2014年06月07日 (土)

ハイレゾ、CD-DA、AACの混沌

さて、ハイレゾ元年を迎えるに差し当たって述懐したO.Z.K. » 新雑誌「アニソンオーディオ」創刊でも若干触れておりますが、ハイレゾ音源に五感が最適化されると、それ以前の音楽にはなかなか戻ることが難しくなります。非常にザックリとした話ですが。

この辺は、オーディオ沼にズブズブと嵌って行く過程を備忘録としてしたためた歴代ヘッドホンやオーディオアクセサリの購入記録でもその都度回顧しておりますが、少なくとも今日において一般的なCD-DAではもうすっかり色褪せて聴こえてしまうのが実際であり、たとえそれが糞録音(マスタリング)の墓場として悪名を轟かせる量産型アニソンであっても、です。

リスニング環境としては、以下、Mac mini、NR1601、HD800と主要機材に変更はありませんが、基本的にモニタリング機器としてのヘッドホンの威力は絶大ですから、スピーカーのように振動、騒音、設備、建築や屋内レイアウトなどの外的要因に比較的影響されず、耳殻に最も近い距離で音源に集中できるという意味では、より敏感に音の違いを感じ取れる部分はあるでしょう。

不肖、「人生には音楽が必要」な類いの人種ではあるものの、かといって、こうなって来ると、趣味として商業音楽を嗜み、娯楽性を享受している消費者としては、もうハイレゾの普及に期待するしかない訳ですね。音楽好きの為の専用メディアに限らず、地デジ、動画、ストリーミング等々と、現在様々な場面で主流足り得ている圧縮音源では、それは音の波、表現と呼べるものではなく、(多少大袈裟に言って)文字通りノイズとして脳内解釈されてしまいますから、CD-DAでさえ最低限の水準というものから後戻りは出来ない訳です。

しかしながら、まあ、とにかく面倒臭い。面倒臭くなってしまった。足元を見詰めた時に、例えば、BDドライブのリッピング性能に疑義を覚えないことなどないし、再生装置としてはNR1601の能力不足も感じるし、上流は洗練には程遠いし、CD-DAとハイレゾの違いが分かる程度の環境ではあるがそれ以上でも以下でもないという不満。キリがない。だから、要するに「足掻くな、現状を受け入れろ」ということです。これは自戒であり、近年、逼迫している家庭事情から「分相応、足るを知る」を座右の銘として掲げている手前、背伸びのし過ぎは破滅を早めますからね。

だったら、経済面でも利便性の面でも、ハイレゾまでの繋ぎにより良い選択肢を選ぼうと思ったのですよ。即ち、ハイレゾ以外の音源に関しても、可能な限り配信版を買う方向で行こうと。

で、それこそ軽い気持ちで、試しに「ノーゲーム・ノーライフ」から白(CV:茅野愛衣)が歌うエンディングテーマ、「オラシオン」を購入してみたんです(ちなみに、今期は"癒し系ドS"ことかやのん推し。「キャプテン・アース」のエンディングテーマ、HANA star.茅野愛衣「アメジスト」はBD限定特典、音源のみでの販売無しとか超舐めてる)。AAC / 256kbpsがリミットのiTunes Storeに対して、少しでも高音質な方が良いということで、同じ音源をAAC / 320kbpsで配信しているmoraを物色(醜いサイトだ)。特に、フォーマット論争に関しては、AACでも320kbps以上になると「CD-DAとの区別が付かない」なんて声も、巷では見聞しますしね。

ところが、して、これが想像以上に厳しい。なんでここまで音の響きが悪いのかと言うくらい、CDリップのWAVに比べて、空間が狭い、音場が濁る(団子)、高音が伸びない───など、圧縮音源に特有の音域とデジタルノイズが聴覚上の音質を著しく悪化させている。音当たりが激しく、キンキンとした刺激音が耳に痛い。

ただ、前述の通り、そもそもこのジャンルの音源は押し並べてマスタリングの影響が大きく、必ずしもフォーマットに由来する問題とは限らないので、別途CD円盤も購入して比較してみましたが、こちらはまだ「色褪せて聴こえる」程度には幾分マシな、いつものWAVであります。普通のロック、ポップスではどうだろうかということで「Viva Elvis(Elvis Presley)」「Overexposed(Maroon 5)」も買ってみたけれど、結果は同じ。

「もうダメ、あたしAACじゃ堪えられない!」という嘆きがあったとかないとか。ドッと疲れるとはこのこと、身体も心もズッシリ重い。良い音楽を良い音で聴きたいだけなのに、何故、ここまで「正規の対価=お金を払ってまで音楽を買いたいお客」が右往左往と苦労し、面倒臭がらなければならないのか。結局、まだまだ不透明なハイレゾの普及を見据えつつ、CD円盤を買い続けなければならない落胆ったらないので、早く、一刻も早く世の中の音楽配信サービスがハイレゾ体制に移行して欲しい、もはやレガシーであるCD-DAと、それ未満のゴミである圧縮音源を、世間の喧噪諸共葬り去って欲しい、と。

起爆剤らしい起爆剤が不在な現状では声なき声を絞り出すことしかできませんが、なにゆえ、浮世のインターネット流通はMP3やAACなどという圧縮音源がメインストリームに伸し上がってしまったのか、次世代のプラットホームを標榜する市場(規格)が、旧来のCD-DAよりもスペックで劣化してどうする。

これはある種、Appleの商業音楽に対するスタンス、或いはビジネスそのものに対する不満でもあるし、日本の家電メーカーの不甲斐なさに対する不満でもあるし、元を辿れば、事態が悪化した原因には音楽業界が持つインターネッツへの強烈なアレルギーと、コピーコントロールCDの遺恨があったからこその側面もあり、販売・供給・顧客の関係性が拗れたまま、そこから立ち直らないままここまで来てしまった歴史の不幸でもあるのかなぁ、ブツブツ......などと積年の恨み辛みが籠った愚痴をこの機に乗じて吐き出してはみたものの、頭の中のモヤモヤとした混沌の渦は消えないのであった。駄文。

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