2009年06月15日 (月)

Apple、MacBook Proファミリーを更新

Appleは8日、サンフランシスコで開催されたWWDC 09のキーノートにおいて、MacBook Proシリーズのリフレッシュを発表しました。今回のアップデートでは、全体に構成の底上げと値下げが図られています。

従来の15インチ、17インチモデルに加えて、今回のラインナップの一新で、新たに13インチのユニボディMacBookが“Pro”に昇格しました。それぞれ外観や基本スペックはほぼそのまま前モデルを踏襲していますが、プロセッサの動作クロックが全体的に強化されている他、液晶ディスプレイの色域が向上し、搭載メモリの上限が正式に8GBまで引き上げられています。また、17インチ以外のモデルについては新たにSDカードスロットを搭載し、更にバッテリが17インチモデル同様ビルトイン方式の内蔵型に統一されました。13インチモデルに関しては、バックライトキーボードが搭載され、ユニボディMacBook時に削られていたFireWireポートが復活しています。

価格はそれぞれ13インチモデルが134,800円から、15インチモデルが188,900円から、17インチモデルが278,800円からとなっています。

Image:MacBook Pro Mid 2009

性能的なマイナーチェンジと値下げが実施されたMid 2009モデル。GPUのアップデートは覚悟していたので、上位モデルでもNVIDIA GeForce 9600M GTが据え置かれたのは意外でしたが、Late 2008を購入したばかりで型落ちにならなくて良かったという点では、正直ホッとしています。とはいえ、MacBook Pro最大の弱点である液晶が強化されたことで、Late 2008のハズレモデルを愛用しているユーザーとしてはMid 2009には2歩先を行かれてしまった感じなので、8日以降はLate 2008もプロトタイプを使っている様な錯覚に陥ります。

今回のアップデートでは、過渡期に有りがちな一代限りのレアモデル「ユニボディMacBook」という副産物を生み出しながら、まずは見た目と名前を一致させてラインナップを整理したことで、ようやく落ち着いた棲み分けが実現しています。技術的には細部のブラッシュアップに留まる一方で、カテゴリ再編によるお値打ち感を出すことで新規顧客の取り込みを狙っており、業績の底上げを画策せんとするAppleの常套戦略としては妥当。MacBook Proファミリー全般にかなり割安感が出て来ています。

しかし、どうにも拡張スロット関連は迷走している感が否めません。恐らくは、内部的にスペースの確保が難しいところへ持って来て、SDカードがデファクトスタンダードに近いレベルで普及していることから、複合的な要因を総合的に判断した結果としてExpressCardが廃止されたものと思われますが、SDカードブータブルなどひとネタ仕込んではいるものの、この辺りに善くも悪くもアメリカ製らしい大味さと、Appleと言えども常に洗練されない部分が残っています。Macらしいマイナスの哲学と、コンピュータとしての拡張性の確保は、製品を編成する過程においてもしばしばコンフリクトを起こしていますが、例えば、FW400はコンバータで互換が利くとはいえ、そこは曲がりなりにも“Pro”を名乗るのであれば、拡張性を犠牲にして欲しくはありません。SDスロットについては、いっそ独自のSSDモジュール追加スロットを提案してしまうくらいの心意気が欲しかったところです。

一方、これに伴い、ポリカーボネートモデルのみに戻ったMacBookファミリーも、近々再編成があるものと予想されます。白いポリカーボネートは、元々の人気の高さに加えて、アメリカでは教育市場向けに「児童が雑に扱っても……大丈夫ッ!」な廉価ノートとして需要があるので、往年のeMac的な位置付けで当分の間は製品ラインとして残る気がしますが、例えば、今回の15インチ下位モデルは“Pro”の主力ラインであるにも関わらずNVIDIA GeForce 9400Mのみのモデルが構成されるなど、仕様的には旧MacBookとの橋渡し的な色合いが強いので、この辺りが上位モデルに集約されるタイミングで動きがあるのは確実だと思われます。

それにしても、性能アップは部品の価格帯を維持しながら部品自体の自然進化に任せ、使用頻度の少ない機能や利便性は外してコストダウンを行う、そんな当たり前がセオリーとして確立されている成熟市場においても、毎度、これだけの悲喜交々とワクワク感を提供してくれるAppleというメーカーは相変わらず大したものです。いずれにしても、Mid 2009はかなりお手頃。Snow Leopardへのアップグレードも29ドルで済んでしまうので、拡張性やバスインターフェースなど細部の仕様が気にならないのであれば、9月以降のプリインストールモデルを待つ必要はないと思います。

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