然としていて、度胸も誠実さもある、文化への敬意とユーモアを忘れず、その上であの"弁の立つ"感じは改めて凄いですね。何十分でも傾聴していられるお手本のようなスピーチ。F1時代よりも更に淀みなく達者になっている印象で、あそこまで老獪(といったら語弊があるかもしれませんが)な選手は日本人の中ではあまりお目に掛かれません。その素質故に、彼はマシンの開発能力にも定評があった訳ですが、この先、仮に腕の立つドライバーは出てきても、チーム作りだとか環境作りだとかで、あそこまで世界に溶け込める人材は早々出てこないのではないでしょうか。

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